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第2話 帰宅部、冒険者になる
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「やった!召喚成功です」
若い女性の声で目を覚ました。
そこはレンガ造りの密室で、5人ほどの修道服を身につけた男女に囲まれていた。
……何だこの状況は?
「俺は死んだはずじゃ?」
「いいえ、私たちが死の直前にこちらの世界に連れてきました」
今度は男が答えた。
こちらの世界?
何を言ってるんだ。
「あなたの名前はなんと言うのですか?」
修道士が尋ねてきた。
「俺の名前はアキラ」
「そうですかアキラ様、それでは簡単に事情を説明します」
どうやらここは今まで俺がいた世界とは違う、いわゆる異世界ということになるらしい。
俺はこの世界で起きている様々な厄災をおこす《バンディット》と呼ばれる怪物を倒すために呼ばれたらしい。
「私たちからの説明はここまでです」
「はあ、でもなんで俺?」
バンディットってのは怪物なんだろ?
帰宅部でゲームばっかりしている俺なんかが倒せるのか?
「それは神が決めたことなので、私たちにもわかりません」
「神の審判は公平で正しく行われるので、あなたはバンディットを倒すのにふさわしい存在なのでしょう」
俺がふさわしい存在?
神は信仰してないんでよく分からんが、自分は何かしら期待されているのだろう。
本来なら俺は死ぬはずだった身だ。
元の世界に思い残しもな━━━━━
ああああああああぁぁぁ
「イベント参加できねーかッッッ!!!」
「きゅ、急になんですか!」
突然大声を出してしまったので、若い修道女が驚いてそう返してきた。
「い、いえ、なんでもないです」
失礼しましたと短く謝る。
俺は涙を拭き、最愛のゲームと決別する。
さらばR・Oまた会う日まで!
「それでは、冒険者になる準備をしましょう」
俺は修道服達に連れられて部屋を出た。
今までいた部屋は地下室だったようだ。
階段を上り、外に出ると景色が開けた。高い吹き抜けだ。
さっきの人達の格好とこの建物、ここは教会だったのか。
「こちらですアキラ様」
修道女は俺をその部屋まで送り届けると、中に入るように言った。
部屋の奥には司祭服に身を包み、神聖な雰囲気を漂わせた老人がいた。
「そなたがアキラかね」
老人がおもむろに口を開く。
「ええ、私がアキラです」
「そうか、私はロベール=レオトー、このリルトン教会の教皇だ」
「そなたには冒険者になってバンディット退治の旅に出もらう」
「この教会の近くに街があるから、そこでギルドに登録して、旅を始めなさい」
教皇は「期待しておるよ」と優しく微笑んだ。
俺が教皇にお辞儀をして部屋を出るとさっきの修道女がいた。
「今度はこちらへ」
案内された場所へ行くと、そこには小袋と小さなカードがあった。
「これは?」
「小袋には金貨10枚、銀貨50枚が入っています」
「銀貨10枚で金貨1枚分の価値があります」
「冒険者への支援金です、それで必要なものを揃えてください」
「その黒くて丸い物は?」
「これは冒険者デバイスです」
修道女は冒険者デバイスを手に取って説明した。
どうやら冒険者はデバイスで様々な機能を使うことができるらしい。例えばモンスターのデータを調べたり、自分のステータスを調べたり、地図を見たり、ほかの冒険者デバイスと通話をする事もできるらしい。
「冒険者デバイスは高価なので盗難や紛失されないよう、注意してください」
「わかった」
冒険者デバイスを小袋に入れる。
「それではお気をつけて」
俺は修道女に一礼して教会を出た。
「……すごい」
俺の眼下にはRPGに出てくるような中世ヨーロッパのような街が広がっている。
その奥に広がる海は真昼の太陽の光を浴びてキラキラと輝いている。
「まってろ俺の冒険者ライフ!今行くぞー!」
俺は教会の建つ丘を駆け下りて街へ向かった。
若い女性の声で目を覚ました。
そこはレンガ造りの密室で、5人ほどの修道服を身につけた男女に囲まれていた。
……何だこの状況は?
「俺は死んだはずじゃ?」
「いいえ、私たちが死の直前にこちらの世界に連れてきました」
今度は男が答えた。
こちらの世界?
何を言ってるんだ。
「あなたの名前はなんと言うのですか?」
修道士が尋ねてきた。
「俺の名前はアキラ」
「そうですかアキラ様、それでは簡単に事情を説明します」
どうやらここは今まで俺がいた世界とは違う、いわゆる異世界ということになるらしい。
俺はこの世界で起きている様々な厄災をおこす《バンディット》と呼ばれる怪物を倒すために呼ばれたらしい。
「私たちからの説明はここまでです」
「はあ、でもなんで俺?」
バンディットってのは怪物なんだろ?
帰宅部でゲームばっかりしている俺なんかが倒せるのか?
「それは神が決めたことなので、私たちにもわかりません」
「神の審判は公平で正しく行われるので、あなたはバンディットを倒すのにふさわしい存在なのでしょう」
俺がふさわしい存在?
神は信仰してないんでよく分からんが、自分は何かしら期待されているのだろう。
本来なら俺は死ぬはずだった身だ。
元の世界に思い残しもな━━━━━
ああああああああぁぁぁ
「イベント参加できねーかッッッ!!!」
「きゅ、急になんですか!」
突然大声を出してしまったので、若い修道女が驚いてそう返してきた。
「い、いえ、なんでもないです」
失礼しましたと短く謝る。
俺は涙を拭き、最愛のゲームと決別する。
さらばR・Oまた会う日まで!
「それでは、冒険者になる準備をしましょう」
俺は修道服達に連れられて部屋を出た。
今までいた部屋は地下室だったようだ。
階段を上り、外に出ると景色が開けた。高い吹き抜けだ。
さっきの人達の格好とこの建物、ここは教会だったのか。
「こちらですアキラ様」
修道女は俺をその部屋まで送り届けると、中に入るように言った。
部屋の奥には司祭服に身を包み、神聖な雰囲気を漂わせた老人がいた。
「そなたがアキラかね」
老人がおもむろに口を開く。
「ええ、私がアキラです」
「そうか、私はロベール=レオトー、このリルトン教会の教皇だ」
「そなたには冒険者になってバンディット退治の旅に出もらう」
「この教会の近くに街があるから、そこでギルドに登録して、旅を始めなさい」
教皇は「期待しておるよ」と優しく微笑んだ。
俺が教皇にお辞儀をして部屋を出るとさっきの修道女がいた。
「今度はこちらへ」
案内された場所へ行くと、そこには小袋と小さなカードがあった。
「これは?」
「小袋には金貨10枚、銀貨50枚が入っています」
「銀貨10枚で金貨1枚分の価値があります」
「冒険者への支援金です、それで必要なものを揃えてください」
「その黒くて丸い物は?」
「これは冒険者デバイスです」
修道女は冒険者デバイスを手に取って説明した。
どうやら冒険者はデバイスで様々な機能を使うことができるらしい。例えばモンスターのデータを調べたり、自分のステータスを調べたり、地図を見たり、ほかの冒険者デバイスと通話をする事もできるらしい。
「冒険者デバイスは高価なので盗難や紛失されないよう、注意してください」
「わかった」
冒険者デバイスを小袋に入れる。
「それではお気をつけて」
俺は修道女に一礼して教会を出た。
「……すごい」
俺の眼下にはRPGに出てくるような中世ヨーロッパのような街が広がっている。
その奥に広がる海は真昼の太陽の光を浴びてキラキラと輝いている。
「まってろ俺の冒険者ライフ!今行くぞー!」
俺は教会の建つ丘を駆け下りて街へ向かった。
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