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小学校編
結婚六カ年計画 30-10 from 2016.07
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2016年7月18日 月曜日。 12時30分。
「ありがとうございます、華燭さん。
おかげで孤児院の中が見違えるように綺麗になりました」
無事に備品の搬入が終わり、リースさんから労いの言葉を貰う。
梨杏ちゃんもにこにこと笑顔を浮かべており、満足している様だ。
これで今日の僕の仕事は終わりで、明日は有給。
午後からの業務も止められており、宿泊用に孤児院で借りた一室で私服に着替えようと服を脱ぐ。これから昼食なので搬入の際に汚れた服を着てる訳にはいかない。
シャツとスーツを脱いで折り畳み、ジーパンを履いていると突然扉が開く。
「あのう、昼食の準備が――――あっ!」
何故かツインテールに髪型を変えた梨杏ちゃんが扉を開くと、僕はほぼパンツ一枚の状態で視られる。
彼女は慌てて扉を閉じ、僕も急いでズボンを履いた。
「す、すみません! ノックもせず……」
「だ、大丈夫だよ。それより変なもの見せてごめん」
急いで着替えた後に扉を再び開く。
すると梨杏ちゃんが赤面しながら両手で顔を抑えていた。
「変なものだなんて……とても美しい身体です」
「えっ?」
「な、なんでもありませんっ」
梨杏ちゃんが小さな声で何か言った気がしたが、聞き取ることができなかった。
「え、ええと……その、昼食の準備が出来たのでお迎えに上がりました。ご案内します」
一息ついて梨杏ちゃんが落ち着き、昼食が出来た旨を伝えてくれた。
事務所の打ち合わせ室で事務員の佐野さんと、院長先生との三人で食べる予定らしい。
梨杏ちゃんの案内で打ち合わせ室に入ると既に料理が運ばれ、院長先生と佐野さんが着席していた。
きゅうりやトマトの生野菜が豪快に切られた状態でボールに入っており、大きなハンバーグや漬物の小皿、味噌汁、ごはん茶碗が並べられている。
でも、料理は四人前ある。他にも誰か来るのだろうか。
「いらっしゃいましたね。食べましょう、華燭さん」
院長先生がにこにこと笑顔を浮かべながら着席を促す。
すると僕の隣に梨杏ちゃんも腰かけた。
「梨杏ちゃんは他の子達と一緒にご飯を食べてなかったの?」
「はいっ。今日は左右さんと一緒にご飯を食べたかったのです」
悪い事をしたなぁと思いながらもこの子の気配りが嬉しい。
「有難う、梨杏ちゃんは可愛いナァ」
「あっ……ありがとう、ございます……」
僕が思ったコトを彼女に伝えると再び顔を真っ赤にして頬を両手で抑える。
そう言えば顔を合わせる度に梨杏ちゃんは赤面している気がするので、人見知りをしているか照れ屋さんなのかなと僕は思った。
「ふふっ、では折角佐野さんに作って頂いた料理が覚めてしまいますしご馳走になりましょうか」
「気にしなくても良いわよ。それじゃあ、いただきます」
「はい、頂きます」
僕達は四人で手を合わせ、昼食を食べ始めた。
どれも美味しく、あっという間に平らげてしまった。
「男の人には少し量が少なかったかしら?」
「いえ、十分お腹いっぱいになりました。美味しかったです」
食後に佐野さんが淹れてくれたコーヒーをブラックのまま喉に通す。
梨杏ちゃんだけミルクをごくごくと飲んでいる。
「それにしても華燭さんってイイ男だけど、結婚したり彼女が居たりするのかしら? おばさん気になるわぁ」
瞬間、リースさんと梨杏ちゃんが背筋を伸ばす。
どうしてかなと思いながらも僕は佐野さんに答えた。
「居れば良いんですけど……独り者です。彼女も居ませんし、井筒の実家へ帰る度に両親から早く孫を見せろと言われます」
「まぁ、勿体ない。院長先生もこんなに美人なのに独り身なのよ? どうかしら?」
「さ、佐野さんっ!」
リースさんが珍しく困惑した表情を浮かべる。そして何故か梨杏ちゃんの表情が不満そうに変化した。
僕が独身である事に特別な事情がないからいいもの、おばちゃ……年上の女性はこわい。
でも、こんな綺麗な人が独身ってコトも失礼だけど不思議に思っていた。
「す、済みません華燭さん。でも華燭さんが宜しければ私は――――」
「――左右さん、外で一緒に遊んでください!」
院長先生が何か話しかけると梨杏ちゃんが僕の腕を掴んで訴えて来た。
「わ、分かったよ。それじゃあリースさん、佐野さん、ご馳走様でした」
「はいっ、華燭さん。梨杏と遊んであげて来て下さい」
梨杏ちゃんに手を引かれて僕は外へ出る。
改めてこの子が元気になって良かったと思いながら少女と共に、僕は孤児院の子供達の輪に入り込んだ。
「ありがとうございます、華燭さん。
おかげで孤児院の中が見違えるように綺麗になりました」
無事に備品の搬入が終わり、リースさんから労いの言葉を貰う。
梨杏ちゃんもにこにこと笑顔を浮かべており、満足している様だ。
これで今日の僕の仕事は終わりで、明日は有給。
午後からの業務も止められており、宿泊用に孤児院で借りた一室で私服に着替えようと服を脱ぐ。これから昼食なので搬入の際に汚れた服を着てる訳にはいかない。
シャツとスーツを脱いで折り畳み、ジーパンを履いていると突然扉が開く。
「あのう、昼食の準備が――――あっ!」
何故かツインテールに髪型を変えた梨杏ちゃんが扉を開くと、僕はほぼパンツ一枚の状態で視られる。
彼女は慌てて扉を閉じ、僕も急いでズボンを履いた。
「す、すみません! ノックもせず……」
「だ、大丈夫だよ。それより変なもの見せてごめん」
急いで着替えた後に扉を再び開く。
すると梨杏ちゃんが赤面しながら両手で顔を抑えていた。
「変なものだなんて……とても美しい身体です」
「えっ?」
「な、なんでもありませんっ」
梨杏ちゃんが小さな声で何か言った気がしたが、聞き取ることができなかった。
「え、ええと……その、昼食の準備が出来たのでお迎えに上がりました。ご案内します」
一息ついて梨杏ちゃんが落ち着き、昼食が出来た旨を伝えてくれた。
事務所の打ち合わせ室で事務員の佐野さんと、院長先生との三人で食べる予定らしい。
梨杏ちゃんの案内で打ち合わせ室に入ると既に料理が運ばれ、院長先生と佐野さんが着席していた。
きゅうりやトマトの生野菜が豪快に切られた状態でボールに入っており、大きなハンバーグや漬物の小皿、味噌汁、ごはん茶碗が並べられている。
でも、料理は四人前ある。他にも誰か来るのだろうか。
「いらっしゃいましたね。食べましょう、華燭さん」
院長先生がにこにこと笑顔を浮かべながら着席を促す。
すると僕の隣に梨杏ちゃんも腰かけた。
「梨杏ちゃんは他の子達と一緒にご飯を食べてなかったの?」
「はいっ。今日は左右さんと一緒にご飯を食べたかったのです」
悪い事をしたなぁと思いながらもこの子の気配りが嬉しい。
「有難う、梨杏ちゃんは可愛いナァ」
「あっ……ありがとう、ございます……」
僕が思ったコトを彼女に伝えると再び顔を真っ赤にして頬を両手で抑える。
そう言えば顔を合わせる度に梨杏ちゃんは赤面している気がするので、人見知りをしているか照れ屋さんなのかなと僕は思った。
「ふふっ、では折角佐野さんに作って頂いた料理が覚めてしまいますしご馳走になりましょうか」
「気にしなくても良いわよ。それじゃあ、いただきます」
「はい、頂きます」
僕達は四人で手を合わせ、昼食を食べ始めた。
どれも美味しく、あっという間に平らげてしまった。
「男の人には少し量が少なかったかしら?」
「いえ、十分お腹いっぱいになりました。美味しかったです」
食後に佐野さんが淹れてくれたコーヒーをブラックのまま喉に通す。
梨杏ちゃんだけミルクをごくごくと飲んでいる。
「それにしても華燭さんってイイ男だけど、結婚したり彼女が居たりするのかしら? おばさん気になるわぁ」
瞬間、リースさんと梨杏ちゃんが背筋を伸ばす。
どうしてかなと思いながらも僕は佐野さんに答えた。
「居れば良いんですけど……独り者です。彼女も居ませんし、井筒の実家へ帰る度に両親から早く孫を見せろと言われます」
「まぁ、勿体ない。院長先生もこんなに美人なのに独り身なのよ? どうかしら?」
「さ、佐野さんっ!」
リースさんが珍しく困惑した表情を浮かべる。そして何故か梨杏ちゃんの表情が不満そうに変化した。
僕が独身である事に特別な事情がないからいいもの、おばちゃ……年上の女性はこわい。
でも、こんな綺麗な人が独身ってコトも失礼だけど不思議に思っていた。
「す、済みません華燭さん。でも華燭さんが宜しければ私は――――」
「――左右さん、外で一緒に遊んでください!」
院長先生が何か話しかけると梨杏ちゃんが僕の腕を掴んで訴えて来た。
「わ、分かったよ。それじゃあリースさん、佐野さん、ご馳走様でした」
「はいっ、華燭さん。梨杏と遊んであげて来て下さい」
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改めてこの子が元気になって良かったと思いながら少女と共に、僕は孤児院の子供達の輪に入り込んだ。
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