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破の章 覇者の胸中を知る者は誰(た)ぞ ──中国大返し──
14 その頃、中国では
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その夜、羽柴秀吉は、軍師の黒田官兵衛から間者を捉えたと聞いた。
「光秀の間者?」
最初は、同じ織田家の家臣同士であっても、競争相手としての「探り」もあるだろう……それだと思った。
「いえそれが」
官兵衛はらしくもなく歯切れが悪い。
しかも、本陣に呼び出し、人払いしておいて、これだ。
今、備中高松城を囲んでいるところ、夜半、たたき起こされたところである。
「くわんぴょうえよ」
このようなことで、この、貴重な謀臣を怒鳴り散らすなどありえないが、いかんせん、眠すぎた。
「詳細は明日にせよ、明日に……では明朝……」
欠伸と共に立ち上がった秀吉の目の前で、本陣になだれ込む者がいた。
「あ、兄者」
「小一郎か」
羽柴秀長、秀吉の弟である。
常は落ち着いている雰囲気の彼であるが、この時は周章狼狽していた。
「み、京から」
秀長の手に、書状が握られている。
秀吉の目が開いた。
起きた。
目が覚めた。
「宗仁どのか!」
宗仁、つまり長谷川宗仁は信長の側近、そして茶人として知られる。
その宗仁からの書状。
これは、本能寺に招かれて以来、ぷっつりと音信不通となったねねの、何か情報を仕入れてくれたのではないか。
「早よ見せい、早よ」
秀吉が秀長の手から書状を奪い取ろうとするその時。
横から手が出て来て、その書状を横取りした。
「くわんぴょうえ、おぬし」
いい加減にしろと秀吉は思ったが、官兵衛が代わりに書状を差し出されてくると、黙りこくった。
この謀臣は無意味なことはしない。
そして頭がいい。
つまり、おそらくは光秀の間者の書状を先に読み、それから宗仁の書状を読め、と。
「そういうことか、ん?」
「それがしは宗仁どのの書状、今知り申した……が、何となく、中身はわかり申す。それゆえ、秀吉どのにおかれましては、まず先に、と……」
「…………」
不得要領な秀吉だが、この軍師に従って、間違えたことは無い。
二つの書状を矯めつ眇めつして、それから明智の間者の書状を手に取った。
*
「……これは」
明智光秀の間者の持っていた書状、それは光秀直筆のもので、内容は過激を極めた。
「本能寺の……信長さま、帰蝶さまを襲った!?」
驚愕のどん底にたたき落されたような表情の秀吉。
そして次の文章で、さらに下へと落とされたような表情をした。
「本能寺は焼き討ち……信忠さま……討たれた!? おい、これって……」
「最後まで」
官兵衛は書状を繰って、秀吉につづきを読むよう、最後まで読むよう、うながした。
「それゆえ、毛利は羽柴を攻めよ、はさみうちじゃ、と……」
秀吉の書状を持つ手がぶるぶる震える。
仕えるべきあるじ、その正室、嫡子が討たれ、そして何より己の妻女が焼き討ちされたかもしれないというのだ。
これが怒らずにいられるか。
青筋を立てた秀吉の眼前に、今度は秀長が書状が突き出した。
「…………」
秀吉は無言でその書状を手に取る。
いかに怒り狂っているとはいえ、このような時の情報の貴重さはわかる。
果たして宗仁の目から見た本能寺の変とは、いかなるものか。
「……あ」
怒りの目から、涙がこぼれた。
宗仁の書状は、表書きこそ宗仁の手になるものであったが、その中身は、まごうとことなきねねの筆蹟によるものだった。
これほどの生存確認の方法があろうか。
秀吉はうんうんとうなずきながら書状を読んだ。
読み進めるうちに、やがて涙は治まり、表情が無表情となった。
それは、秀吉が考えごとをしている証拠だ。真剣に。
「ふむ」
読み終わる頃には、いつもの笑みを浮かべる秀吉だったが、その目が笑っていないことを、官兵衛も秀長も知っている。
「書状、読んでも?」
「許す」
官兵衛と秀長はふたりならんでその書状を開いて読んだ。
その様子が、秀吉には少し可笑しかった。
*
「……くわんぴょうえよ」
なぜに明智の文を先に読ませた、と秀吉は聞いた。
官兵衛は恐れ入ったように平伏し、もし宗仁の書状が希望的観測に終始しているようだったら、明智の書状を嘘と思い込もうとし、秀吉の「分析」が曇ることを警戒したと答えた。
「……そうか」
「ですが宗仁さまの書状が、実はねねどのの書状だったというのは意想外。されどそれがしの『順番』どおり読まれてよかったものと、自負しております」
「なぜじゃ?」
「……それこそ、ねねさまの無事に安堵され、明智の書状など、小馬鹿にして、読み捨てられて終わりでしょう」
「……そうじゃのう」
もはや眠いなどと言っていられない。
今すぐにでも、毛利と、備中高松城と和睦を結ばねばなるまい。
そのためにも、先に明智の書状を読めてよかった。
あの光秀が、懇切丁寧に毛利の現状を分析してくれている、書状を。
「……一刻も早く、毛利と和睦を。ねねはとりあえず無事だが、目指すと言っていた近江、それも長浜は攻められておるじゃろう」
ねねは見たこと聞いたこと、これからの自分の動きなど、淡々と書いていたが、それが逆に秀吉からすると、ねねの考えていることが透けて見えるのだ。
換言すると、それは秀吉自身の考えていることと同じである。
「おそらく、北国の柴田勝家を警戒し、光秀は近江を、長浜をおさえる」
「では兄者、長浜に向かった義姉上は」
秀長が恐る恐る問うが、秀吉は笑った。
「安心せい、ねねは勝ち目のない戦いはすまい。皆を逃がしてくれよう。ねねでないと、城を枕にとか言いかねんしのう……で、逃がしてそれからねねは……」
そこではっと気がついたように秀吉は、秀長に二言三言ささやいた。
それを聞いた秀長は、一礼して本陣から立ち去った。
「くわんぴょうえ」
後に残された官兵衛は、秀吉に話しかけられても、すぐには返事ができなかった。
怜悧、豪胆で知られる彼でも、さすがに事態が大きく、重かったので、いい加減頭脳が限界だったからである。
「しっかりせい」
先ほどまで眠そうにしていた秀吉に励まされるのは釈然としないが、ここが正念場なのは事実である。
「失礼いたした。で?」
「おう。毛利との和睦、任せてよいか」
「安んじてお任せあれ」
なんだ、そんなことか。
そう言いたげな安堵の表情を浮かべる官兵衛。
だが官兵衛は知らない。
秀吉が、その肺腑をえぐる言葉が放つことを。
「官兵衛」
「はい」
立ち上がりかけた官兵衛。
かたわらの杖を立てたその時。
「……裏切るなよ」
官兵衛は思わず杖を取り落としてしまった。
秀吉は無表情にそれを拾い、「気ぃつけぇ」と渡してくる。
無表情に。
……何を、気をつけるのか。
毛利に本能寺のことを洩らさないようにか。
あるいは、洩らすように思うことか。
それとも、明智と密かに通じることか。
「…………」
秀吉は何も言わない。
だがその沈黙こそが、何よりも雄弁に語っていた。
言え。
と。
「……秀吉どの」
「何じゃ」
「今こそ、明智を討ち、そして、天下をお取りなされ」
「ん」
秀吉は満足そうにうなずき、そして初めて相好を崩した。
「……くわんぴょうえにそこまで言われては、しようがないの。どれ、分不相応じゃが、狙ってみるかの……天下を」
この期に及んで、織田家当主生存の可能性と、壁に耳ありを警戒している。
それでいて、天下への強い野心を目覚めさせている。
秀吉は本当に化け物だな。
官兵衛は、もし信長が生きていたとしたら、おのれが切り捨てられるであろうことを自覚しながらも、興奮を禁じ得なかった。
国盗り。
しかも、この日の本という国の国盗り。
これほどの大仕事を、これほどの機会を得て、やることのできる軍師がいようか。
いや、いまい。
「……腕が鳴るか、くわんぴょうえ」
「……秀吉どのこそ」
停滞していた頭脳は、すっかり調子を取り戻し、どころか、停滞する前以上に、回転を始める。
思えば、これを企図して秀吉は脅しを、否、発破をかけてきたのか。
しかし、そんなことはどうでもいい。
秀吉は、腕が鳴るかと言った。
つまり、やっていいということだ。
思い切り、やっていいということだ。
「……では、思い切り、やりますか」
「……そうだのう。面白くなって来たわい」
そう言ってから秀吉は「おっと」とつぶやき、次いで、ないしょないしょと楽しそうに微笑むのだった。
「光秀の間者?」
最初は、同じ織田家の家臣同士であっても、競争相手としての「探り」もあるだろう……それだと思った。
「いえそれが」
官兵衛はらしくもなく歯切れが悪い。
しかも、本陣に呼び出し、人払いしておいて、これだ。
今、備中高松城を囲んでいるところ、夜半、たたき起こされたところである。
「くわんぴょうえよ」
このようなことで、この、貴重な謀臣を怒鳴り散らすなどありえないが、いかんせん、眠すぎた。
「詳細は明日にせよ、明日に……では明朝……」
欠伸と共に立ち上がった秀吉の目の前で、本陣になだれ込む者がいた。
「あ、兄者」
「小一郎か」
羽柴秀長、秀吉の弟である。
常は落ち着いている雰囲気の彼であるが、この時は周章狼狽していた。
「み、京から」
秀長の手に、書状が握られている。
秀吉の目が開いた。
起きた。
目が覚めた。
「宗仁どのか!」
宗仁、つまり長谷川宗仁は信長の側近、そして茶人として知られる。
その宗仁からの書状。
これは、本能寺に招かれて以来、ぷっつりと音信不通となったねねの、何か情報を仕入れてくれたのではないか。
「早よ見せい、早よ」
秀吉が秀長の手から書状を奪い取ろうとするその時。
横から手が出て来て、その書状を横取りした。
「くわんぴょうえ、おぬし」
いい加減にしろと秀吉は思ったが、官兵衛が代わりに書状を差し出されてくると、黙りこくった。
この謀臣は無意味なことはしない。
そして頭がいい。
つまり、おそらくは光秀の間者の書状を先に読み、それから宗仁の書状を読め、と。
「そういうことか、ん?」
「それがしは宗仁どのの書状、今知り申した……が、何となく、中身はわかり申す。それゆえ、秀吉どのにおかれましては、まず先に、と……」
「…………」
不得要領な秀吉だが、この軍師に従って、間違えたことは無い。
二つの書状を矯めつ眇めつして、それから明智の間者の書状を手に取った。
*
「……これは」
明智光秀の間者の持っていた書状、それは光秀直筆のもので、内容は過激を極めた。
「本能寺の……信長さま、帰蝶さまを襲った!?」
驚愕のどん底にたたき落されたような表情の秀吉。
そして次の文章で、さらに下へと落とされたような表情をした。
「本能寺は焼き討ち……信忠さま……討たれた!? おい、これって……」
「最後まで」
官兵衛は書状を繰って、秀吉につづきを読むよう、最後まで読むよう、うながした。
「それゆえ、毛利は羽柴を攻めよ、はさみうちじゃ、と……」
秀吉の書状を持つ手がぶるぶる震える。
仕えるべきあるじ、その正室、嫡子が討たれ、そして何より己の妻女が焼き討ちされたかもしれないというのだ。
これが怒らずにいられるか。
青筋を立てた秀吉の眼前に、今度は秀長が書状が突き出した。
「…………」
秀吉は無言でその書状を手に取る。
いかに怒り狂っているとはいえ、このような時の情報の貴重さはわかる。
果たして宗仁の目から見た本能寺の変とは、いかなるものか。
「……あ」
怒りの目から、涙がこぼれた。
宗仁の書状は、表書きこそ宗仁の手になるものであったが、その中身は、まごうとことなきねねの筆蹟によるものだった。
これほどの生存確認の方法があろうか。
秀吉はうんうんとうなずきながら書状を読んだ。
読み進めるうちに、やがて涙は治まり、表情が無表情となった。
それは、秀吉が考えごとをしている証拠だ。真剣に。
「ふむ」
読み終わる頃には、いつもの笑みを浮かべる秀吉だったが、その目が笑っていないことを、官兵衛も秀長も知っている。
「書状、読んでも?」
「許す」
官兵衛と秀長はふたりならんでその書状を開いて読んだ。
その様子が、秀吉には少し可笑しかった。
*
「……くわんぴょうえよ」
なぜに明智の文を先に読ませた、と秀吉は聞いた。
官兵衛は恐れ入ったように平伏し、もし宗仁の書状が希望的観測に終始しているようだったら、明智の書状を嘘と思い込もうとし、秀吉の「分析」が曇ることを警戒したと答えた。
「……そうか」
「ですが宗仁さまの書状が、実はねねどのの書状だったというのは意想外。されどそれがしの『順番』どおり読まれてよかったものと、自負しております」
「なぜじゃ?」
「……それこそ、ねねさまの無事に安堵され、明智の書状など、小馬鹿にして、読み捨てられて終わりでしょう」
「……そうじゃのう」
もはや眠いなどと言っていられない。
今すぐにでも、毛利と、備中高松城と和睦を結ばねばなるまい。
そのためにも、先に明智の書状を読めてよかった。
あの光秀が、懇切丁寧に毛利の現状を分析してくれている、書状を。
「……一刻も早く、毛利と和睦を。ねねはとりあえず無事だが、目指すと言っていた近江、それも長浜は攻められておるじゃろう」
ねねは見たこと聞いたこと、これからの自分の動きなど、淡々と書いていたが、それが逆に秀吉からすると、ねねの考えていることが透けて見えるのだ。
換言すると、それは秀吉自身の考えていることと同じである。
「おそらく、北国の柴田勝家を警戒し、光秀は近江を、長浜をおさえる」
「では兄者、長浜に向かった義姉上は」
秀長が恐る恐る問うが、秀吉は笑った。
「安心せい、ねねは勝ち目のない戦いはすまい。皆を逃がしてくれよう。ねねでないと、城を枕にとか言いかねんしのう……で、逃がしてそれからねねは……」
そこではっと気がついたように秀吉は、秀長に二言三言ささやいた。
それを聞いた秀長は、一礼して本陣から立ち去った。
「くわんぴょうえ」
後に残された官兵衛は、秀吉に話しかけられても、すぐには返事ができなかった。
怜悧、豪胆で知られる彼でも、さすがに事態が大きく、重かったので、いい加減頭脳が限界だったからである。
「しっかりせい」
先ほどまで眠そうにしていた秀吉に励まされるのは釈然としないが、ここが正念場なのは事実である。
「失礼いたした。で?」
「おう。毛利との和睦、任せてよいか」
「安んじてお任せあれ」
なんだ、そんなことか。
そう言いたげな安堵の表情を浮かべる官兵衛。
だが官兵衛は知らない。
秀吉が、その肺腑をえぐる言葉が放つことを。
「官兵衛」
「はい」
立ち上がりかけた官兵衛。
かたわらの杖を立てたその時。
「……裏切るなよ」
官兵衛は思わず杖を取り落としてしまった。
秀吉は無表情にそれを拾い、「気ぃつけぇ」と渡してくる。
無表情に。
……何を、気をつけるのか。
毛利に本能寺のことを洩らさないようにか。
あるいは、洩らすように思うことか。
それとも、明智と密かに通じることか。
「…………」
秀吉は何も言わない。
だがその沈黙こそが、何よりも雄弁に語っていた。
言え。
と。
「……秀吉どの」
「何じゃ」
「今こそ、明智を討ち、そして、天下をお取りなされ」
「ん」
秀吉は満足そうにうなずき、そして初めて相好を崩した。
「……くわんぴょうえにそこまで言われては、しようがないの。どれ、分不相応じゃが、狙ってみるかの……天下を」
この期に及んで、織田家当主生存の可能性と、壁に耳ありを警戒している。
それでいて、天下への強い野心を目覚めさせている。
秀吉は本当に化け物だな。
官兵衛は、もし信長が生きていたとしたら、おのれが切り捨てられるであろうことを自覚しながらも、興奮を禁じ得なかった。
国盗り。
しかも、この日の本という国の国盗り。
これほどの大仕事を、これほどの機会を得て、やることのできる軍師がいようか。
いや、いまい。
「……腕が鳴るか、くわんぴょうえ」
「……秀吉どのこそ」
停滞していた頭脳は、すっかり調子を取り戻し、どころか、停滞する前以上に、回転を始める。
思えば、これを企図して秀吉は脅しを、否、発破をかけてきたのか。
しかし、そんなことはどうでもいい。
秀吉は、腕が鳴るかと言った。
つまり、やっていいということだ。
思い切り、やっていいということだ。
「……では、思い切り、やりますか」
「……そうだのう。面白くなって来たわい」
そう言ってから秀吉は「おっと」とつぶやき、次いで、ないしょないしょと楽しそうに微笑むのだった。
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