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小学校編
結婚六カ年計画 30-7 from 2016.07
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階段を登られる前に残りの従業員を後ろから締め落とす。
上へ上がると梨杏ちゃんと彼女に抱き着く小太りの変態社長、そしてあの大柄の男が目の前に見えた。
危険な状況寸前。大声を張り上げて気取らせるしかない。
目の前の光景に激しい怒りを覚えたものの彼女の前で怖がらせる様なコトを口にしたくない。
だから僕は、彼女を安心させようと叫んだ。
「助けに来たよ、梨杏ちゃん!」
変態は驚き梨杏ちゃんから離れる、成功。
怖かっただろうに。
あんな奴等に囲まれて……。
「さっ……左右さん!」
今にも泣き出しそうな表情を浮かべながら立ち上がり、僕の方へと駆け出そうとする梨杏ちゃん。
が、金城に手を掴まれて止められてしまう。
「誰だ、てめぇ! 俺ぁこの子の保護者なんだ!
……って、その前に下の奴等は何してんだよ!」
梨杏ちゃんの腕を掴みながら金城が叫ぶ。
その子に対し、叫び汚い唾をかけている事が耐えがたかった。
「煩い、その子を離せっ! ロリコン野郎ッ、豚野郎ッ!!」
「ぶっ、豚だと? おいッ、武田。やっちまえ!」
目の前で立ち塞いでいるこの男が武田と言うのか。
大男は無言で頷き、拳を構え僕に襲い掛かってきた。
――踏み込みが速い! この男も何か格闘技をやっている。
武田と呼ばれた大男はそのまま間合いを詰め、拳を向けられたかと思った次の瞬間、頬から衝撃が響いた。
「ぐっ……」
間髪入れずに第二の拳が顔面目掛けて飛んでくる。
今度は命中する寸前で避ける事が出来、そのまま大男の間合いの外に退いた。
大男も退く。
僕は殴られた際に落としたビジネスバッグを拾った。
「鉄板でも入っているのか。が、そんなもの俺の前では盾代わりにもならんぞ」
見透かしたのが余程嬉しかったのか、余裕なのかは分からないがはじめて大男が話しかける。
確かにこのビジネスバッグには鉄板が仕込まれている。
僕はビジネスバッグを足元に落とした。
「どうして、誘拐に加担するんだ?」
隙を伺いながら僕も武田に話しかける。
武田は隙にならない位の刹那、ちらりと目線で背後を一瞥。
聞こえないと確信したのか、意外にも僕に聞こえる程度の声で答えた。
「あいつは金払いが良いからな。言うコトを聞いてりゃイイ稼ぎになる」
「あんな小さな子供を誘拐したのも金の為か!」
落ち着きながらも怒気をこめて大男に言い放つ。
すると、男の頬が緩み、ニヤリと卑しい笑みを浮かべた。
「簡単なガキの使いだったぜ。ちょっと脅したら泣きそうな顔で自分から車に乗ってくれたしな」
許さん――男が話し終える前に僕は踏み込みながら拳を構え、男の顔めがけて正拳を撃ち抜いた。
が、男は巨体とは思えない程に俊敏な動きで交わし、逆に腹部に鈍い痛みが響く。拳が左脇腹にめり込んでいた。
「ぐっ……!」
ボディへのカウンターに思わず僕は膝を突いた。
今ので肋骨に多分ヒビが入ってたか……と思った瞬間、本能的に命の危険を感じる。
思わず僕は後ろに転がると、次の瞬間に頭上から拳骨をする様に思い切り殴りかかって来ていた様だった。
転がる度に脇腹から激痛が響く。
「ちっ、上手く避けたか」
「左右さん!」
梨杏ちゃんの声で我に返り、立ち上がり構える。
が、すぐ床に膝をついてしまう。
******
――ああ、なんて格好悪いんだ。
意気揚々とあの子助けに来たのに一方的にやられっ放し。
院長先生にも良い格好をして何て体たらく。
このまま倒れてしまえば楽なのではと脳が考え始めている。
程無くして渉が警察を連れて訪れるだろう。
そうすれば万事解決だ。
十分だ。
僕は十分頑張った。
なのに。
それなのに。
世界が終わる様な表情で泣く君を見て僕は、また立ち上がった。
上へ上がると梨杏ちゃんと彼女に抱き着く小太りの変態社長、そしてあの大柄の男が目の前に見えた。
危険な状況寸前。大声を張り上げて気取らせるしかない。
目の前の光景に激しい怒りを覚えたものの彼女の前で怖がらせる様なコトを口にしたくない。
だから僕は、彼女を安心させようと叫んだ。
「助けに来たよ、梨杏ちゃん!」
変態は驚き梨杏ちゃんから離れる、成功。
怖かっただろうに。
あんな奴等に囲まれて……。
「さっ……左右さん!」
今にも泣き出しそうな表情を浮かべながら立ち上がり、僕の方へと駆け出そうとする梨杏ちゃん。
が、金城に手を掴まれて止められてしまう。
「誰だ、てめぇ! 俺ぁこの子の保護者なんだ!
……って、その前に下の奴等は何してんだよ!」
梨杏ちゃんの腕を掴みながら金城が叫ぶ。
その子に対し、叫び汚い唾をかけている事が耐えがたかった。
「煩い、その子を離せっ! ロリコン野郎ッ、豚野郎ッ!!」
「ぶっ、豚だと? おいッ、武田。やっちまえ!」
目の前で立ち塞いでいるこの男が武田と言うのか。
大男は無言で頷き、拳を構え僕に襲い掛かってきた。
――踏み込みが速い! この男も何か格闘技をやっている。
武田と呼ばれた大男はそのまま間合いを詰め、拳を向けられたかと思った次の瞬間、頬から衝撃が響いた。
「ぐっ……」
間髪入れずに第二の拳が顔面目掛けて飛んでくる。
今度は命中する寸前で避ける事が出来、そのまま大男の間合いの外に退いた。
大男も退く。
僕は殴られた際に落としたビジネスバッグを拾った。
「鉄板でも入っているのか。が、そんなもの俺の前では盾代わりにもならんぞ」
見透かしたのが余程嬉しかったのか、余裕なのかは分からないがはじめて大男が話しかける。
確かにこのビジネスバッグには鉄板が仕込まれている。
僕はビジネスバッグを足元に落とした。
「どうして、誘拐に加担するんだ?」
隙を伺いながら僕も武田に話しかける。
武田は隙にならない位の刹那、ちらりと目線で背後を一瞥。
聞こえないと確信したのか、意外にも僕に聞こえる程度の声で答えた。
「あいつは金払いが良いからな。言うコトを聞いてりゃイイ稼ぎになる」
「あんな小さな子供を誘拐したのも金の為か!」
落ち着きながらも怒気をこめて大男に言い放つ。
すると、男の頬が緩み、ニヤリと卑しい笑みを浮かべた。
「簡単なガキの使いだったぜ。ちょっと脅したら泣きそうな顔で自分から車に乗ってくれたしな」
許さん――男が話し終える前に僕は踏み込みながら拳を構え、男の顔めがけて正拳を撃ち抜いた。
が、男は巨体とは思えない程に俊敏な動きで交わし、逆に腹部に鈍い痛みが響く。拳が左脇腹にめり込んでいた。
「ぐっ……!」
ボディへのカウンターに思わず僕は膝を突いた。
今ので肋骨に多分ヒビが入ってたか……と思った瞬間、本能的に命の危険を感じる。
思わず僕は後ろに転がると、次の瞬間に頭上から拳骨をする様に思い切り殴りかかって来ていた様だった。
転がる度に脇腹から激痛が響く。
「ちっ、上手く避けたか」
「左右さん!」
梨杏ちゃんの声で我に返り、立ち上がり構える。
が、すぐ床に膝をついてしまう。
******
――ああ、なんて格好悪いんだ。
意気揚々とあの子助けに来たのに一方的にやられっ放し。
院長先生にも良い格好をして何て体たらく。
このまま倒れてしまえば楽なのではと脳が考え始めている。
程無くして渉が警察を連れて訪れるだろう。
そうすれば万事解決だ。
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なのに。
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