悪役令嬢に転生したら溺愛された。(なぜだろうか)

どくりんご

文字の大きさ
上 下
15 / 61
第二章 まさかの乙女ゲーム世界!

皇太子殿下とのお茶会 4

しおりを挟む

 重い。なんか話が重くなってきたぞー!
 軽くなれー!

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「なんで?なんで誰も僕を見てくれないの?どうして僕はこんな思いをしなくちゃいけないの?愛されちゃいけないの?」

 それはアル君から出た本音。愛されたい少年はのぞみを叶えられない。
 
 ポツリ…ポツリと彼は自分の話を始めた。自分が聖属性であり、そして自分から人が離れていったことを。
 そんな自分から人の愛を奪っていった聖属性が大嫌いだと。
 聞くにはあまりにも酷く悲しいものだった。確かに彼の力は恐ろしい。軽々と自分の国を乗っ取られてしまえる程に。距離をおいてしまうほど。
 五歳までは幸せだった、愛し愛され暮らしていたあの頃が懐かしいと。

 私の肩に顔を埋めていてアル君の顔はわからない。

「私には貴方の気持ちがわかる。けれどわからない部分がいくつかある」

 ビクッと肩が揺れて彼の心情を理解する。

「愛されてはいけない人間なんているはずないよ」

 その言葉を言った後、彼は瞬間的にかおを上げる。その顔は涙でぐしゃぐしゃでびっくりしたような…そんなような顔をしていた。『愛されてはいけない人間なんているはずない』この言葉は私にとっては当たり前のような言葉だった。


「それに貴方はちゃんと愛されているよ」


 庭園のすみにはたくさんの人がいた。
 メイドも執事も王妃も国王陛下も。
 誰もが心配そうにこちらのようすをみていた。お茶会の始まりからずっといた。この事から確実に分かるのは1つだけ。

 アル君が愛されているということだけ。

「すまん、お前とどう接して良いかわからなくなった。息子としてかあるいは聖属性持ちの一人としてか」

「ごめんなさい、アルベルト。貴方のことを何も考えてなかった。こんな母親でごめんね」

 国王と王妃の謝罪からメイドやらの謝罪が始まる。皆はどうアル君と接して良いかがわからず迷っていただけだったのだ。王宮の人達と元々仲が良かったのだから聖属性というだけを見るなんて無理な話だ。
 
 アル君は皆から抱き締められていて久しぶりの愛に満たされてるようだった。
 アル君がふいにこちらを振りかえる。

「ソフィア!ソフィアの言葉とっても嬉しかった!ありがとう!」


 そういった彼の顔は涙でぐしゃぐしゃで、今まででみたはにかむような笑いかたより比べ物にならないぐらいの笑顔だった。
 


 まるで太陽が笑ったみたいなそんな笑顔だった。


しおりを挟む
感想 29

あなたにおすすめの小説

村娘になった悪役令嬢

枝豆@敦騎
恋愛
父が連れてきた妹を名乗る少女に出会った時、公爵令嬢スザンナは自分の前世と妹がヒロインの乙女ゲームの存在を思い出す。 ゲームの知識を得たスザンナは自分が将来妹の殺害を企てる事や自分が父の実子でない事を知り、身分を捨て母の故郷で平民として暮らすことにした。 村娘になった少女が行き倒れを拾ったり、ヒロインに連れ戻されそうになったり、悪役として利用されそうになったりしながら最後には幸せになるお話です。 ※他サイトにも掲載しています。(他サイトに投稿したものと異なっている部分があります) アルファポリスのみ後日談投稿しております。

婚約者を奪い返そうとしたらいきなり溺愛されました

宵闇 月
恋愛
異世界に転生したらスマホゲームの悪役令嬢でした。 しかも前世の推し且つ今世の婚約者は既にヒロインに攻略された後でした。 断罪まであと一年と少し。 だったら断罪回避より今から全力で奪い返してみせますわ。 と意気込んだはいいけど あれ? 婚約者様の様子がおかしいのだけど… ※ 4/26 内容とタイトルが合ってないない気がするのでタイトル変更しました。

【二部開始】所詮脇役の悪役令嬢は華麗に舞台から去るとしましょう

蓮実 アラタ
恋愛
アルメニア国王子の婚約者だった私は学園の創立記念パーティで突然王子から婚約破棄を告げられる。 王子の隣には銀髪の綺麗な女の子、周りには取り巻き。かのイベント、断罪シーン。 味方はおらず圧倒的不利、絶体絶命。 しかしそんな場面でも私は余裕の笑みで返す。 「承知しました殿下。その話、謹んでお受け致しますわ!」 あくまで笑みを崩さずにそのまま華麗に断罪の舞台から去る私に、唖然とする王子たち。 ここは前世で私がハマっていた乙女ゲームの世界。その中で私は悪役令嬢。 だからなんだ!?婚約破棄?追放?喜んでお受け致しますとも!! 私は王妃なんていう狭苦しいだけの脇役、真っ平御免です! さっさとこんなやられ役の舞台退場して自分だけの快適な生活を送るんだ! って張り切って追放されたのに何故か前世の私の推しキャラがお供に着いてきて……!? ※本作は小説家になろうにも掲載しています 二部更新開始しました。不定期更新です

悪役令嬢に仕立て上げられたので領地に引きこもります(長編版)

下菊みこと
恋愛
ギフトを駆使して領地経営! 小説家になろう様でも投稿しています。

この度、皆さんの予想通り婚約者候補から外れることになりました。ですが、すぐに結婚することになりました。

鶯埜 餡
恋愛
 ある事件のせいでいろいろ言われながらも国王夫妻の働きかけで王太子の婚約者候補となったシャルロッテ。  しかし当の王太子ルドウィックはアリアナという男爵令嬢にべったり。噂好きな貴族たちはシャルロッテに婚約者候補から外れるのではないかと言っていたが

貴方誰ですか?〜婚約者が10年ぶりに帰ってきました〜

なーさ
恋愛
侯爵令嬢のアーニャ。だが彼女ももう23歳。結婚適齢期も過ぎた彼女だが婚約者がいた。その名も伯爵令息のナトリ。彼が16歳、アーニャが13歳のあの日。戦争に行ってから10年。戦争に行ったまま帰ってこない。毎月送ると言っていた手紙も旅立ってから送られてくることはないし相手の家からも、もう忘れていいと言われている。もう潮時だろうと婚約破棄し、各家族円満の婚約解消。そして王宮で働き出したアーニャ。一年後ナトリは英雄となり帰ってくる。しかしアーニャはナトリのことを忘れてしまっている…!

【完結】私ですか?ただの令嬢です。

凛 伊緒
恋愛
死んで転生したら、大好きな乙女ゲーの世界の悪役令嬢だった!? バッドエンドだらけの悪役令嬢。 しかし、 「悪さをしなければ、最悪な結末は回避出来るのでは!?」 そう考え、ただの令嬢として生きていくことを決意する。 運命を変えたい主人公の、バッドエンド回避の物語! ※完結済です。 ※作者がシステムに不慣れかつ創作初心者な時に書いたものなので、温かく見守っていだければ幸いです……(。_。///) ※ご感想・ご指摘につきましては、近況ボードをお読みくださいませ。 《皆様のご愛読に、心からの感謝を申し上げますm(*_ _)m》

マルフィル嬢の日々

夏千冬
恋愛
 第一王子アルバートに婚約破棄をされてから二年経ったある日、自分には前世があったのだと思い出したマルフィルは、己のわがままボディに絶句する。  それも王命により屋敷に軟禁状態。肉襦袢を着込んだ肉塊のニート令嬢だなんて絶対にいかん!  改心を決めたマルフィルは、手始めにダイエットを始めた。そして今年行われるアルバートの生誕祝賀パーティーに出席することをスタート目標に、更生計画を開始する! ※こちらはアルファポリス様、小説家になろう様で投稿させて頂きました「婚約破棄から〜2年後〜からのおめでとう」の連載版です。タイトルは仮決定です。

処理中です...