河越夜戦 〜相模の獅子・北条新九郎氏康は、今川・武田連合軍と関東諸侯同盟軍八万に、いかに立ち向かったのか〜

四谷軒

文字の大きさ
上 下
38 / 46
第三部 河越夜戦

35 地黄八幡

しおりを挟む




 春高楼こうろうの花のえん
 巡るさかずき影さして
 千代の松が分け出でし
 昔の光今いづこ

 土井晩翠「荒城月」






 天文十五年四月二十日。
 深夜、子の刻。
 河越城。

 北条孫九郎綱成は日課である笛を吹き終え、城主の間へ戻った。
 場には城将・大道寺盛昌、寄騎・山中主膳ら、主だった将兵が勢ぞろいしていた。
「孫九郎どの、出陣の支度、整いましてござる」
 主膳が一同を代表して言った。
「大儀」
 公の場であるので、綱成は敢えて目上として振る舞う。そうでない時は謙譲する男なので、主膳も気にせず、「ありがたき幸せ」とこたえる。
「……皆の衆、いよいよ四月二十日のの刻となった。盛昌どの、櫓から見える、城外の様子はどうか」
「物見に参ってそうろう
 城将・大道寺盛昌は、敢えて兵に命令せず、自ら櫓を登り、北の方、東明寺の扇谷おうぎがやつ上杉本陣の方を見た。
 風に乗って、低くではあるが、喧騒の音が聞こえた。今宵は敵陣に乱痴気騒ぎがなく、それは盛昌の耳によく届いた。
 月明りの下、目をらすと、灯火が揺れ、倒れる様子も見えた。
「氏康さま、討ち入り! 氏康さま、討ち入っておる模様!」
 おお、と河越の将兵と、小さく感歎の声を漏らした。

 ついに、時が来た。
 半年の長きにわたる籠城。
 初代・伊勢宗瑞からの、世代を越えて、受け継がれた夢。
 それらが報われる時が、今、来たのだ。

「……皆の衆」
 綱成がいつもの調子で、低く言う。だが、聞く者には、いつもより重々しく聞こえた。

「いざ……いざ、出陣!」






 地黄八幡





 この時、河越の城兵は、黄備え及び、元々の城兵をあわせて、約三千。
 綱成は、そのほぼ全軍を率いて出陣することになった。
 綱成自身は固辞したが、城将である盛昌が「非常の時である、非常の策を用うべし」と主張して譲らなかったので、そうなった。

「開門」
 綱成の命令一下、黄備えの中から二人走り出で、城門へと向かう。
 ぎぎ、と軋みながら河越の城門が開いていく。
 この城門を開くのは、いつ以来だろうか。万感の思いを込めて、綱成は城門の開くさまを見つめ、そして、わずかの兵と共に城に残る盛昌の方を振り返った。
「……ご武運を」
「そちらも」
 城門が開く。
 綱成は、自身がまず城外へ出た。周囲を確認する。扇谷上杉の陣は、もはやはっきりと分かるほどの騒ぎにつつまれている。
 関東諸侯の陣は、気づかぬかのように、あるいは息をひそめるかのように、じっと動かず、だんまりを決め込んでいる。おそらくは、千葉利胤の裏工作が回って、戦わないようにしているのだろう。

 ならば、今くべきは。
 新九郎は扇谷上杉を倒しに行った。この動きに反応しているが、様子をうかがっている敵陣がある。
 山内上杉だ。
 山内上杉が、扇谷上杉の陣を攻撃している北条本隊を襲撃すれば。
 あるいは、北条本隊が扇谷上杉を下したところを襲えば――。

 ……ここは、自分が、もうひとつの杉――山内上杉を倒そう。

 綱成が目配せをすると、黄備え及び河越城兵がうなずく。
 ……自然と、心からこみ上げる言葉があった。

「……勝った! 勝った!」

 沈着冷静な綱成らしからぬ、熱い叫び。
 黄備えと城兵も思わず、唱和し、叫ぶのであった。



「……おい、藤三郎、起きてるか」
「……起きてるよ、実忠の親爺おやじいくさのにおいがするからな」
 本庄藤三郎は、一族の長である本庄実忠さねただが声をかける前にとっくに目を覚まし、得物の槍をつかんで素振りをしていた。
「なら、分かっているな、藤三郎、扇谷上杉の陣に夜襲じゃ」
「助けに行くのか?」
 その藤三郎の問いに、実忠はかぶりを振った。
「いや、長野業正なりまさどのは、事態を静観すると言うて、動かぬ。ただ、支度したくをせい、と」
「は?」
 いくら反目している扇谷上杉家だからといって、友軍相手にそこまでやるのか、と藤三郎は呆れた。だが、それよりも、この機会にやっておきたいことがあった。

「禅師、起きてるか」
「起きとるぞ」
 藤三郎が守るかたちで、その隣に太原雪斎の寝所があった。
 雪斎はすでに墨染めの衣に袈裟を着て、青竹を持って、控えていた。
「聞いたとおりだ、禅師」
「うむ。さすがは相模の獅子、やりおるわ」
「感心している場合ではございません、禅師」
 これは実忠の発言である。彼としては、雪斎に采配を執ってもらい、消極的な業正には下がってもらいたかった。
「……いや、親爺、おれはこの機に雪斎禅師に落ち延びてもらうつもりだ」
「何だと」
 藤三郎は説明した。雪斎に、今川義元から召還命令が出ていること。もはや、今川と北条は和睦しており、ここで雪斎が軍の指揮を執ると、その和睦に影響すること。

「……だから、おれはさっさと駿河に行けと言ったんだ。今や、この軍は業正のじじいに牛耳られている。禅師にできることはない。さ、今なら、夜襲の混乱のうちに消えられる。行け、禅師」
「藤三郎……」
 実忠としても、業正のやり様には腹に据えかねるものがあった。八万の軍で包囲し、古河公方まで出馬させ、勝ちが確定した……そう思われた時機になって、上野こうずけからやって来て、場を仕切る。雪斎がやる気を失ったのをいいことに、最初から自分が包囲作戦を実施しているかのように振る舞う。
「分かった、藤三郎。禅師、私も藤三郎と同じ気持ちです。お逃げなされ」
「…………」
 雪斎は目を閉じて、藤三郎と実忠の言葉を聞いていた。

 たしかに、駿河に帰るのなら、今はまたとない機会。
 仮に山内上杉家や扇谷上杉家が勝利するとして、そのころには、遠くに至り、追われても逃げ切ることが出来よう。
 しかし……。

「……拙僧はここに残る」
「おい禅師」
「聞け藤三郎、そして実忠どの……拙僧は、この戦の原因もとじゃ。だからこそ、今この場で逃げることはできぬ。それに……」
 雪斎は藤三郎のことを、わが子を見守る父親のような目で見た。
「藤三郎、お前、戦いたいのじゃろう、地黄八幡と」
「い、いや、そりゃそうだが」
「なら、拙僧がここにおれば、奴は必ずここに来る」
「はっ!?」
「拙僧はな……地黄八幡の北条、いやさ『福島』綱成の、一族の仇なんじゃ」

 今川家の有力家臣、福島家。その中で随一の武将として知られた、福島正成。
 その正成を、武田家への戦へと駆り立て、甲斐に攻め寄せさせた。彼は、その甲斐にて、勇将・原虎胤と戦い、そして敗れたのである。この敗戦の責を逃がれるため、福島一族の長である福島越前守は、正成を「負け犬」として扱い、その一家を追い討ちしたのである……。

「まあ、結局、その越前守も、拙僧と承芳、ではない義元公により討ち果たされたがの。それにしても、正成の遺児たちを、よりによって伊豆へ逃がしてしまったのは失策じゃったな。福島綱成に弁千代……今川に欲しかったわい」
 おかげで、北条は大いに力を得たがのう……と、雪斎はひとりごちた。
らちもないことを言うた……要はの、拙僧と共にいれば、地黄八幡は必ず来る。藤三郎、拙僧が餌となるで、手柄とせい」
「……禅師」
「そんな顔するな、藤三郎。拙僧は死ぬつもりはないぞ。手柄とせい、と言うたではないか。おぬしの技倆うでまえを信じてなければ、言えぬよ」
「お、おう、そうだな……」
 雪斎の決意は固く、翻意できそうにないものと、藤三郎は悟った。
 実忠も同様だった。そこで実忠は、雪斎に山内上杉憲政のそば近くに移るよう頼んだ。憲政の近くならば、主君を守る兵が控えている。雪斎が脱出を拒むのなら、せめて生きる確率を上げてあげたい、という実忠の真情であった。



「孫九郎どのの『読み』どおり、城から山内上杉の陣まで、『道』ができておりまする!」

 山中主膳は果敢にも物見に向かい、河越城外の湿地帯において、城の南方、砂久保にある山内上杉の陣へ、馬蹄で踏み固められた「道」ができていることを確認し、戻ってきた。
 北条孫九郎綱成は、河越城の櫓から、毎日外の様子をうかがっていた。そして、小競り合いの際、敵がいつも「同じ道筋」をたどっていることを。
 綱成が弁千代の襲撃を知ることができたのも、この観察のおかげであり、そしてその救助に向かい、戻る時に、綱成はこの「道」の存在を確認していた。

「雪斎禅師の策であろうが、この道、逆に使わせてもらう……よし」
 綱成は全軍にその「道」を使って突進し、そのまま突撃するよう命じた。
「扇谷上杉への夜襲、すでに察せられているであろう。戦支度いくさじたくをしている最中か、あるいは終えつつあるのか……いずれにしろ、時を置かずに突撃あるのみ。つづけ!」
 黄備えは無言でうなずき、河越城兵もまたそれにならい、猛進して山内上杉の陣営に突っ込んだ。

 驚いたのは山内上杉憲政であり、その家宰である長野業正である。
「馬鹿な、敵襲だと?」
「業正、こはなにごとぞ」
「くっ……まさか、まさか河越城内も呼応するだと……そうか、先の太田全鑑の陣の騒ぎ……あれか!」
「いかがする、業正……」
 苦み走った顔で、業正は場に控える宿将に声をかけた。
「……本間近江守!」
「はっ」
「迎え撃て! 赤堀上野介こうずけのすけも連れて、とにかく防げ!」
「かしこまってそうろう
 さすがに宿将らしく、本間近江守はあわてる上野介を落ち着かせながら、迎撃に向かった。
 一方、その主君たる憲政は、本拠である平井へ逃げるかどうかと、口に出してまで悩んでいた。
「…………」
 うろたえる主君をよそに、業正は歯噛みして悔しがった。

 あと一日、あと一晩、早ければ。
 あの城を総攻めにして、今と立場は逆転していたものを。
 おのれ。
 おのれ。

「かくなる上は……」
 さすがに上州の黄斑とらと称せられるだけあって、業正は逆にこの機会を捉えて、綱成を討ち取るという方針に転換した。
「倉賀野三河守やある!」
「は、ここに」
 馬廻り・倉賀野三河守は麾下の倉賀野十六騎を従え、即座に憲政の御前に、つまり業正の前へと参じた。
「汝に命ず。今この隙に、汝らは手勢を率いて河越城へけ。おそらく今は空城と見た。陥《お》としてしまえば、奴らは浮足立つ」
「承知つかまつった」
 倉賀野三河守は、倉賀野十六騎および手勢を率い、夜陰に乗じ、北条綱成の黄備えや河越城兵らを大きく迂回して、河越城へとひた走って行く。

「よし、これで目にもの見せてくれる」
「……父上よぉ」
 業正がふと振り向くと、嫡男の吉業が、鎧兜を身につけ、なんと太刀を抜いたままで歩いてきていた。
 主君である憲政を前に、無礼な振る舞いであったが、業正は意に介さなかった。
 うろたえる主君より、まだ殺意というか戦意に満ちた嫡男がましであるし、なにより可愛い。
 案の定、憲政は上の空で、吉業が来たことに気づいていない。
「父上ぇ、はよう、あの地黄八幡をりたいんだがよぉ……行っていいか?」
「あわてるな。今、本間江州ごうしゅうと赤堀上野介を向かわせた。奴らはやるだろうが、地黄八幡にはかなうまい……で、『手負い』となった地黄八幡を狩るのは、そのときよ」
「あぁ、そうかぁ……」
「そうよ、おぬしの初陣、あの地黄八幡は格好の獲物よ」
「くくっ、楽しみだなぁ」
 ほくそ笑む業正と吉業に、ちょうどその場に来た本庄実忠は不審に思ったが、気にせず憲政に話しかけ、雪斎と藤三郎をこの場に連れてくる許可を得たのであった。



 北条孫九郎綱成の率いる黄備えと河越城兵は、山内上杉の陣営を襲撃当初は、奇襲とあって、かなりの戦果を挙げた。
 が、宿将である本間近江守が赤堀上野介を引き連れて防戦にあたると、手ごたえが硬いものに変わった。
 寄騎の山中主膳は、綱成に話しかける。
「孫九郎どの、これは」
「山内上杉、さすがに一筋縄ではいかぬか」
「いかがする?」
「突破あるのみ。この先には、山内上杉憲政、太原雪斎が居る。彼奴《きゃつ》らを取れば……」
 言うや否や、綱成はたった一人で駆けだす。目指すは、守りの要、本間近江守である。
「本間江州、覚悟!」
 綱成の槍が、江州こと近江守の頭蓋を狙う。
「地黄八幡、相手にとって不足なし!」
 近江守は槍を振りかぶって、綱成の槍撃を防ぐ。
 赤堀上野介は、近江守の助けに入ったものかと戸惑う。
「上野介、うろたえるな! そなたは兵の指揮に徹せよ! このいくさ、守っていれば、勝てる! 業正どのの率いる手勢が来れば終わりよ!」
「わ、分かった、頼む、江州!」
 だがその長野業正から、実は捨て石にされているとは、近江守も上野介も知るよしもなかった。

 一方の山中主膳は、近江守と槍の応酬をはじめた綱成の背中に声をかけた。
「孫九郎どの! 返事ができないようじゃから、返事はいらぬ! わしと河越城兵が道を開く! 孫九郎どのと黄備えは、進まれい!」
「主膳どの! 待たれ……」
 綱成は振り向かずに主膳に命令して、主膳を止めようとした。
 だが、一瞬早く、主膳は河越城兵に突撃を命じた。
「かかれ! 黄備えに道を開くのじゃ! 河越衆の意地を見せるのは、今ぞ!」
 この籠城ろうじょう中、主膳に対して畏敬の念を抱くようになっていた河越城兵は、息を合わせて、赤堀上野介に向かって突進する。
「馬鹿な、何でこんな勢いが……」
 赤堀上野介がうろたえる。彼は、河越の兵は飢え、かつ弱り切っていると判断して、守りに徹していた。だが、その予想を上回る突撃を食らい、上野介は落馬してしまう。
「上野介!」
 近江守が思わず声を出す。
 その隙を、綱成は逃がさなかった。
「……隙あり」
「……ぐっ」
 綱成は、両手持ちから片手持ちに槍を持ちかえ、もう一方の片手で、抜刀と同時に近江守の首筋を斬った。
「か……は……」
 頸動脈から激しく流血し、近江守は倒れる。
「お……のれ……」
「こたびの戦において、主、新九郎氏康の定めた軍法により、首は取らぬ……御免!」
 綱成は一瞬だけ瞑目し、そして黄備えに号令し、山内上杉本陣へと向かう。
 その後ろ姿を見つつ、本間近江守は、長野業正率いる軍勢が加勢に来るのを待ちつづけた。

 ……しかし、業正は近江守と上野介を捨て石と考えており、当然来るはずもなく、やがて、近江守は息絶え、上野介も激戦の末、主膳に討ち取られてしまうのであった。





地黄八幡 了
しおりを挟む
感想 7

あなたにおすすめの小説

【短編】輿上(よじょう)の敵 ~ 私本 桶狭間 ~

四谷軒
歴史・時代
【あらすじ】 今川義元の大軍が尾張に迫る中、織田信長の家臣、簗田政綱は、輿(こし)が来るのを待ち構えていた。幕府により、尾張において輿に乗れるは斯波家の斯波義銀。かつて、信長が傀儡の国主として推戴していた男である。義元は、義銀を御輿にして、尾張の支配を目論んでいた。義銀を討ち、義元を止めるよう策す信長。が、義元が落馬し、義銀の輿に乗って進軍。それを知った信長は、義銀ではなく、輿上の敵・義元を討つべく出陣する。 【表紙画像】 English: Kano Soshu (1551-1601)日本語: 狩野元秀(1551〜1601年), Public domain, ウィキメディア・コモンズ経由で

敵は家康

早川隆
歴史・時代
旧題:礫-つぶて- 【第六回アルファポリス歴史・時代小説大賞 特別賞受賞作品】 俺は石ころじゃない、礫(つぶて)だ!桶狭間前夜を駆ける無名戦士達の物語。永禄3年5月19日の早朝。桶狭間の戦いが起こるほんの数時間ほど前の話。出撃に際し戦勝祈願に立ち寄った熱田神宮の拝殿で、織田信長の眼に、彼方の空にあがる二条の黒い煙が映った。重要拠点の敵を抑止する付け城として築かれた、鷲津砦と丸根砦とが、相前後して炎上、陥落したことを示す煙だった。敵は、餌に食いついた。ひとりほくそ笑む信長。しかし、引き続く歴史的大逆転の影には、この両砦に籠って戦い、玉砕した、名もなき雑兵どもの人生と、夢があったのである・・・ 本編は「信長公記」にも記された、このプロローグからわずかに時間を巻き戻し、弥七という、矢作川の流域に棲む河原者(被差別民)の子供が、ある理不尽な事件に巻き込まれたところからはじまります。逃亡者となった彼は、やがて国境を越え、風雲急を告げる東尾張へ。そして、戦地を駆ける黒鍬衆の一人となって、底知れぬ謀略と争乱の渦中に巻き込まれていきます。そして、最後に行き着いた先は? ストーリーはフィクションですが、周辺の歴史事件など、なるべく史実を踏みリアリティを追求しました。戦場を駆ける河原者二人の眼で、戦国時代を体感しに行きましょう!

花倉の乱 ~今川義元はいかにして、四男であり、出家させられた身から、海道一の弓取りに至ったか~

四谷軒
歴史・時代
【あらすじ】 今川義元は、駿河守護・今川氏親の四男として生まれ、幼くして仏門に入れられていた。 しかし、十代後半となった義元に転機が訪れる。 天文5年(1536年)3月17日、長兄と次兄が同日に亡くなってしまったのだ。 かくして、義元は、兄弟のうち残された三兄・玄広恵探と、今川家の家督をめぐって争うことになった。 ――これは、海道一の弓取り、今川義元の国盗り物語である。 【表紙画像】 Utagawa Kuniyoshi, Public domain, ウィキメディア・コモンズ経由で

岩倉具視――その幽棲の日々

四谷軒
歴史・時代
【あらすじ】 幕末のある日、調子に乗り過ぎた岩倉具視は(主に公武合体とか和宮降嫁とか)、洛外へと追放される。 切歯扼腕するも、岩倉の家族は着々と岩倉村に住居を手に入れ、それを岩倉の幽居=「ねぐら」とする。 岩倉は宮中から追われたことを根に持ち……否、悶々とする日々を送り、気晴らしに謡曲を吟じる毎日であった。 ある日、岩倉の子どもたちが、岩倉に魚を供するため(岩倉の好物なので)、川へと釣りへ行く。 そこから――ある浪士との邂逅から、岩倉の幽棲――幽居暮らしが変わっていく。 【表紙画像】 「ぐったりにゃんこのホームページ」様より

大江戸美人揃

沢藤南湘
歴史・時代
江戸三大美人の半生です。

鬼を討つ〜徳川十六将・渡辺守綱記〜

八ケ代大輔
歴史・時代
徳川家康を天下に導いた十六人の家臣「徳川十六将」。そのうちの1人「槍の半蔵」と称され、服部半蔵と共に「両半蔵」と呼ばれた渡辺半蔵守綱の一代記。彼の祖先は酒天童子を倒した源頼光四天王の筆頭で鬼を斬ったとされる渡辺綱。徳川家康と同い歳の彼の人生は徳川家康と共に歩んだものでした。渡辺半蔵守綱の生涯を通して徳川家康が天下を取るまでの道のりを描く。表紙画像・すずき孔先生。

短編集「戦国の稲妻」

四谷軒
歴史・時代
【あらすじ】 (朝(あした)の信濃に、雷(いかづち)、走る。 ~弘治三年、三度目の川中島にて~) 弘治三年(1557年)、信濃(長野県)と越後(新潟県)の国境――信越国境にて、甲斐の武田晴信(信玄)と、越後の長尾景虎(上杉謙信)の間で、第三次川中島の戦いが勃発した。 先年、北条家と今川家の間で甲相駿三国同盟を結んだ晴信は、北信濃に侵攻し、越後の長尾景虎の味方である高梨政頼の居城・飯山城を攻撃した。また事前に、周辺の豪族である高井郡計見城主・市河藤若を調略し、味方につけていた。 これに対して、景虎は反撃に出て、北信濃どころか、さらに晴信の領土内へと南下する。 そして――景虎は一転して、飯山城の高梨政頼を助けるため、計見城への攻撃を開始した。 事態を重く見た晴信は、真田幸綱(幸隆)を計見城へ急派し、景虎からの防衛を命じた。 計見城で対峙する二人の名将――長尾景虎と真田幸綱。 そして今、計見城に、三人目の名将が現れる。 (その坂の名) 戦国の武蔵野に覇を唱える北条家。 しかし、足利幕府の名門・扇谷上杉家は大規模な反攻に出て、武蔵野を席巻し、今まさに多摩川を南下しようとしていた。 この危機に、北条家の当主・氏綱は、嫡男・氏康に出陣を命じた。 時に、北条氏康十五歳。彼の初陣であった。 (お化け灯籠) 上野公園には、まるでお化けのように大きい灯籠(とうろう)がある。高さ6.06m、笠石の周囲3.36m。この灯籠を寄進した者を佐久間勝之という。勝之はかつては蒲生氏郷の配下で、伊達政宗とは浅からぬ因縁があった。

けもの

夢人
歴史・時代
この時代子供が間引きされるのは当たり前だ。捨てる場所から拾ってくるものもいる。この子らはけものとして育てられる。けものが脱皮して忍者となる。さあけものの人生が始まる。

処理中です...