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小学校編
結婚六カ年計画 27-2
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2017年9月10日 日曜日。 11時15分。
「梨杏。ココの角度はどうやって解くんだー?」
「ココはね。えっとぉ――――」
「――――ココはね。星のそれぞれの角度は、全部足せば三角形の内角の和と同じで180度になるんだ。
だからね、180引く40引く……残りは25度だね」
再び、左右さんが悠翔君の質問に答える。
「あ、ありがとう梨杏のお父さん」
「ん、どういたしまして」
「梨杏ちゃんのお父さんは教え方も上手だね!」
「うん、そうだね……」
左右さんの爽やかな笑顔に騙されそうだが、今の所悠翔君から私への質問を全部遮っている。
悠翔君も何故か私に聞きたい様で、なんだかやきもきしている雰囲気だ。
一見、仲良さそうにしているふたりの背後には二匹の猛々しい猫の幻想が見えた。
「梨杏ちゃん。ココの角度の出し方は……?」
「あっ、それはね――――」
夕花ちゃんの質問に対応する。同時に、左右さんが立ち上がった。
「梨杏ちゃん。お昼ご飯作ってくるね」
「わかりました。お手伝い致します」
私も立ち上がろうとすると左右さんが首を振る。
「大丈夫だよ、梨杏ちゃん。友達とゆっくりしていてね」
「承知しました」
左右さんが台所へ消えると、夕花ちゃんと悠翔君がぽかんとした表情を浮かべていた。
「ふたりとも、どうしたの?」
思わず私は二人に聞く。
「えっと、梨杏ちゃんってお父さんに敬語で話すんだって思って」
「うん。パパは血が繋がっていない私を預かってくれる、私が尊敬する人だから」
何処がおかしいのだろう?
敬う目上の人に敬語を使うのコトは当然なのに。
でも不思議そうな表情を浮かべる二人。
あのさ、と前置きをして悠翔君が話す。
「多分、お父さんは梨杏にけーごを使わないでほしいと思うぞ」
そんな筈は、と思ったが夕花ちゃんも頷いている。
内心、愕然とした。
ショックを受けながらも私は二人にそれが何故か尋ねる。
すると、夕花ちゃんが教えてくれた。
「本当の家族なら敬語なんか使わないよ。血が繋がっていなくても梨杏ちゃんとお父さんは家族なんだから」
「でも、それは本当の父親ではないパパに対して失礼なんじゃ……」
「失礼じゃないぞ! いーや、失礼でもいいんだよ!
俺なんてとーちゃんやかーちゃんにたくさん迷惑かけてるし怒られてるけど、いつも最後は仲直りしてるんだ!」
「…………」
目から鱗である。
居候である私は左右さんに迷惑をかけてはいけない。困らせてはいけない。
そう思ってずっと暮らしてきた。
まさか二人に怒られるだなんて思ってもなかった。
でも、直感的に二人の言うコトが正しい気がする。
「……パパ、友達みたいに話したら驚くかな?」
「かもね、でもすぐ慣れるよ」
二人は花の様にかわいい笑顔を咲かせた。
間違っているコトを正しく教えてくれた夕花ちゃんと悠翔君。
ただ同意してくれるだけではなく真剣に私のコトを考えてくれた大切な人だ。
******
「ええと、パスタが出来たよ」
台所から良いにおいが漂ってくる。多分醤油ベースの和風パスタ。
夕花ちゃんと悠翔君が私を見る。
私は覚悟を決め、元気よく伝えた。
「私も手伝うわ、パパ!」
えっ、と驚いた表情を浮かべる左右さん。
でも次の瞬間、まるで嬉しさが溢れた表情に変わり、私の頭を撫でてくれた。
「うん、お願いするよ」
結婚するまでに先ずは、誰が見ても幸せな「親子」になろうと思った瞬間だった。
☆新規計画達成項目
・2017年9月10日 左右さんに敬語を使わないで話すコトが出来た。
親友が二人も同時にできた。
「梨杏。ココの角度はどうやって解くんだー?」
「ココはね。えっとぉ――――」
「――――ココはね。星のそれぞれの角度は、全部足せば三角形の内角の和と同じで180度になるんだ。
だからね、180引く40引く……残りは25度だね」
再び、左右さんが悠翔君の質問に答える。
「あ、ありがとう梨杏のお父さん」
「ん、どういたしまして」
「梨杏ちゃんのお父さんは教え方も上手だね!」
「うん、そうだね……」
左右さんの爽やかな笑顔に騙されそうだが、今の所悠翔君から私への質問を全部遮っている。
悠翔君も何故か私に聞きたい様で、なんだかやきもきしている雰囲気だ。
一見、仲良さそうにしているふたりの背後には二匹の猛々しい猫の幻想が見えた。
「梨杏ちゃん。ココの角度の出し方は……?」
「あっ、それはね――――」
夕花ちゃんの質問に対応する。同時に、左右さんが立ち上がった。
「梨杏ちゃん。お昼ご飯作ってくるね」
「わかりました。お手伝い致します」
私も立ち上がろうとすると左右さんが首を振る。
「大丈夫だよ、梨杏ちゃん。友達とゆっくりしていてね」
「承知しました」
左右さんが台所へ消えると、夕花ちゃんと悠翔君がぽかんとした表情を浮かべていた。
「ふたりとも、どうしたの?」
思わず私は二人に聞く。
「えっと、梨杏ちゃんってお父さんに敬語で話すんだって思って」
「うん。パパは血が繋がっていない私を預かってくれる、私が尊敬する人だから」
何処がおかしいのだろう?
敬う目上の人に敬語を使うのコトは当然なのに。
でも不思議そうな表情を浮かべる二人。
あのさ、と前置きをして悠翔君が話す。
「多分、お父さんは梨杏にけーごを使わないでほしいと思うぞ」
そんな筈は、と思ったが夕花ちゃんも頷いている。
内心、愕然とした。
ショックを受けながらも私は二人にそれが何故か尋ねる。
すると、夕花ちゃんが教えてくれた。
「本当の家族なら敬語なんか使わないよ。血が繋がっていなくても梨杏ちゃんとお父さんは家族なんだから」
「でも、それは本当の父親ではないパパに対して失礼なんじゃ……」
「失礼じゃないぞ! いーや、失礼でもいいんだよ!
俺なんてとーちゃんやかーちゃんにたくさん迷惑かけてるし怒られてるけど、いつも最後は仲直りしてるんだ!」
「…………」
目から鱗である。
居候である私は左右さんに迷惑をかけてはいけない。困らせてはいけない。
そう思ってずっと暮らしてきた。
まさか二人に怒られるだなんて思ってもなかった。
でも、直感的に二人の言うコトが正しい気がする。
「……パパ、友達みたいに話したら驚くかな?」
「かもね、でもすぐ慣れるよ」
二人は花の様にかわいい笑顔を咲かせた。
間違っているコトを正しく教えてくれた夕花ちゃんと悠翔君。
ただ同意してくれるだけではなく真剣に私のコトを考えてくれた大切な人だ。
******
「ええと、パスタが出来たよ」
台所から良いにおいが漂ってくる。多分醤油ベースの和風パスタ。
夕花ちゃんと悠翔君が私を見る。
私は覚悟を決め、元気よく伝えた。
「私も手伝うわ、パパ!」
えっ、と驚いた表情を浮かべる左右さん。
でも次の瞬間、まるで嬉しさが溢れた表情に変わり、私の頭を撫でてくれた。
「うん、お願いするよ」
結婚するまでに先ずは、誰が見ても幸せな「親子」になろうと思った瞬間だった。
☆新規計画達成項目
・2017年9月10日 左右さんに敬語を使わないで話すコトが出来た。
親友が二人も同時にできた。
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