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第六部 生死の別
46 京からの旅立ち、そして
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「多治比、かいな……どっかで聞いたことあるわ」
突然、細川与一郎藤孝がそんなことを言い出した。
もう朝ぼらけで、外を見ると明るくなっている。
明智十兵衛光秀は、呑み食いしてごろりとしているうちに、もうこんなになったか……と、ひとつ伸びをした。
「ああ……与一郎、お前と呑むと楽しいんやけど、これからがキツいわ」
「そらお互い様や、十兵衛はん」
宿酔の薬、まだあったかいなと立ち上がる藤孝。
その藤孝に、十兵衛が声をかける。
「待ちぃや、与一郎。さっき……多治比って聞いたことあるて」
「せやせや……それな、多治比な」
藤孝は書を集める趣味がある。古今東西の奇書だけでなく、幕府の公文書の写しも、仕事柄、備えているという。
「そん中に……何やったかなぁ……どっかで多治比いう人に何かを出したいう……」
「何やうろ覚えやなぁ」
「そないなこと言うたかて……夜っぴて飲んだ明けやで? むっつかしいわぁ」
ぶつくさ言いながらも、藤孝は「こっちや」と十兵衛を書庫に誘った。
「ここやったかなぁ……せや、だんだん思い出して来た。たしか周防の大内さまが管領代をやってらした頃やったかな」
「大内やて? そら随分と昔やなぁ」
大内義興。
周防の守護大名にして、「流れ公方」足利義稙を擁して周防より京に入り、「天下人」となって、管領代に就任した男である。
しかしそれはもう五十年あまり前の出来事であり、その大内氏も、数年前に陶晴賢の下剋上によって滅び、陶晴賢自身も毛利元就によって討たれた。
「十兵衛はん、そっちを見て……何や、客? こんな朝早うに!?」
門衛が書庫まで来て、来客のある旨を告げて来て、藤孝は手に持っていた書の山を落としそうになった。
十兵衛が素早くその山を受け取り、藤孝は「やれやれ」とため息をついてから、「誰や」と門衛に聞いた。
「宗易はんやて!? それ、早う言い!」
宗易とは、あの千宗易のことか、と十兵衛が考えていると、抱えている書の山から、ひらりと一枚の紙が舞い降りた。
「十兵衛はん、ちょっと待っといてぇな」
「ああ、かまわんで」
藤孝が駆けていくのをしり目に、十兵衛は書の山を床に置き、落ちた紙を拾った。
その紙には「多治比のこと、神妙」と記されていた。
「な、何やて……こらぁ、管領代・大内義興の書状の写しか! っちゅうことは、多治比はんとやらは、周防とかその辺の……」
十兵衛がその書状をよく見ようとすると、藤孝が息せき切って戻って来て、「早う」と十兵衛の袖を引っ張って来た。
「な、何や与一郎。今、大事な……」
「それどころやない! 宗易はん、えらい人を連れて来はったわ!」
十兵衛が門の方を見ると、そこには千宗易と――尼が立っていた。
*
「安芸へ発ちます」
尼は一礼してそう述べた。
そしてどうやら千宗易は細川藤孝の茶の師匠らしく、藤孝から下にも置かない扱いを受けていた。
けれども「もう旅仕度をしているので」と尼と宗易は、細川邸の中に入ることは無かった。
「宗易さんが一晩でやってくれたので……」
尼は笑った。
しかし、旅装の彼女は、やはりすぐ発つことになるだろうと一晩で仕度を終えていたのにちがいない。
「十兵衛さん、ありがとうございます。わたし、あの人が亡くなって……ちょっとやる気を失っておりまして……」
宗易が何くれとなく茶を教えたりしてくれたが、やはりため息は止まらない。
そこへ十兵衛がやって来たという。
「でも、こうしてあの人から『用事』をもらって、何かやる気が出てきました。この旅を終えたら、また何かを見つけて、やっていきたいと思います」
案外、これを期待して、斎藤道三は尼に書状を渡すように十兵衛に頼んだのかもしれない。
そう思える、尼の微笑みだった。
「ほな」
宗易が一礼したのを機に、尼と宗易は旅立った。
どうやら、宗易は案内役兼護衛役を務めるつもりらしい。
尼を母のように慕う宗易なら、安心だろう。
「かくして、和泉式部は天橋立へと旅立って……」
横で藤孝が気取ったことを言う。
尼が和泉式部のような美女とうわさされていたことにちなんでいるのだ。
「天橋立や無うて、安芸やないか」
「そこはそれ、突っ込まんといてぇな。無粋やで」
「……かもな」
そこで十兵衛は気がついた。
結局、多治比とは誰だったのか。
それを聞いていなかった。
十兵衛が懐中に入れておいた書状を取り出すと、それはもう結構古く、ところどころ滲んでおり、「有田」とか「中井手」という地名は読み取れたものの、あとは分からなかった。
「ま、ええやないかい」
藤孝は笑う。
そして暇か、と十兵衛に聞いて来る。
それは暇だ。
何しろ、主君である斎藤道三を失い、明智の城も落ちた。
牢人の身の上である。
「ほんなら、さっきの和泉式部に……小式部内侍を会わせてみぃひんか?」
「小式部内侍?」
小式部内侍は和泉式部の娘で、母子そろって、百人一首に名を残す歌人である。
さて、この場で藤孝が小式部内侍と呼ぶのは誰かというと。
「帰蝶さま……お姫さまのことか? そンなら尾張に居るで」
ちょっと遠くないかと十兵衛は思ったが、そこへ藤孝がとんでもないことを言い出した。
「何や、知らんのかいな……その帰蝶さまって、尾張の織田信長はんの奥方やろ? そンなら、守護の斯波はんを追放したって話やで? ええ機会やさかい、ちょっと上洛して、公方さまに目通りして、その尾張の支配を認めてもろたらええねん」
「え? 織田の殿サン、守護を追放したんか?」
*
月日は少しさかのぼる。
尾張。
熱田。
織田信行は、津々木蔵人を伴い、熱田神宮へと詣でる最中であった。
懐中には、菅家(菅原道真)の画。
稲生の戦いで兄・信長に敗れ、母・土田御前の仲介で謝罪して、何とか首と自領を安堵したものの、やはり謹慎の態度を示そうと、こうして神仏への信仰に邁進していた。
「もう少しだ」
鳥居が見えてくると、神宮の大宮司の千秋季忠が出迎えに来ていた。
「ようこそお越しで」
千秋季忠。
熱田神宮の大宮司であり、かつ、社領を守る武士としての側面を持つ。
かつて、社領を襲う海賊に敢えて木材調達を依頼し、その調達に出かけた隙に海賊のねぐらを焼き払い、海賊も新たなねぐらをくれればもう襲わないと約束したため、それを与えて海賊の被害を収めたという逸話の持ち主である。
その季忠が「おや」と手を目の上にかざすと、その視線の先に輿が見えた。
「守護さま……斯波義銀さまではありませぬか」
尾張において、輿に乗れるのは、国主である斯波家の者と定められている。
そして斯波義銀は、父・義統が守護代・織田信友に討たれたため、信長に助けを求め、信長が信友の勢力を倒したため、守護となり、今に至る。
その義銀は、信長により「信友から守るため」として、津島に居を構えたが、こうして信長が信友を倒した今となっても、津島に置かれたままであった。
「信行ではないか」
「これは義銀さま」
信行は折り目正しい武士らしく、蔵人と共に拝礼を施す。
義銀はうんうんとうなずいて、「参詣か」と聞いた。
「さようにござりまする」
「うむうむ……それは善きことじゃ……実はな、予も今、参詣に来たところよ」
意味ありげに義銀が蔵人に視線をくれると、蔵人はより一層頭を下げた。
信行としてはわけがわからないが、義銀が来た以上は、先を譲ろうと思って、一歩下がった。
「これこれ」
義銀は輿から降り、信行を立ち上がらせた。
「神の前では、国主も守護もない……善きことなれば、共に詣でようではないか」
「それは」
恐れ多きことと恐縮する信行の肩を、義銀がつかんだ。
「信行」
「は」
「密で話がしたい。来よ」
ここで信行は遠慮すべきだったかもしれない。
だが、うしろで蔵人がその背を押すようにしてきて、大宮司の季忠も何も知らない様子で「どうぞどうぞ」と言ってくるので、信行はもはや抗うこともできず、社殿へと向かった。
……社殿にて供えた菅家の画が、寂しそうに信行を見ている気がした。
突然、細川与一郎藤孝がそんなことを言い出した。
もう朝ぼらけで、外を見ると明るくなっている。
明智十兵衛光秀は、呑み食いしてごろりとしているうちに、もうこんなになったか……と、ひとつ伸びをした。
「ああ……与一郎、お前と呑むと楽しいんやけど、これからがキツいわ」
「そらお互い様や、十兵衛はん」
宿酔の薬、まだあったかいなと立ち上がる藤孝。
その藤孝に、十兵衛が声をかける。
「待ちぃや、与一郎。さっき……多治比って聞いたことあるて」
「せやせや……それな、多治比な」
藤孝は書を集める趣味がある。古今東西の奇書だけでなく、幕府の公文書の写しも、仕事柄、備えているという。
「そん中に……何やったかなぁ……どっかで多治比いう人に何かを出したいう……」
「何やうろ覚えやなぁ」
「そないなこと言うたかて……夜っぴて飲んだ明けやで? むっつかしいわぁ」
ぶつくさ言いながらも、藤孝は「こっちや」と十兵衛を書庫に誘った。
「ここやったかなぁ……せや、だんだん思い出して来た。たしか周防の大内さまが管領代をやってらした頃やったかな」
「大内やて? そら随分と昔やなぁ」
大内義興。
周防の守護大名にして、「流れ公方」足利義稙を擁して周防より京に入り、「天下人」となって、管領代に就任した男である。
しかしそれはもう五十年あまり前の出来事であり、その大内氏も、数年前に陶晴賢の下剋上によって滅び、陶晴賢自身も毛利元就によって討たれた。
「十兵衛はん、そっちを見て……何や、客? こんな朝早うに!?」
門衛が書庫まで来て、来客のある旨を告げて来て、藤孝は手に持っていた書の山を落としそうになった。
十兵衛が素早くその山を受け取り、藤孝は「やれやれ」とため息をついてから、「誰や」と門衛に聞いた。
「宗易はんやて!? それ、早う言い!」
宗易とは、あの千宗易のことか、と十兵衛が考えていると、抱えている書の山から、ひらりと一枚の紙が舞い降りた。
「十兵衛はん、ちょっと待っといてぇな」
「ああ、かまわんで」
藤孝が駆けていくのをしり目に、十兵衛は書の山を床に置き、落ちた紙を拾った。
その紙には「多治比のこと、神妙」と記されていた。
「な、何やて……こらぁ、管領代・大内義興の書状の写しか! っちゅうことは、多治比はんとやらは、周防とかその辺の……」
十兵衛がその書状をよく見ようとすると、藤孝が息せき切って戻って来て、「早う」と十兵衛の袖を引っ張って来た。
「な、何や与一郎。今、大事な……」
「それどころやない! 宗易はん、えらい人を連れて来はったわ!」
十兵衛が門の方を見ると、そこには千宗易と――尼が立っていた。
*
「安芸へ発ちます」
尼は一礼してそう述べた。
そしてどうやら千宗易は細川藤孝の茶の師匠らしく、藤孝から下にも置かない扱いを受けていた。
けれども「もう旅仕度をしているので」と尼と宗易は、細川邸の中に入ることは無かった。
「宗易さんが一晩でやってくれたので……」
尼は笑った。
しかし、旅装の彼女は、やはりすぐ発つことになるだろうと一晩で仕度を終えていたのにちがいない。
「十兵衛さん、ありがとうございます。わたし、あの人が亡くなって……ちょっとやる気を失っておりまして……」
宗易が何くれとなく茶を教えたりしてくれたが、やはりため息は止まらない。
そこへ十兵衛がやって来たという。
「でも、こうしてあの人から『用事』をもらって、何かやる気が出てきました。この旅を終えたら、また何かを見つけて、やっていきたいと思います」
案外、これを期待して、斎藤道三は尼に書状を渡すように十兵衛に頼んだのかもしれない。
そう思える、尼の微笑みだった。
「ほな」
宗易が一礼したのを機に、尼と宗易は旅立った。
どうやら、宗易は案内役兼護衛役を務めるつもりらしい。
尼を母のように慕う宗易なら、安心だろう。
「かくして、和泉式部は天橋立へと旅立って……」
横で藤孝が気取ったことを言う。
尼が和泉式部のような美女とうわさされていたことにちなんでいるのだ。
「天橋立や無うて、安芸やないか」
「そこはそれ、突っ込まんといてぇな。無粋やで」
「……かもな」
そこで十兵衛は気がついた。
結局、多治比とは誰だったのか。
それを聞いていなかった。
十兵衛が懐中に入れておいた書状を取り出すと、それはもう結構古く、ところどころ滲んでおり、「有田」とか「中井手」という地名は読み取れたものの、あとは分からなかった。
「ま、ええやないかい」
藤孝は笑う。
そして暇か、と十兵衛に聞いて来る。
それは暇だ。
何しろ、主君である斎藤道三を失い、明智の城も落ちた。
牢人の身の上である。
「ほんなら、さっきの和泉式部に……小式部内侍を会わせてみぃひんか?」
「小式部内侍?」
小式部内侍は和泉式部の娘で、母子そろって、百人一首に名を残す歌人である。
さて、この場で藤孝が小式部内侍と呼ぶのは誰かというと。
「帰蝶さま……お姫さまのことか? そンなら尾張に居るで」
ちょっと遠くないかと十兵衛は思ったが、そこへ藤孝がとんでもないことを言い出した。
「何や、知らんのかいな……その帰蝶さまって、尾張の織田信長はんの奥方やろ? そンなら、守護の斯波はんを追放したって話やで? ええ機会やさかい、ちょっと上洛して、公方さまに目通りして、その尾張の支配を認めてもろたらええねん」
「え? 織田の殿サン、守護を追放したんか?」
*
月日は少しさかのぼる。
尾張。
熱田。
織田信行は、津々木蔵人を伴い、熱田神宮へと詣でる最中であった。
懐中には、菅家(菅原道真)の画。
稲生の戦いで兄・信長に敗れ、母・土田御前の仲介で謝罪して、何とか首と自領を安堵したものの、やはり謹慎の態度を示そうと、こうして神仏への信仰に邁進していた。
「もう少しだ」
鳥居が見えてくると、神宮の大宮司の千秋季忠が出迎えに来ていた。
「ようこそお越しで」
千秋季忠。
熱田神宮の大宮司であり、かつ、社領を守る武士としての側面を持つ。
かつて、社領を襲う海賊に敢えて木材調達を依頼し、その調達に出かけた隙に海賊のねぐらを焼き払い、海賊も新たなねぐらをくれればもう襲わないと約束したため、それを与えて海賊の被害を収めたという逸話の持ち主である。
その季忠が「おや」と手を目の上にかざすと、その視線の先に輿が見えた。
「守護さま……斯波義銀さまではありませぬか」
尾張において、輿に乗れるのは、国主である斯波家の者と定められている。
そして斯波義銀は、父・義統が守護代・織田信友に討たれたため、信長に助けを求め、信長が信友の勢力を倒したため、守護となり、今に至る。
その義銀は、信長により「信友から守るため」として、津島に居を構えたが、こうして信長が信友を倒した今となっても、津島に置かれたままであった。
「信行ではないか」
「これは義銀さま」
信行は折り目正しい武士らしく、蔵人と共に拝礼を施す。
義銀はうんうんとうなずいて、「参詣か」と聞いた。
「さようにござりまする」
「うむうむ……それは善きことじゃ……実はな、予も今、参詣に来たところよ」
意味ありげに義銀が蔵人に視線をくれると、蔵人はより一層頭を下げた。
信行としてはわけがわからないが、義銀が来た以上は、先を譲ろうと思って、一歩下がった。
「これこれ」
義銀は輿から降り、信行を立ち上がらせた。
「神の前では、国主も守護もない……善きことなれば、共に詣でようではないか」
「それは」
恐れ多きことと恐縮する信行の肩を、義銀がつかんだ。
「信行」
「は」
「密で話がしたい。来よ」
ここで信行は遠慮すべきだったかもしれない。
だが、うしろで蔵人がその背を押すようにしてきて、大宮司の季忠も何も知らない様子で「どうぞどうぞ」と言ってくるので、信行はもはや抗うこともできず、社殿へと向かった。
……社殿にて供えた菅家の画が、寂しそうに信行を見ている気がした。
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