結婚六カ年計画

魂祭 朱夏

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小学校編

結婚六カ年計画 4

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 2017年4月10日 月曜日。午前7時半。
 美田園市立白藤小学校、職員打合せ室。


 始業式当日。
 私は左右さんと一緒に5年生の担任の先生と事前の顔合わせをする事になっていた。
 ビル街に囲まれた四階建ての校舎で、この間まで通ってた6学年で20人にも満たない斯波(さくなみ)小学校に比べたらとても大きい。
 1学年5クラスもあり、全校生徒が1150人以上も居る。

「大丈夫? き、緊張してない?」
 私は大丈夫だけど左右さんは明らかに緊張していた。
「はいっ。隣にパパが居るから大丈夫です」
 私は笑顔で答えると、左右さんは安心して落ち着いた様だ。

「失礼します」
 少し待つと若い女の人が打合せ室に入ってきた。担任の先生らしい。
「おはようございます」
 先生らしき女性は体面でぺこりと頭を下げ、席に座る。
 私と左右さんも併せて頭を下げた。

「初めまして。梨杏ちゃんを迎える5年2組担任の相田です。宜しくお願いします」
「梨杏の父の華燭左右(かしょくさすけ)です。宜しくお願いします」
 私とふたりきりの時とは違い、落ち着いてはっきりとした口調で答える左右さん。
 きっと仕事中はいつもこうなのかな。
 普段見ない振る舞いも素敵である。
 でも相田先生もそんな彼の格好良さにあてられてしまった様で、一瞬目を奪われた動きを私は見逃さなかった。

「華燭梨杏です。相田先生、宜しくお願いしますっ」
 左右さんから目を逸らす為に私は元気良く、先生に挨拶をした。
「宜しくね、梨杏ちゃん」


 ******


 一通り学校の説明を聞き終えると先生と左右さんが一息つく。
 話す方も聞く方も集中する状況が過ぎたからだ。
 
 先生が左右さんに尋ねる。
「それにしても、梨杏ちゃん凄いですね。知能検査でIQ166のスコアを叩き出したと聞きましたよ」
「僕も凄いと思います。それに、普段からしっかりしている子ですし全然手がかからないんです」
 左右さんが褒めてくれた。
 とても嬉しくてにこにこしながら私は隣で聞いている。
「将来は学者さんも夢じゃないかも知れませんね。梨杏ちゃん、とても偉くなれるかもね」
 偉くなりたいかぁ。
 私は特にそうなりたいと思わないけど、左右さんが望めばそうありたいと思うかも。
 でも、彼は意外な答えを伝える。
 
「十分可能性はあります。
 でもね、相田先生。
 僕は娘に好きな事を好きなだけさせて、笑顔で生きてくれれば有名になったり偉くなったりしなくても良いんです。
 この子が幸せさえ感じていれば、それだけで……」


 ∞∞∞∞∞


 嗚呼。
 そう思って頂けるだけで私は十分幸せです。
 この前海に行った時伝えた通り、貴方と一緒に居るコトが出来れば私は何も望まないのです。
 そしてあと6年後に私と入籍して頂ければきっと、幸せ死してしまうでしょう。


 ∞∞∞∞∞


 過分に幸せ成分が蓄積されてしまい、つい意識が飛んでしまっていた。
 でも天然ジコロである私の左右さんの言葉にときめいたのは私だけではなかったのだ。

「まぁ……お優しいんですね。左右さんの奥様が羨ましいですわ」
 ――名前で呼ばないでください!
 そう叫びたかったけど私はぐっと堪え、膝の上で拳を震わせていた。
 先生の表情が完全に『女』になっているのだ。

「あ、いえ。僕は未婚で、梨杏ちゃんは義理の娘なんです。
 でも、少しでも早くこの子に相応しい父親になるように努力します!」
 
 あぁ……。
 左右さんの決意はものすごく嬉しいけれども、今この瞬間私のライバルが誕生してしまったコトを直感した。


 ☆新規計画達成項目
 ・2017年4月10日 美田園市立白藤小学校へ転校。
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