結婚六カ年計画

魂祭 朱夏

文字の大きさ
上 下
31 / 60
小学校編

結婚六カ年計画 20

しおりを挟む
 2017年8月5日 土曜日。16時00分。


 伊達締めを巻いて着付け完了。
 おばあちゃんから浴衣や着物の着付けは教えて貰っており、孤児院で暮らし始めてからも何度も着ていたので慣れている。
 部屋を出ると紺色の甚平に着替えた左右さんがソファに座って私を待っていた。
 スタイルが良いのでやはり何を着ても目の毒だ。

「凄く似合ってるよ。それに一人で着付けも出来るなんて凄いや」
「おばあちゃんに教えてもらったので……ふふっ、ありがとうございます。パパも素敵です」

 左右さんの不意打ちについ顔が綻びそうになるが我慢。
 初めはスタジオで着付けを頼もうかと左右さんに提案されたけど、一番初めに見て欲しいので自分で着るコトにした。
 白地に紫色の朝顔模様が散りばめられた柄のこの浴衣は、去年院長先生がプレゼントしてくれたものだ。

 
 七夕祭りの前夜祭で行われる打ち上げ花火は19時半から20時半の1時間。
 100万人都市ではあるが、この一夜だけで例年50万人も美田園市中心部に人が集まる。
 約16000発の花火が夜空を彩り、日本三大花火大会に匹敵する数である。
 市民なので情報事態は把握しているものの実は参加は初めてである。
 豆知識として最大4号花火を使用しており、打ち上げ高さは凡そ160m程。
 実はマンションからも十分眺められる。

「パパ、花火の観光スポットは大方調べました。私に総てお任せを――」
 勿論、事前調査は完璧である。
 今日を最高の日にするため。
 でも、左右さんも考えてくれていたらしい。
「ありがとう、梨杏ちゃん。でも花火の時は僕も良い穴場を知ってるからそこに連れて行くよ」
 自信ありげに語る左右さん。
 調べても出てこない穴場なのだろうか。
「期待しててよ、良い場所知ってるんだ」
 そう言われてしまったら私は頷くしかなかった。期待するしかない。


 家から街へ出る。
 これから露店などを回りながら軽く屋台食をつまみ、7時頃に左右さんが言う花火スポットへ行く積もりである。
 
 それにしても、人が多い。
 引っ越してきた時も人の多さに驚いたが今日は過去最高の人口密度である。
 5月に行われていた新緑祭りの時も多かったが、それ以上である。
 でも、この状況に感謝する事となる。

「梨杏ちゃん、はぐれない様に手を繋ごう」
 左右さんが大きな手で私の手を握る。
 不意打ちに、私は懸命に嬉しさが表情に出ない様堪えた。
「はいっ、パパとはぐれない様にしっかりと繋ぎます」
 黄昏を前に気分が高揚する。
 さあ、初めてのお祭りデートだ。

 
 ☆新規計画達成項目
 ・2017年8月5日 初めての七夕祭り。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

最愛の彼

詩織
恋愛
部長の愛人がバレてた。 彼の言うとおりに従ってるうちに私の中で気持ちが揺れ動く

秘事

詩織
恋愛
妻が何か隠し事をしている感じがし、調べるようになった。 そしてその結果は...

今日の授業は保健体育

にのみや朱乃
恋愛
(性的描写あり) 僕は家庭教師として、高校三年生のユキの家に行った。 その日はちょうどユキ以外には誰もいなかった。 ユキは勉強したくない、科目を変えようと言う。ユキが提案した科目とは。

淫らに、咲き乱れる

あるまん
恋愛
軽蔑してた、筈なのに。

パパのお嫁さん

詩織
恋愛
幼い時に両親は離婚し、新しいお父さんは私の13歳上。 決して嫌いではないが、父として思えなくって。

極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~

恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」 そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。 私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。 葵は私のことを本当はどう思ってるの? 私は葵のことをどう思ってるの? 意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。 こうなったら確かめなくちゃ! 葵の気持ちも、自分の気持ちも! だけど甘い誘惑が多すぎて―― ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。

処理中です...