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公爵令嬢は前世の記憶を思い出す

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 私、ニナ・ライレスターは6歳のころ前世の記憶を思い出した。
 そして、自分は前世では『オタク』という人種であり、この世界が乙女ゲームの世界であるということにもその時、気づいた。

 『その時』、と言うのは私が婚約者であるレオンハルト・ザラティナ・クラウドとの初めてのお茶会した時のことである。















 当時の私はまだ前世の記憶を思い出してない、普通の令嬢だった。…が、公爵令嬢であり、王太子殿下と同い年であったため、『婚約者』という、白羽の矢がたった。
 婚約者候補として王太子とお茶会があり、王城を訪れた私はその日大いに驚いた。

 一つ目は王城の大きさ。
 公爵家も充分おおきいがそれよりも遥かに大きい王城は圧巻だった。中は汚れ一つもなくてキラキラしていたから私は目を輝かせた。

 二つ目はメイドさんと執事さん。
 どこに行っても沢山いるから迷子になんてならなかった。方向音痴でも大丈夫な場所だった。メイドさんはみんな美人で私の専属侍女のリサにコソコソ話そうと思ったらはしたないって怒られた。げせぬ。

 三つ目は王太子殿下について。

 お茶会が行われるのは王城のお庭。手入れが行き届いていて咲き乱れるお花が美しかった。お花を見ながらお庭を歩いていく。お花のいい香りがして思わず笑みが溢れる。

「(いい香りがするなぁ)」

 楽しみながらお庭を歩いているとお茶会をするためのテーブルが見えて少し早足で近づいていく。お兄様が王太子殿下について優秀だって褒めてたしどんな人なんだろう?

 予想しながらどんどん近づいていくと、テーブルに座っている人物像が明らかになっていく。

「ふぇ?」

 風になびく金髪はサラサラで水色の瞳はたれていて優しげな印象を与える人だった。ニッコリ笑っている表情は見覚えがあった。
 見たことがある人だった。この人は誰?私は『OL』?ここは『乙女ゲームの世界』?私は………『悪役令嬢』?
 意味のわからないことだらけで、キャパオーバーで私は倒れた。


 次に起きたときには自分が転生者であるとすんなり理解ができたし、王太子殿下に見覚えがあるというのにも納得がいった。

 ここは[僕が君に送る花束の色]という乙女ゲームの世界であった。スマホで出来る乙女ゲームであり、空いてる時間で出来るまさに、OLの私にとっての神ゲーだった。

 主人公、ガーベラ(名前変更はOK!)はライレスター公爵家の次女であるが、姉にいじめられていて、だけどめげずに頑張っていくガーベラに攻略対象たちが惹かれていき、最後は闇落ちした姉を処刑したり、断罪して国外追放したりしてハッピーエンドになるのだ。

 王道だけど、絵はきれいだし私の好きな声優さんの声が使われていたから何周もプレイして遊んだ。何回しても悶えられる。

 その中で私はガーベラの姉!つまり悪役令嬢ポジション。悪役令嬢、ニナは傲慢で王太子の婚約者という立場であぐらをかき、バッドエンドしかない登場キャラクター。黒髪に赤色の目と気の強そうとひと目見てわかる容姿。
 こんなところに転生したくなかった。どうせだったらもっと生存率が高いキャラに転生したかった~!だけど容姿だけは美人だから一部ドMな男プレイヤーなどには人気が出ていた。
 キツイ言葉をよく言っていたからドMプレイヤーのどこかに突き刺さったのだろう。

 そんなわけで(どんなわけで?)攻略対象は全部で5人!
 王太子と騎士団長の息子と宰相の息子と商人と隠しキャラである暗殺者。

 私は断然、王太子であり、メインヒーローである、レオ君が好き!魔力高めで少しヤミ率高めなレオ君が一番!私の推しはレオ君しか有り得ない!と言えるほどレオ君信者な私にとってはなんかこの立場は嬉しいような悲しいような立場である。

 婚約破棄は嫌だし、言われたら絶対に泣きつく自信がある。でも死ぬのは嫌だし、優しいお友達とも離れ離れになるのは嫌だ。

「うぅ~……どうしたらいいのさ、……」

 とりあえず妹とレオ君と仲良くなろう。気絶して運ばれたベットでそんなことを考えた。
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