淋しいあなたに〜1%の確率で出会った彼に愛されています〜

名木雪乃

文字の大きさ
上 下
19 / 30

19 夢のような時間

しおりを挟む
 コウさんとの観覧車での楽しい空中散歩は、いつまでも続かない。あと少しで地上に着いてしまう。ジェットコースターに乗っている時は早く地上に降りたかったのに、観覧車は一周では物足りなさを感じた。

「もう少しでお昼ですね。お腹すきましたよね? 葉摘さんは昼飯食べに行きたいお店はありますか?」
「いいえ、特には。考えてなかったです。どこで食べても良いですよ。ここでも」

 こういう開放的な屋外での焼きそばやたこ焼きも悪くない。意外と美味しく感じるものだ。

「ここで食べるのはまた今度にして、今日はもう遊園地を出て、雰囲気のあるところへ行きましょう。実はこの近くに、葉摘さんがお好きそうなティールームがあるんですよ。持つべきものはお節介な姉ですかね。姉のオススメの店です」
「ティールーム!? ですか」

 しぼみかけていた私の気持ちは、また膨らんだ。

「ふっ。葉摘さん、目の色が変わった。姉が、たぶん葉摘さんが気に入るだろうって言ってました」

 そんなに私って、自分では気が付かなかっただけで感情を表に出してるの?
 それにしてもこれから素敵なティールームに連れて行って貰えるなんて、嬉しい! 瑠伊さんのオススメなら間違いない。もしかしてお茶に誘われた時にしっかりリサーチされてた?

「とっても嬉しいです! ありがとうございます」
「喜んでいただけて光栄ですよ」

 コウさんの爽やかな笑顔に魅了される。今日だけの魔法じゃないことを願ってしまう。

『ここで食べるのはまた今度にして……』

 また今度があるなら……。
 
 ゴンドラから降りる時は、今度はコウさんが先に降りて、私に手を貸してくれたので、安心できた。またそのままコウさんには、手を繋ぎ直され夢心地だった。

 遊園地の土曜日の午前中は、小さいお子さんのいる若い家族連れがたくさんいて、その平和で幸せな光景は微笑ましい。
 コウさんだって……。若い子とお付き合いすれば、こんな未来が確実に訪れる。でも、私とでは……。コウさんのためを思うなら……。私の浮かれていた心に、また現実が影を落とす。

「葉摘さん、疲れました? 少しベンチで休憩してから移動しますか?」

 コウさんが私の手をしっかり握り直してくれた。ただそれだけのことでも、私の冷えそうな心は温かくなる。

「いいえ、大丈夫です。早くティールームへ行きたいです!」

 今は、今日は楽しむって決めたんだし、代金だって払ってるし、何も考えなくていいんだった!

「それなら、すぐに出発しましょう。まあ、目と鼻の先ですけどね」

◇◇◇

 コウさんの言った通り、遊園地からたった数分ほどで、そのティールームに着いた。
 住宅地のど真ん中と言って良い場所に、こんな隠れ家的なティールームがあるなんて、知らなかった。

 車も三台しか停める場所は無く、入口に小さな立て看板があるだけ。所々にレトロなレンガを施した邸宅への小道。小さい黄色の薔薇が巻きついている細い鉄製アイアンのデザインアーチ。

〈サロン・ド・ラ・ナチュール〉
 
 フランス語で自然の応接室? 的な訳になるのかな。大学でフランス語を選択していたなんて、恥ずかしくて言えないレベル。

 季節を感じさせるように整えられた美しい庭。自然のままに見えるようでいてきちんと手入れされている庭の中に、温かみのある素朴なタイル貼りの外観の建物がある。ステンドグラスが嵌め込まれた白い玄関ドア、格子の上下窓、そこから見えるレースのカフェカーテン、見るからにお洒落な邸宅だった。

「素敵!!」

 期待で胸が膨らむ。素敵な新しいお店を見つけるといつもワクワクして仕方がない。

 瑠伊さん、ありがとう!

 小道の先にある緑の蔓に包まれた白い玄関ドアまで、お庭を眺め、堪能しながら進んだ。玄関脇の緑の塗装が施された同じ鉄製のベンチも素敵。

 コウさんが丁寧にドアを開けてくれた。
 ドアベルが軽やかに鳴る。

「こんにちは」

 そこは、女性の憧れを絵に描いたような海外ドラマで見る広いリビングダのようだった。暖炉があって、アンティーク調サイドボードやチェスト、テーブル、椅子、どれも趣きがある。飾られている小物も年代物のよう。
 玄関ドアはよく見ると、青い小鳥とエメラルドグリーンの蔓や葉、薄ピンクの薔薇を意匠した見事なステンドグラスで、陽に透けてカラフルな光を放っている。

 目を引くのは、背の高い飾り棚に多数並ぶビンテージ風の美しいカップと有名なブランドものらしい紅茶の缶。

 ときめいてしまう。こんな家に住むのが夢だ。お掃除大変そうだけど。

「いかにも女性が好きそうなインテリアですね」

 コウさんもじっくり見回している。


「いらっしゃいませ。ようこそおいで下さいました」

 奥から現れたのは、六十代後半くらいの静かな笑みを浮かべた品の良い女性だった。
 ゴージャスな印象を受ける洋風な顔立ち。鼻の高いマダム!? ハーフの方? ダークブラウンのメイド服のようなふんわりしたスカートのワンピースに白のフリルのエプロンが似合う。

「こんにちは」
「さあ、どうぞ、どうぞ。そのスリッパに履き替えて下さいね」

 玄関から一段あがったところにブルーとピンクのスリッパが用意してある。私たちは、靴を脱いでそれを履いた。

「場所はすぐにおわかりになりました?」
「はい。地図で調べておきましたから」
「まあ、ご準備がよろしいのね」

 コウさんとマダムの間で朗らかに会話が進んでいる。

「本日はご予約ありがとうございました」

 予約!?

 私は思わずコウさんを見上げた。
 そんなことは一言も……。

 コウさんはニヤッとすると、肩を竦めてみせた。

「向井さんは、〈サン・ルイ〉さんのマダムの弟さんでいらっしゃるのよね」
「そうです。姉がいつもお世話になってます」
「いいえ、あたくしの方こそ。美味しいお菓子のレシピをいつも頂戴して、感謝しておりますのよ。それにしても、向井さんはなんて男前なんでしょう!! あたくしの主人みたいにカッコイイわ。主人はフランスの人気俳優ジェラール・フィリップ似なのよ。彼女さんも優しい雰囲気で上品な方ね。私の好きなソフィ・マルソーみたい」

 ソフィ・マルソー!? 名前は聞いたことあるけど、あとで調べなくちゃ。
 
 私たちを楽しく褒めてくださって、ご主人様の自慢話。このお年のマダムからニコニコしながら言われると嫌味に聞こえない。コウさんと顔を見合わせて微笑んでしまう。
 〈ナチュール〉のマダムは、私たちを席に案内することもせずに、重厚なアンティークのサイドボードに飾ってあった薔薇の装飾の写真立てをふたつ持って来て、さらに私たちに説明を始める。おそらく旦那さまとジェラール・フィリップらしいモノクロの写真を並べて、ほらね、と同意が得られることを期待する顔を向けられる。

「そっくりですね。目とニヒルな口元が」

 コウさんがすかさず口にする。

 さすが、慣れていらっしゃる?

「ほんとうですね。知的で優しそうです」

 私も思ったことを言葉にした。

「そうなの。頭が良くて優しい人だったわ。今はふたりともわたくしの夢の世界だけで生きてるの」

 どちらも三十代後半くらいに見える写真だった。まさかその位の年齢で亡くなられているのだろうか。

「奥さま、立ち話はその位で。向井さま、どうぞこちらのお席へ」

 どこからとも無く、マダムよりいくらか若く見える黒い給仕服の男性が突然現れたので、驚いて注目してしまった。旧家を切り盛りする執事のような、折り目正しい佇まいだ。

「ごめんなさい、室岩むろいわ。お客さまがいらして下さったので、つい嬉しくなっちゃって……」
「奥さまは、おもてなしの準備を」
「わかったわ」

 少女のような明るい笑みを浮かべると、マダムは仕切られているキッチンの方へ姿を消した。

 明るいリビングルームのような部屋に、席は三つだけだった。他のお客さまは、まだいない。私たちは、綺麗な庭が見える窓側の席に案内された。
 テーブルには、ガラスの小瓶にいけられた黄色と白の小さい薔薇が飾られていた。ベージュのランチョンマットの上の白いお皿に若草色のナプキンが二人分セットしてあって、同色のガラスのナプキンホルダーがキラキラしていた。

「こちらが本日のメニューになります」

 室岩さんと呼ばれた方が、見開きの白いカードに藍色のインクで書かれたメニューを私たちに見せてくれた。選ぶのではなく、おまかせのみらしい。

 それらは、さほど待たされずにケーキスタンドに載せられて、私たちのテーブルに運ばれて来た。室岩さんの給仕の慣れた手つきは無駄な動きが一切ないほどに美しい。
 三段のスタンドは圧巻だった。食べるのが勿体ないくらいの完成度だった。室岩さんから詳細な説明を受けたあと、再度メニューカードを参考にしながら、ひとつひとつ声に出して確認してしまった。
 スコーン(クローデットクリームにストロベリージャム添え)から始まって、サンドウィッチ三種、パテ・ド・カンパーニュ、キッシュ・ロレーヌ、クレームブリュレ、ガトーショコラ、ピスタチオのマカロン、フルーツカクテル。

「すごい豪華ですね。料理に疎いオレでも感動します」

 コウさんが私の説明に、目を見開いて素の感想を述べた。

 そしてマダムが紅茶のセットを運んで来た。
 金色の縁どりのあるカラフルな薔薇模様のティーカップが置かれる。

「本日のお紅茶は、ダマン・フレールのグー・ルッス・デュシュカです」

 茶葉の名前は、息づかいが見事なフランス語の発音だったので聞き取れなかった。マダムが紅茶をティーポットからカップへ注ぐと、豊かな香りが広がった。

「とても香りの良い紅茶ですね」
「ええ。アールグレイと柑橘系の爽やかな香りと味が楽しめますの。それでは、素敵なティータイムを、おふたりでどうぞごゆっくりお過ごし下さい」
 
 私たちがお礼を言うと、マダムは優美な笑顔を残して、キッチンの方へ戻って行った。
 静かなクラシック音楽が室内に流れ始めた。

 本当に、こんな夢のような素敵なランチ兼ティータイム。
 予約までしてもらっていたなんて。私が別な場所を提案したり、時間がずれたりしていたら、どうするつもりだったんだろう。もう全然悩み相談じゃなくなってる! 本当に信じられない。ここの支払いもコウさんが?
 すごく高そう。どうしよう。
 まずはコウさんに、お礼を言わなくちゃ。

「あの、コウさん、本当にどうもありがとうございます。こんな豪華なティーセット、初めてです。夢みたいです」
「夢じゃありません。現実です。お腹空いてるでしょう?」
「確かに、すごくお腹空いてます!」
「じゃあ、味わって美味しく食べましょう!」
「はい。いただきます」

 最初に紅茶を一口、その香りと共に飲む。
 美味しい!

 夢じゃない。これは、現実。
 でも、夢のようなとても贅沢な時間。
 私の淋しいなんて心の悩みは、もう吹き飛んでしまった。コウさんは、私のことや私の嗜好まで考えて、私を喜ばせようとしてくれている。
 今まで、そんな人いただろうか? 私が気が付けなかっただけ?
 コウさんの心遣いが嬉しくて、感激して涙が出そうだった。
 
 今日はまだ終わりではないけれど、今日のことはきっと一生忘れない。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

愛しき夫は、男装の姫君と恋仲らしい。

星空 金平糖
恋愛
シエラは、政略結婚で夫婦となった公爵──グレイのことを深く愛していた。 グレイは優しく、とても親しみやすい人柄でその甘いルックスから、結婚してからも数多の女性達と浮名を流していた。 それでもシエラは、グレイが囁いてくれる「私が愛しているのは、あなただけだよ」その言葉を信じ、彼と夫婦であれることに幸福を感じていた。 しかし。ある日。 シエラは、グレイが美貌の少年と親密な様子で、王宮の庭を散策している場面を目撃してしまう。当初はどこかの令息に王宮案内をしているだけだと考えていたシエラだったが、実はその少年が王女─ディアナであると判明する。 聞くところによるとディアナとグレイは昔から想い会っていた。 ディアナはグレイが結婚してからも、健気に男装までしてグレイに会いに来ては逢瀬を重ねているという。 ──……私は、ただの邪魔者だったの? 衝撃を受けるシエラは「これ以上、グレイとはいられない」と絶望する……。

どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします

文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。 夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。 エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。 「ゲルハルトさま、愛しています」 ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。 「エレーヌ、俺はあなたが憎い」 エレーヌは凍り付いた。

甘すぎるドクターへ。どうか手加減して下さい。

海咲雪
恋愛
その日、新幹線の隣の席に疲れて寝ている男性がいた。 ただそれだけのはずだったのに……その日、私の世界に甘さが加わった。 「案外、本当に君以外いないかも」 「いいの? こんな可愛いことされたら、本当にもう逃してあげられないけど」 「もう奏葉の許可なしに近づいたりしない。だから……近づく前に奏葉に聞くから、ちゃんと許可を出してね」 そのドクターの甘さは手加減を知らない。 【登場人物】 末永 奏葉[すえなが かなは]・・・25歳。普通の会社員。気を遣い過ぎてしまう性格。   恩田 時哉[おんだ ときや]・・・27歳。医者。奏葉をからかう時もあるのに、甘すぎる? 田代 有我[たしろ ゆうが]・・・25歳。奏葉の同期。テキトーな性格だが、奏葉の変化には鋭い? 【作者に医療知識はありません。恋愛小説として楽しんで頂ければ幸いです!】

【掌編集】今までお世話になりました旦那様もお元気で〜妻の残していった離婚受理証明書を握りしめイケメン公爵は涙と鼻水を垂らす

まほりろ
恋愛
新婚初夜に「君を愛してないし、これからも愛するつもりはない」と言ってしまった公爵。  彼は今まで、天才、美男子、完璧な貴公子、ポーカーフェイスが似合う氷の公爵などと言われもてはやされてきた。  しかし新婚初夜に暴言を吐いた女性が、初恋の人で、命の恩人で、伝説の聖女で、妖精の愛し子であったことを知り意気消沈している。  彼の手には元妻が置いていった「離婚受理証明書」が握られていた……。  他掌編七作品収録。 ※無断転載を禁止します。 ※朗読動画の無断配信も禁止します 「Copyright(C)2023-まほりろ/若松咲良」  某小説サイトに投稿した掌編八作品をこちらに転載しました。 【収録作品】 ①「今までお世話になりました旦那様もお元気で〜ポーカーフェイスの似合う天才貴公子と称された公爵は、妻の残していった離婚受理証明書を握りしめ涙と鼻水を垂らす」 ②「何をされてもやり返せない臆病な公爵令嬢は、王太子に竜の生贄にされ壊れる。能ある鷹と天才美少女は爪を隠す」 ③「運命的な出会いからの即日プロポーズ。婚約破棄された天才錬金術師は新しい恋に生きる!」 ④「4月1日10時30分喫茶店ルナ、婚約者は遅れてやってきた〜新聞は星座占いを見る為だけにある訳ではない」 ⑤「『お姉様はズルい!』が口癖の双子の弟が現世の婚約者! 前世では弟を立てる事を親に強要され馬鹿の振りをしていましたが、現世では奴とは他人なので天才として実力を充分に発揮したいと思います!」 ⑥「婚約破棄をしたいと彼は言った。契約書とおふだにご用心」 ⑦「伯爵家に半世紀仕えた老メイドは伯爵親子の罠にハマり無一文で追放される。老メイドを助けたのはポーカーフェイスの美女でした」 ⑧「お客様の中に褒め褒めの感想を書ける方はいらっしゃいませんか? 天才美文感想書きVS普通の少女がえんぴつで書いた感想!」

5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?

gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。 そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて 「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」 もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね? 3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。 4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。 1章が書籍になりました。

牢で死ぬはずだった公爵令嬢

鈴元 香奈
恋愛
婚約していた王子に裏切られ無実の罪で牢に入れられてしまった公爵令嬢リーゼは、牢番に助け出されて見知らぬ男に託された。 表紙女性イラストはしろ様(SKIMA)、背景はくらうど職人様(イラストAC)、馬上の人物はシルエットACさんよりお借りしています。 小説家になろうさんにも投稿しています。

婚約破棄とか言って早々に私の荷物をまとめて実家に送りつけているけど、その中にあなたが明日国王に謁見する時に必要な書類も混じっているのですが

マリー
恋愛
寝食を忘れるほど研究にのめり込む婚約者に惹かれてかいがいしく食事の準備や仕事の手伝いをしていたのに、ある日帰ったら「母親みたいに世話を焼いてくるお前にはうんざりだ!荷物をまとめておいてやったから明日の朝一番で出て行け!」ですって? まあ、癇癪を起こすのはいいですけれど(よくはない)あなたがまとめてうちの実家に郵送したっていうその荷物の中、送っちゃいけないもの入ってましたよ? ※またも小説の練習で書いてみました。よろしくお願いします。 ※すみません、婚約破棄タグを使っていましたが、書いてるうちに内容にそぐわないことに気づいたのでちょっと変えました。果たして婚約破棄するのかしないのか?を楽しんでいただく話になりそうです。正当派の婚約破棄ものにはならないと思います。期待して読んでくださった方申し訳ございません。

子持ちの私は、夫に駆け落ちされました

月山 歩
恋愛
産まれたばかりの赤子を抱いた私は、砦に働きに行ったきり、帰って来ない夫を心配して、鍛錬場を訪れた。すると、夫の上司は夫が仕事中に駆け落ちしていなくなったことを教えてくれた。食べる物がなく、フラフラだった私は、その場で意識を失った。赤子を抱いた私を気の毒に思った公爵家でお世話になることに。

処理中です...