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17 男たちの素直な心情
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プロジェクトミーティングの後のお話です。
ーーーーーーーー
しばらくぶりにみんなで食事をしようという話になり、予定のないジョン、リジー、アイリーン、サム、が残った。スーザンは、デートがあるからと早々に帰って行った。カイルとの恋は順調らしかった。
4人はジョンの部屋に移動する。
部屋での準備は男性陣、買い出しは女性陣と分かれた。リジーとアイリーンは、楽しそうに買い物に出かけて行く。
部屋に残った男ふたりは、ピザの注文以外は特にすることもなく、最低限の紙皿やコップを出すくらいだった。
改めてジョンの部屋の中を見回すサム。
「いつも殺風景だったのに、なんか、色々と変な物が増えてないか? なんだこの黄色いリボンの黒い物体は?」
サムの指の先には、黒い物体があった。
「ああ、リジーがスペードのぬいぐるみを作ってくれた」
ジョンが珍しく相好を崩す。
「ぷっ! これ、カラスだったのか? なかなかの腕前だな」
「愛嬌あるだろう?」
「まあ、そうとも言えるな?」
自分には黒いおばけにしか見えないという率直な感想をサムは飲み込んだ。
「ところで、サム、その……どうやってあのアイリーンからプロポーズにイエスの返事をもらったんだ?」
「は? それを俺に訊く? 切羽詰まってる?」
「いや、特には。参考までに……だ」
あらぬほうへ目を泳がせるジョンを何となく眺めながら、サムも遠くを見やり、とても穏やかに話を始めた。
「ただひたすら、『愛しているから結婚して欲しい』って、俺が何度も繰り返し頼み込んだから、絆されてイエスと言ってくれたんじゃないかな? アイリーンから愛されてるかどうかなんて、おかまいなしで攻めた。カレッジの寮生活になって、物理的に離れて会う時間が減っただろう? なんかきちんとした約束が欲しくなったんだ。俺が真剣だということを彼女に分かって欲しかった。彼女の愛がまだ熟していなくても、俺が愛してるんだから、それでいいと思うことにした。結果的には彼女が俺のプロポーズにOKしてくれて、俺と生涯を共にすると決めてくれたんだから、俺は幸せ者だよ。これからもアイリーンへ愛情を嫌というほど注いで、育む努力をするだけだ。彼女を離したくないからな」
「サム……。そうか」
「誰だって、全てにおいて自信があるわけじゃない。まあ、生涯を共にしたいと思う相手にはカッコつけても後でボロが出るからな。ありのままの自分でプロポーズすればいいんだよ。おまえ、カッコつけすぎなんだよ! 俺なんか、アイリーンの前では情けない男だぞ」
「オレもだ」
自分もリジーの前では、情けない男だ。
そう思うジョンだった。
「ところで、リジーとのメイクラブはどうなんだ? 詳しく教えろよ~。週2? 週3だったり? く~っ、羨ましいなあ。こいつめ……」
「いや、その……」
「え? まさかとは思いますが。月1?」
「うるさい!」
ジョンの強い否定的なニュアンスを感じとったサム。
「え、え? まだ一度きりとか、じゃあないよな? もしかして俺に遠慮してる?」
「いや、そういう訳では。その、タイミングがなくて……」
「はあ? おまえ、本当にリジーを愛してる?」
「愛している!! 苦しいくらいに……」
「だったらさ、さっさと言うことは言って、やることはやれよ。あんまり女を放っておく男もどうかと思うぜ? で、いつリジーにプロポーズするんだ? もう18歳越えてるんから、堂々と結婚できるだろ!」
「オレが、リジーの自立の妨げになる気はない。……もう少し、自由にさせてやりたい」
「おいおい、そんな悠長な。待たなくていいんじゃね? あんまりのんびりしてると、他の男にカッ攫われるぞ」
軽く言ったつもりが、サムは久しぶりにジョンの鋭い氷のナイフのような視線に刺されることになった。
「わ、わ、わ、そんな怖い顔するなよ。ってか、そんなに心配ならまずプロポーズして、婚約指輪でも渡しておけって。そのくらいの貯蓄はあるだろ? 俺は無かったから、出世払いで許して貰ったんだけどな。てへっ!」
慌てて魔王のブリザードを自虐ネタで鎮めようとする下っ端の悪魔だった。
◇
「なにが、てへっ……よ。もう、バカなんだから」
アイリーンとリジーは、実は買い物に行く前にリジーの部屋に寄っていて、出てきたところ、少し開いたままのジョンの部屋の外で、はからずも男性陣の赤裸々な会話を立ち聞きしてしまっていた。
女性陣は、お互い耳まで真っ赤になった顔を見合わせ、照れながらゆっくり目を逸らした。
聞かなかったことにしましょう、と、ふたりは頷き合うと、静かに階段を降り、外に買い物に出たのだった。
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しばらくぶりにみんなで食事をしようという話になり、予定のないジョン、リジー、アイリーン、サム、が残った。スーザンは、デートがあるからと早々に帰って行った。カイルとの恋は順調らしかった。
4人はジョンの部屋に移動する。
部屋での準備は男性陣、買い出しは女性陣と分かれた。リジーとアイリーンは、楽しそうに買い物に出かけて行く。
部屋に残った男ふたりは、ピザの注文以外は特にすることもなく、最低限の紙皿やコップを出すくらいだった。
改めてジョンの部屋の中を見回すサム。
「いつも殺風景だったのに、なんか、色々と変な物が増えてないか? なんだこの黄色いリボンの黒い物体は?」
サムの指の先には、黒い物体があった。
「ああ、リジーがスペードのぬいぐるみを作ってくれた」
ジョンが珍しく相好を崩す。
「ぷっ! これ、カラスだったのか? なかなかの腕前だな」
「愛嬌あるだろう?」
「まあ、そうとも言えるな?」
自分には黒いおばけにしか見えないという率直な感想をサムは飲み込んだ。
「ところで、サム、その……どうやってあのアイリーンからプロポーズにイエスの返事をもらったんだ?」
「は? それを俺に訊く? 切羽詰まってる?」
「いや、特には。参考までに……だ」
あらぬほうへ目を泳がせるジョンを何となく眺めながら、サムも遠くを見やり、とても穏やかに話を始めた。
「ただひたすら、『愛しているから結婚して欲しい』って、俺が何度も繰り返し頼み込んだから、絆されてイエスと言ってくれたんじゃないかな? アイリーンから愛されてるかどうかなんて、おかまいなしで攻めた。カレッジの寮生活になって、物理的に離れて会う時間が減っただろう? なんかきちんとした約束が欲しくなったんだ。俺が真剣だということを彼女に分かって欲しかった。彼女の愛がまだ熟していなくても、俺が愛してるんだから、それでいいと思うことにした。結果的には彼女が俺のプロポーズにOKしてくれて、俺と生涯を共にすると決めてくれたんだから、俺は幸せ者だよ。これからもアイリーンへ愛情を嫌というほど注いで、育む努力をするだけだ。彼女を離したくないからな」
「サム……。そうか」
「誰だって、全てにおいて自信があるわけじゃない。まあ、生涯を共にしたいと思う相手にはカッコつけても後でボロが出るからな。ありのままの自分でプロポーズすればいいんだよ。おまえ、カッコつけすぎなんだよ! 俺なんか、アイリーンの前では情けない男だぞ」
「オレもだ」
自分もリジーの前では、情けない男だ。
そう思うジョンだった。
「ところで、リジーとのメイクラブはどうなんだ? 詳しく教えろよ~。週2? 週3だったり? く~っ、羨ましいなあ。こいつめ……」
「いや、その……」
「え? まさかとは思いますが。月1?」
「うるさい!」
ジョンの強い否定的なニュアンスを感じとったサム。
「え、え? まだ一度きりとか、じゃあないよな? もしかして俺に遠慮してる?」
「いや、そういう訳では。その、タイミングがなくて……」
「はあ? おまえ、本当にリジーを愛してる?」
「愛している!! 苦しいくらいに……」
「だったらさ、さっさと言うことは言って、やることはやれよ。あんまり女を放っておく男もどうかと思うぜ? で、いつリジーにプロポーズするんだ? もう18歳越えてるんから、堂々と結婚できるだろ!」
「オレが、リジーの自立の妨げになる気はない。……もう少し、自由にさせてやりたい」
「おいおい、そんな悠長な。待たなくていいんじゃね? あんまりのんびりしてると、他の男にカッ攫われるぞ」
軽く言ったつもりが、サムは久しぶりにジョンの鋭い氷のナイフのような視線に刺されることになった。
「わ、わ、わ、そんな怖い顔するなよ。ってか、そんなに心配ならまずプロポーズして、婚約指輪でも渡しておけって。そのくらいの貯蓄はあるだろ? 俺は無かったから、出世払いで許して貰ったんだけどな。てへっ!」
慌てて魔王のブリザードを自虐ネタで鎮めようとする下っ端の悪魔だった。
◇
「なにが、てへっ……よ。もう、バカなんだから」
アイリーンとリジーは、実は買い物に行く前にリジーの部屋に寄っていて、出てきたところ、少し開いたままのジョンの部屋の外で、はからずも男性陣の赤裸々な会話を立ち聞きしてしまっていた。
女性陣は、お互い耳まで真っ赤になった顔を見合わせ、照れながらゆっくり目を逸らした。
聞かなかったことにしましょう、と、ふたりは頷き合うと、静かに階段を降り、外に買い物に出たのだった。
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