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第四章

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 店の近くまで来たら、声をかけられた。
「何やってんの?」
「託」
 こんなとこで会うなんて。最初に会ったのもここだったけど、それから一度もここには来てなかった。
「まさかプレイする人探しに来た?」
「違うよ。そうじゃなくて」

 薬の話をしたら、怒られるだろうか。
「鈴也、これ何?」
「ちょっ、待っ」
 袖をまくられた。
 まだ真新しい傷だ。おとといやったばかりで、ごまかしようがない。
「何、やってんの?」
「だって」
 言い訳などできない。
「自分でやったの?」
「あ、あ……」
 声が出ない。怖い。
「何も、やってない」
「鈴也!」

 詫に腕を掴まれた。
「大丈夫だから。薬買いに来たから」
「は?」
「今までありがとう」
「何言ってんの?」
「だって最後だったんだろ」

 もう呼んでくれないのなら、託の側にいることはできない。
 他にプレイする人を探すのだけは絶対嫌だった。
 Subなんかでなければ、第2性ダイナミクスなんてなければ、僕が普通だったら、側にいられた? いじめなんかしないで済んだ?

「馬鹿じゃないの」
 託は怒ったように言った。
「勝手に来ればいいじゃん」
「だって、呼ぶって言った」
 こんな言い方をしたら怒られる。そう思って一瞬目を伏せたが、何も飛んではこなかった。
「ずっと待ってたの?」
 答えられなかった。
「ドロップしたのに俺がいいの?」
「へ?」
 ドロップ? した覚えはない。

 僕は突如ひらめいた。ああ。だからか。やけにこの前優しかったのは。急に褒めたりしたのは。何だ。そんな理由だったんだ。
 僕は胸が苦しくて、つらくて、張り裂けそうで、立っていられなかった。
 ついその場でしゃがみ込んだ。

「ちょっと鈴也?」
「ごめん。弱くて」
 ドロップなんて最悪だ。
「ごめんなさい。役に立たなくて」
 Subとしても側にいられない。自分は本当に役立たずだ。

「いい加減にしてよ」
 詫に怒られるのも当たり前だ。
「やめてよそういうの」
「ごめんなさい」
「謝るのも」
 何も言えなくなった。

「プレイしてあげるから」
「え?」
 僕は耳を疑った。
「傷つけんのやめて」
 託は僕の腕の傷を見ていた。
「ごめんなさい」
 謝っちゃだめだったのに、つい口にしてしまった。
「だから」
 託が顔をしかめたので、慌てて言い直した。
「あ、ありがとう」
「そんなことで喜んで馬鹿みたい」
 託は僕から目をそらし、僕の腕を引っ張って状態を起こした。そのまま引っ張られる。
 電車に乗り、詫の家まで連れてこられた。

 3週間ぶりの託の部屋だった。
「セーフワードはこの前決めた通り」
「うん」

「おすわり」
 プレイ開始の合図だ。

「舐めて」
 と言われたのは手だった。いつもは足なのに。
 何でだろう。
 託の手は細長くてきれいで、ゴツゴツして指が短い自分の手とは違う。

 自分にはもったいない。
 喉の奥に手が当たって、何故か恍惚とした。
 舌を這わせていたら、つい甘く噛んでしまった。
「あっ」
「悪い子」
 やばい。お仕置きだ。
 鞭が飛んでくると思ったのに、今日はフェラだった。
 いっぱい練習したんだから今日はうまくできるはず。

 託は「気持ちいいよ」と言ってくれて、僕の口の中で達した。
 躊躇なく飲み干すと、「よくできました」と言われた。
 頭の中がふんわりと心地良くなる。そんなのは初めてだった。
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