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小学校編
結婚六カ年計画 20-3
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2017年8月5日 土曜日。19時10分。
裏口の鍵を開けて、手は繋いだまま左右さんとエレベーターに乗る。
R……屋上行きのボタンを押し、ドアが閉じると下から押し上げられる様な力を感じた。ちなみにこのビルのは24階まである。
エレベーターから出て、外へ繋がる鉄製の扉を左右さんが開くと――。
「わぁっ」
思わず感嘆の声を上げる。
目の前に、きらきらと輝く紺色の星空が飛び込んできた。
成程、確かに良い花火スポットである。
打ち上げ会場まで全く遮蔽物が無く、ココならよく見える。
既に複数の家族連れが陣を取り持ち込んだお酒や料理を飲んで騒いでいた。
「まさかパパの会社の屋上とは……とても良い眺めですね」
「ちゃんと僕達が座る場所も準備してあるんだ。ほら、あそこに」
左右さんが指差した先には幅5m程のブルーシートが敷かれており、その上に毛布が敷かれ、更にそこには座布団が2枚重ねて置かれていた。
ブルーシートには「華燭」と書かれた紙が貼られていた。
「さあ、どうぞ」
左右さんが座布団の上に座る様に勧め、彼はブルーシートの上に座る。
私は慌てた。
「ざ、座布団が2枚あるのでパパも使ってください!」
「僕は大丈夫。それより、梨杏ちゃんにくつろいで欲しいから辛くなければそのまま座って欲しいかな」
「で、でも……」
私は左右さんに対し申し訳ない気持ちで一杯になる。
考えが伝わったのか、彼は笑顔を浮かべ髪飾りを避けながら私の頭を撫でた。思わず赤面してしまう。
自分から行うのは良いのだけれど、左右さんからの不意のスキンシップはいつまで経っても慣れない。この上なく嬉しいけど。
「お願いだよ、梨杏ちゃん。君の為に何でもしてあげたいんだ」
また思わず頬が緩みそうになる台詞で頭が沸騰しそうになる。
大好きな人にここまで言われてしまったら言う通りにするしかない。私は小さく頷き、大人しく座布団の上で正座した。
ふかふかで足元が柔らかい。
19時28分。
間もなく花火が上がる。
私達と同様に屋上で待つ、社員やその家族達はいつの間にか静まり返っている。
私は平気なのだが左右さんが少し暑そうで襟元をぱたぱたしていてご褒美が絶えないため、持っていたうちわで扇ぐととても嬉しそうに微笑んでくれた。
もはや今日は花火を観なくても満足かもしれない。
そして、19時30分。
濃いコバルト色の空で、色とりどりの花火が音と共に咲き始める。
一斉に拍手と歓声が上がった。
「わぁ、綺麗……」
踊る様に打ち上げられた光は弾け、消え、そしてまた弾けと様々なパターンに変化して開花を繰り返す。
特有の破裂音が耳に響き、より演出を濃密にしていた。
思わず私は見惚れてしまっていた。
「梨杏ちゃん、綺麗だね」
突然飛び込む左右さんの言葉にどきりとする私。
綺麗と言ったのは花火のコトなのに思わず驚いてしまったが、悟られないように返事する。
「はいっ。とても……今日は有難う御座いました、パパ。一生の思い出です」
「来年も、一緒に来ましょうね」
「うん、来年もここで観ようか」
花火が終わり、明日から七夕祭り本番だ。
☆新規計画達成項目
・2017年8月5日 左右さんと七夕祭り前夜祭の花火を観た。
裏口の鍵を開けて、手は繋いだまま左右さんとエレベーターに乗る。
R……屋上行きのボタンを押し、ドアが閉じると下から押し上げられる様な力を感じた。ちなみにこのビルのは24階まである。
エレベーターから出て、外へ繋がる鉄製の扉を左右さんが開くと――。
「わぁっ」
思わず感嘆の声を上げる。
目の前に、きらきらと輝く紺色の星空が飛び込んできた。
成程、確かに良い花火スポットである。
打ち上げ会場まで全く遮蔽物が無く、ココならよく見える。
既に複数の家族連れが陣を取り持ち込んだお酒や料理を飲んで騒いでいた。
「まさかパパの会社の屋上とは……とても良い眺めですね」
「ちゃんと僕達が座る場所も準備してあるんだ。ほら、あそこに」
左右さんが指差した先には幅5m程のブルーシートが敷かれており、その上に毛布が敷かれ、更にそこには座布団が2枚重ねて置かれていた。
ブルーシートには「華燭」と書かれた紙が貼られていた。
「さあ、どうぞ」
左右さんが座布団の上に座る様に勧め、彼はブルーシートの上に座る。
私は慌てた。
「ざ、座布団が2枚あるのでパパも使ってください!」
「僕は大丈夫。それより、梨杏ちゃんにくつろいで欲しいから辛くなければそのまま座って欲しいかな」
「で、でも……」
私は左右さんに対し申し訳ない気持ちで一杯になる。
考えが伝わったのか、彼は笑顔を浮かべ髪飾りを避けながら私の頭を撫でた。思わず赤面してしまう。
自分から行うのは良いのだけれど、左右さんからの不意のスキンシップはいつまで経っても慣れない。この上なく嬉しいけど。
「お願いだよ、梨杏ちゃん。君の為に何でもしてあげたいんだ」
また思わず頬が緩みそうになる台詞で頭が沸騰しそうになる。
大好きな人にここまで言われてしまったら言う通りにするしかない。私は小さく頷き、大人しく座布団の上で正座した。
ふかふかで足元が柔らかい。
19時28分。
間もなく花火が上がる。
私達と同様に屋上で待つ、社員やその家族達はいつの間にか静まり返っている。
私は平気なのだが左右さんが少し暑そうで襟元をぱたぱたしていてご褒美が絶えないため、持っていたうちわで扇ぐととても嬉しそうに微笑んでくれた。
もはや今日は花火を観なくても満足かもしれない。
そして、19時30分。
濃いコバルト色の空で、色とりどりの花火が音と共に咲き始める。
一斉に拍手と歓声が上がった。
「わぁ、綺麗……」
踊る様に打ち上げられた光は弾け、消え、そしてまた弾けと様々なパターンに変化して開花を繰り返す。
特有の破裂音が耳に響き、より演出を濃密にしていた。
思わず私は見惚れてしまっていた。
「梨杏ちゃん、綺麗だね」
突然飛び込む左右さんの言葉にどきりとする私。
綺麗と言ったのは花火のコトなのに思わず驚いてしまったが、悟られないように返事する。
「はいっ。とても……今日は有難う御座いました、パパ。一生の思い出です」
「来年も、一緒に来ましょうね」
「うん、来年もここで観ようか」
花火が終わり、明日から七夕祭り本番だ。
☆新規計画達成項目
・2017年8月5日 左右さんと七夕祭り前夜祭の花火を観た。
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