結婚六カ年計画

魂祭 朱夏

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小学校編

結婚六カ年計画 30-4 from 2016.07

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 2016年7月7日 水曜日。 9時40分。

 
 プレハブ小屋の事務所の二階。
 連れられたのは広い部屋。天井や床、家具が皆ピンク色に統一されている。
 誰が用意したのか、クマとうさぎの大きなぬいぐるみがウェルカムと書いたカードを持って並んでいる。
 あの人が私の為に準備をしたと言うのだろうか。
 
 これも、一瞬の愛なのだろうか。
 ……否。
 おばあちゃんが教えてくれた愛とは違い、一方的で倒錯した自己満足に過ぎない。
 少なくても私が受けたおばあちゃんからの愛は、とても嬉しく尊いものであり、いつか誰かに与えられる様になりたいと思っていた。

 
 そんな中で偶然にも再会を果たしたあの人。
 最後に名前が聞けただけでも良かったなと思う。

 かしょく、さすけさん。なんて素敵な名前だろう。

「あの時」私達を助けてくれた人は再会した際も、飛んだ麦わら帽子を被せてくれて、私は大きな幸せを感じ自然と笑顔を浮かべられた。
 左右さんはあの時と変わらず優しく、とても嬉しかった。


 きっと、この感情こそが愛なのだ。

 
 ******


 営業車に乗り込み、先ずは電話だ。

 はじめに有坂部長に金城組へ飛び込み営業を行うと伝える。
 孤児院から「仕事の情報」があったと言うコトにした。
 これで、僕の身に何かあったら真っ先に金城組が疑われる。

 そして渉にも電話をかける。
 他の誰かと話していたのか、普段は電話なんて後から自分のペースで掛けてくるのに今日はすぐに出た。
「どうした、左右。何かあったか?」
「お前が心配していた通り、金城組が孤児院の立ち退きと引き換えに孤児の子を養子にすると言って連れて行ったらしい。今から会社の事務所へ行く」
 待て待て、と渉が電話先で慌てる。
 一人で乗り込んでどうすつもりなんだと渉は訪ねてきた。

「全員ぶっ倒して孤児の子を助ける。会社には孤児院の紹介で飛び込み営業へ行くと伝えた。
 まあ最初は事務用品の見積もりをさせてくれって言いながら会社を物色し、上手く行けばそのまま探したいがそうはならないだろうな。相手から先に手を出させる。だから渉、助けてに来てくれよ」
「……ったく、無茶な等だぜ。
 じゃあ俺は孤児院からの通報を受けて、金城組へ行く。
 お前は偶然営業へ行ったら適当に奴等をイラつかせて正当防衛の範囲で懲らしめろ。保護は俺達警察に任せろ」
「分かった、じゃあその方向で。10時頃には金城組の事務所に入るから早く来てくれよ」
「あいよ」

 
 渉との通話を切り、金城組の事務所へ向かう。ココから10分位の距離。
 これから僕は先日初めて会ったばかりの、ろくに会話をしたコトもない少女を命がけで助ける。
 正直狂っているとも言える。

 
 でも、それでも。
 僕の胸の鼓動は確かに高鳴っていた。


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