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小学校編
結婚六カ年計画 18
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2017年7月23日 日曜日。6時55分。
「また、雨かぁ……」
朝食の支度が終わり、外を眺めると今日も雨。
もう8月になりそうなのに気温もやや肌寒さすら感じる程だ。
例年だとそろそろ梅雨明けの時期だが今年はまだ明かない。
後の話になるのだが、結局今年は陸宮地方南部の梅雨明け発表が行われなかった。
普段7時前に起きる左右さんはまだ起きない。
7時を超える場合は起こして欲しいと言われてるけど、今まで一度もその状況に遭遇していない。
(あっ……!)
思わず、口元が緩む。
起こすコトを口実に左右さんの寝顔を拝むのだ。
思えばご両親の実家に泊まった時も私から最初に寝てしまったし、見たコトが無かったからである。
(寝室に入っちゃって良いのかな。ご拝顔させて頂いても構わないのかな。構わないよね)
ノックをせずにゆっくりと左右さんの寝室に入る。
するとベッドの上で手前に寝返り、すうすうと小さな寝息を立てているタンクトップ姿の左右さんの穏やかな表情を確認できた。
長い睫毛を伏せ、年齢を感じさせない綺麗な顔はまるで眠っている白雪姫の様である。
写真撮りたい! でも、シャッター音が鳴る。
いや、一度部屋の外に戻ってビデオ撮影のモードにして後でキャプチャして――――。
「ん、んん……」
「えっ?」
寝惚けている左右さんに腕を両手でしがみつく様に掴まれてしまう。
痛い訳ではないが、結構しっかり握られており引っ張っても抜け出せなさそうだ。
どうしようかなと少し考えた結果、そのまま左右さんのに寄り添う様に横になるコトにした。
役得である。
******
「……………」
腕はまだホールドされており、私はぴたっと左右さんに正面からくっついて彼の寝顔を観察している。
最初は運が良いと思い、幸せを感じていたのだけれどもすぐに緊張してきてしまい、胸の鼓動が高まってきた。
それにしても男の人の身体ってどうしてこんなに硬いのだろう。
左右さんに全身を預けたのは去年に次いで二度目だ。
「んん……梨杏ちゃん……」
「!!!!」
起きたのかと思ったら寝言だった。
眠りながらも私の名前を呼んでくれるなんて娘冥利に尽きる。
しかし流石にこれ以上は心臓が持たず、いつの間にか左右さんの片腕が私の背中に回っており、抱き枕の様にされていてもうダメである。
一方でこの時間がずっと続けば良いのにと思いながらも私は、左右さんに呼び掛けた。
「パパ、朝ごはん覚めてしまいますよー?」
厚い胸板をトントンと手のひらで軽く叩く。やはり役得だ。
「…………んっ?」
左右さんの目がゆっくりと開き、目が合う。とても幸せだけど恥ずかしい。
「…………。んんっ?!」
どうやら寝惚けて私を抱いているコトに気付いた様で、彼の表情は次第に驚愕を隠せなくなっていた。
「り、梨杏ちゃん! ど、どうして?!」
「ふふっ、パパを起こしに来たら捕まっちゃいました」
私もずっと動揺しているがそれを見せず、ポーカーフェイスを装い左右さんへ伝える。
胸も密着している為に、鼓動が伝わっていないか心配だ。
「ご、ごめん! 僕はなんてコトを……今離れるから!」
「だ、大丈夫です! それに今日、少し寒いのでもう少しこのままで……パパの身体は暖かいです」
「そ、そっかぁ。でも臭いから……」
「私、パパの匂い好きですよ? とても安心します」
「…………」
左右さんは一度口を噤む。直後、ふぅ、と一息。
「ありがとう、梨杏ちゃん。折角作ってくれたご飯が覚めちゃうから食べようか」
深呼吸で落ち着いた左右さんは、私を抱えたまま上体を起こした。
私はそのまま左右さんの膝の上に載せられてしまい今朝はずっとご褒美が過剰だったが再び緊張する。
思わず恥ずかしさに耐えきれず彼の胸に顔を当てた。
「君が来てから僕は、すっかり梨杏ちゃんに甘えてるなぁ。
助けるつもりが、ずっと助けられてる。本当にいつも有難う」
見えない故に不意に髪を撫でられ、顔に熱がこもる。
もはや幸せ過ぎて理性を失う寸前だが、私は失言を漏らさない様懸命に声を絞り出した。
「わ、私もパパと一緒に住めて幸せです。
これからもずっと一緒に居て下さいっ」
「うん、末永く宜しくね」
最早朝食なんて食べられない程お腹いっぱいになっている私だった。
☆新規計画達成項目
・2017年7月23日 左右さんの寝顔を初めて見た。
「また、雨かぁ……」
朝食の支度が終わり、外を眺めると今日も雨。
もう8月になりそうなのに気温もやや肌寒さすら感じる程だ。
例年だとそろそろ梅雨明けの時期だが今年はまだ明かない。
後の話になるのだが、結局今年は陸宮地方南部の梅雨明け発表が行われなかった。
普段7時前に起きる左右さんはまだ起きない。
7時を超える場合は起こして欲しいと言われてるけど、今まで一度もその状況に遭遇していない。
(あっ……!)
思わず、口元が緩む。
起こすコトを口実に左右さんの寝顔を拝むのだ。
思えばご両親の実家に泊まった時も私から最初に寝てしまったし、見たコトが無かったからである。
(寝室に入っちゃって良いのかな。ご拝顔させて頂いても構わないのかな。構わないよね)
ノックをせずにゆっくりと左右さんの寝室に入る。
するとベッドの上で手前に寝返り、すうすうと小さな寝息を立てているタンクトップ姿の左右さんの穏やかな表情を確認できた。
長い睫毛を伏せ、年齢を感じさせない綺麗な顔はまるで眠っている白雪姫の様である。
写真撮りたい! でも、シャッター音が鳴る。
いや、一度部屋の外に戻ってビデオ撮影のモードにして後でキャプチャして――――。
「ん、んん……」
「えっ?」
寝惚けている左右さんに腕を両手でしがみつく様に掴まれてしまう。
痛い訳ではないが、結構しっかり握られており引っ張っても抜け出せなさそうだ。
どうしようかなと少し考えた結果、そのまま左右さんのに寄り添う様に横になるコトにした。
役得である。
******
「……………」
腕はまだホールドされており、私はぴたっと左右さんに正面からくっついて彼の寝顔を観察している。
最初は運が良いと思い、幸せを感じていたのだけれどもすぐに緊張してきてしまい、胸の鼓動が高まってきた。
それにしても男の人の身体ってどうしてこんなに硬いのだろう。
左右さんに全身を預けたのは去年に次いで二度目だ。
「んん……梨杏ちゃん……」
「!!!!」
起きたのかと思ったら寝言だった。
眠りながらも私の名前を呼んでくれるなんて娘冥利に尽きる。
しかし流石にこれ以上は心臓が持たず、いつの間にか左右さんの片腕が私の背中に回っており、抱き枕の様にされていてもうダメである。
一方でこの時間がずっと続けば良いのにと思いながらも私は、左右さんに呼び掛けた。
「パパ、朝ごはん覚めてしまいますよー?」
厚い胸板をトントンと手のひらで軽く叩く。やはり役得だ。
「…………んっ?」
左右さんの目がゆっくりと開き、目が合う。とても幸せだけど恥ずかしい。
「…………。んんっ?!」
どうやら寝惚けて私を抱いているコトに気付いた様で、彼の表情は次第に驚愕を隠せなくなっていた。
「り、梨杏ちゃん! ど、どうして?!」
「ふふっ、パパを起こしに来たら捕まっちゃいました」
私もずっと動揺しているがそれを見せず、ポーカーフェイスを装い左右さんへ伝える。
胸も密着している為に、鼓動が伝わっていないか心配だ。
「ご、ごめん! 僕はなんてコトを……今離れるから!」
「だ、大丈夫です! それに今日、少し寒いのでもう少しこのままで……パパの身体は暖かいです」
「そ、そっかぁ。でも臭いから……」
「私、パパの匂い好きですよ? とても安心します」
「…………」
左右さんは一度口を噤む。直後、ふぅ、と一息。
「ありがとう、梨杏ちゃん。折角作ってくれたご飯が覚めちゃうから食べようか」
深呼吸で落ち着いた左右さんは、私を抱えたまま上体を起こした。
私はそのまま左右さんの膝の上に載せられてしまい今朝はずっとご褒美が過剰だったが再び緊張する。
思わず恥ずかしさに耐えきれず彼の胸に顔を当てた。
「君が来てから僕は、すっかり梨杏ちゃんに甘えてるなぁ。
助けるつもりが、ずっと助けられてる。本当にいつも有難う」
見えない故に不意に髪を撫でられ、顔に熱がこもる。
もはや幸せ過ぎて理性を失う寸前だが、私は失言を漏らさない様懸命に声を絞り出した。
「わ、私もパパと一緒に住めて幸せです。
これからもずっと一緒に居て下さいっ」
「うん、末永く宜しくね」
最早朝食なんて食べられない程お腹いっぱいになっている私だった。
☆新規計画達成項目
・2017年7月23日 左右さんの寝顔を初めて見た。
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