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小学校編
結婚六カ年計画 9
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2017年5月15日 月曜日。午後4時頃。
私は家に帰ると、学校へ持ち込みが禁止の為にテーブルの上に置いていたMyPhoneを開き、メールを確認する。
今日、あのメールが届いている筈だからだ。
メールアプリを開く。
あった。
不安が一杯だけど件名を指でタッチする。
******
件名:選考結果のご案内
本文:華燭梨杏様
相談社moom編集部採用担当者 榊です。
4月22日の本誌モデル陸宮部門最終選考会にお越し頂き誠に有難う御座いました。
早速本題に移りますが、厳正なる選考の結果、
華燭様を本誌モデルとして採用する事が決定しましたのでご連絡させて頂きます。
つきましては契約の日程含む、今後の予定について下記に――――。
******
ふぅ、と大きく一息吐く。
実はゴールデンウィーク中もずっと気が気でなかった。
moomの現役モデルや卒業して現在活躍中の女優さんやモデルを研究し、
書面審査から合格するための努力はしたけれど、結果ばかりは時の運なのだ。
会えなかったが同じ日に最終審査を受けた子には申し訳ないけれど、今回は私が選ばれた。
嬉しさのあまり私はすぐ、仕事中の左右さんに電話をする。
「梨杏ちゃん、もう家に帰ったんだね。どうしたの?」
「パパ、moomのオーディション、合格しました!」
「ええっ?! おめでとう、凄い!」
左右さんは驚いた後、大きな声で労いの言葉が届く。
電話越しに周りがざわついている様子が伝わってきた。
もしかして既に会社の人達に私のコトを話しているのかも知れない。
「り、梨杏ちゃん、ごめん。申し訳ないんだけどすぐRINEで僕からかけ直すから、一度電話を切って貰っても良いかな。
少しだけ待っててね」
「…………? 分かりました」
言うと通話が途切れた。何だろう?
******
「……すみません、お騒がせして」
「構わんさ。じゃ、約束通り紹介して貰おうか」
僕が急に大声を出してしまったから周囲がざわつき始めた。
隣の席の有坂部長が何事かと僕に問いかける。
僕が事情を伝えると第二課や隣の第一課の同僚にまで聞こえた様で僕の周りに集まってきた。
「ほ、本当にお騒がせしてすみません。部長……」
「良いから早く娘さんとリモートで繋いでくださいよ、課長!」
うぅ……。
騒動の責任を取る形で僕は、パソコンを打ち合わせ用テーブルに運ぶ。
供えられているスクリーンに繋ぎ、RINEで梨杏ちゃんとリモートチャットをする事になった。
後で巻き込んでゴメンと謝らないといけない。
でも、一方であの子の偉業を皆に分かち合えるコトが誇らしくもあった。
******
着信。
RINEである。
しかもライブトークだ。
もしかしてオフィスの左右さんが見れるのかな、と思い私はテーブルにスマホを立たせて受信する。
私は驚いた。
「パパ。あれっ、隣の方は?」
「ごめんね……パパの同僚達が梨杏ちゃんを見たいってうるさくて」
スマホには、スーツを着るいつも通りのかっこいいパパと隣に少し怖そうな年上のおじさんが映っている。
上司かなと思っていると、その人が語り掛けていた。
「やぁ、梨杏ちゃん。初めまして。
私はパパと同じ会社で働いている有坂部長だよ」
部長。
やっぱりパパの上司である。
とても身体が大きく、道場の広瀬さんみたい。
でもこの人からも、どこか優しさを感じる。
私は挨拶した。
「部長さん初めまして。華燭梨杏です。
パパがいつもお世話になってます」
「ほう、パパから聞いてた通りしっかりしている子だね。
ずっと年上だがうちの娘達よりも良い」
隣で左右さんがつい笑っている。かわいい。
マイク越しに小さくだが左右さんの同僚の人達の声が聞こえてくる。
私に好感を持てる評価が聞こえてきているのでホッとする。
左右さんは会社でも人気者なんだと改めて思うと、急に横から若い男の人が現れた。
「わぁー、本当に芸能人みたいっすね! 大きな目がぱっちりして可愛いや。
梨杏ちゃん、初めまして! 僕の名前は――」
「お前はカメラに入るな!」
突然現れた男の人は、左右さんに押し戻されていった。
初めて左右さんが誰かに厳しくする姿がお目に書かかれて感無量である。
☆新規計画達成項目
・2017年5月15日 ファッション誌モデルのオーディションに合格。
左右さんの勤め先の人と沢山話した。
私は家に帰ると、学校へ持ち込みが禁止の為にテーブルの上に置いていたMyPhoneを開き、メールを確認する。
今日、あのメールが届いている筈だからだ。
メールアプリを開く。
あった。
不安が一杯だけど件名を指でタッチする。
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件名:選考結果のご案内
本文:華燭梨杏様
相談社moom編集部採用担当者 榊です。
4月22日の本誌モデル陸宮部門最終選考会にお越し頂き誠に有難う御座いました。
早速本題に移りますが、厳正なる選考の結果、
華燭様を本誌モデルとして採用する事が決定しましたのでご連絡させて頂きます。
つきましては契約の日程含む、今後の予定について下記に――――。
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ふぅ、と大きく一息吐く。
実はゴールデンウィーク中もずっと気が気でなかった。
moomの現役モデルや卒業して現在活躍中の女優さんやモデルを研究し、
書面審査から合格するための努力はしたけれど、結果ばかりは時の運なのだ。
会えなかったが同じ日に最終審査を受けた子には申し訳ないけれど、今回は私が選ばれた。
嬉しさのあまり私はすぐ、仕事中の左右さんに電話をする。
「梨杏ちゃん、もう家に帰ったんだね。どうしたの?」
「パパ、moomのオーディション、合格しました!」
「ええっ?! おめでとう、凄い!」
左右さんは驚いた後、大きな声で労いの言葉が届く。
電話越しに周りがざわついている様子が伝わってきた。
もしかして既に会社の人達に私のコトを話しているのかも知れない。
「り、梨杏ちゃん、ごめん。申し訳ないんだけどすぐRINEで僕からかけ直すから、一度電話を切って貰っても良いかな。
少しだけ待っててね」
「…………? 分かりました」
言うと通話が途切れた。何だろう?
******
「……すみません、お騒がせして」
「構わんさ。じゃ、約束通り紹介して貰おうか」
僕が急に大声を出してしまったから周囲がざわつき始めた。
隣の席の有坂部長が何事かと僕に問いかける。
僕が事情を伝えると第二課や隣の第一課の同僚にまで聞こえた様で僕の周りに集まってきた。
「ほ、本当にお騒がせしてすみません。部長……」
「良いから早く娘さんとリモートで繋いでくださいよ、課長!」
うぅ……。
騒動の責任を取る形で僕は、パソコンを打ち合わせ用テーブルに運ぶ。
供えられているスクリーンに繋ぎ、RINEで梨杏ちゃんとリモートチャットをする事になった。
後で巻き込んでゴメンと謝らないといけない。
でも、一方であの子の偉業を皆に分かち合えるコトが誇らしくもあった。
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着信。
RINEである。
しかもライブトークだ。
もしかしてオフィスの左右さんが見れるのかな、と思い私はテーブルにスマホを立たせて受信する。
私は驚いた。
「パパ。あれっ、隣の方は?」
「ごめんね……パパの同僚達が梨杏ちゃんを見たいってうるさくて」
スマホには、スーツを着るいつも通りのかっこいいパパと隣に少し怖そうな年上のおじさんが映っている。
上司かなと思っていると、その人が語り掛けていた。
「やぁ、梨杏ちゃん。初めまして。
私はパパと同じ会社で働いている有坂部長だよ」
部長。
やっぱりパパの上司である。
とても身体が大きく、道場の広瀬さんみたい。
でもこの人からも、どこか優しさを感じる。
私は挨拶した。
「部長さん初めまして。華燭梨杏です。
パパがいつもお世話になってます」
「ほう、パパから聞いてた通りしっかりしている子だね。
ずっと年上だがうちの娘達よりも良い」
隣で左右さんがつい笑っている。かわいい。
マイク越しに小さくだが左右さんの同僚の人達の声が聞こえてくる。
私に好感を持てる評価が聞こえてきているのでホッとする。
左右さんは会社でも人気者なんだと改めて思うと、急に横から若い男の人が現れた。
「わぁー、本当に芸能人みたいっすね! 大きな目がぱっちりして可愛いや。
梨杏ちゃん、初めまして! 僕の名前は――」
「お前はカメラに入るな!」
突然現れた男の人は、左右さんに押し戻されていった。
初めて左右さんが誰かに厳しくする姿がお目に書かかれて感無量である。
☆新規計画達成項目
・2017年5月15日 ファッション誌モデルのオーディションに合格。
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