トワイライトワールド

魂祭 朱夏

文字の大きさ
上 下
10 / 16
第一章

第3話(2)

しおりを挟む
「どなたでもこの世界に辿り着くコトが出来ると言う訳では御座いません。
 適正者に該当するケースは極稀ですので、聖さんはどうやらこの世界との親和性が高い様です」

 クロエちゃんの言葉を思い返す。
 起き上がったジェニーを見て私は直感した。


 ――ジェニーも、私と同じ適正者である。


 ******


 突然白い光に包まれ倒れた様だ。
 次第に暗くなる海空を一瞥するが景色は変わっておらず、長時間ではなく一瞬だけ意識を失ったらしい。
 しかし、どこか違和感を覚える。

(んっ……。あれっ、私気を失ってたの?)
 私は起き上がる。
 周りに居た人達が一人も居なくなっている。
 再び訪れる、違和感。
 
「えっ?」
 聖さんの声だ。
 思わず私は彼女がいる方角を向く。すると……。
「XXXXXXXX!」
 背中にヒレと尻尾の様なものがある黒い人型の影が、ものすごい速さで聖さんの方角へ向かっていた。
 嫌な予感がする。

 思わず、私は彼女の名を叫んだ。


 *******


「聖さんっ!」
 
 ジェニーの叫び声が聞こえた。
 するとミロワーヌは方向を変え、彼女へ向かい泳ぎ始める。
 まずい。
 そう思った瞬間私は掌を影に向けた。


「吹き飛べっ!」
 

 私のファキュルテ、一切斥引(クーロン)。
 ミロワーヌに斥力を向けると海水と共に大きく吹き飛び、高い水飛沫が起きた。
 すかさず私はジェニーの元へ向かい彼女の手を引く。
「ジェニー、大丈夫? 後は任せて」
「はっ、はい。あの黒い影は一体何者なんですか?」
 当然の疑問。
 なのに私はどう答えるべきか迷ってしまった。
 知ってしまったら彼女も……。
 
「言えば、ジェニーも巻き込んでしまうわ。そうなったら命を落とすかも知れないの」
「そんな……」
 動揺するジェニー。
 ミロワーヌは立ち上がり再び私達の方向に走り出してきた。
「ダメージはあまりない様ね。もしかして、接近した方が効果ある?」
「聖さん……」
 脅えた子犬の様に不安そうな表情を浮かべ、ジェニーは私を見る。
「大丈夫。私があなたを必ず護るから。この世界は思えば何だって出来る場所なのよ」
 私はジェニーの頬を軽く撫でるともはや目前のミロワーヌに立ち向かう為、駆けだした。

 
 引力と斥力。
 つまり磁石みたいなものだ。
 ならば距離を縮める程、影響も大きくなる筈。
 だから――――。

 
「XXXXXXXX??」
 意味不明な奇声を上げて襲い掛かる魚人型のミロワーヌ。
 対して私は走りながらてのひらを前にかざし、斥力により敵の体を思い切り引っ張った。
 引き寄せられる事を流石に予想していなかった様で、相手の姿勢が前傾する。

 ――あとは、私が覚悟するだけだ。
 
 程無くして射程範囲内。
 私は拳を強く固める。
 誰かを殴るのは「学生時代のあの時」以来。
 衝突する瞬間、ミロワールへの斥力を解除し拳に引力を籠め、手が砕ける事も辞さず思い切り殴った。

 衝突時の一瞬の抵抗の後、まっくろな体を貫く。
 ある程度の衝撃を感じるものの、痛みは無い。
 
 ミロワーヌの体は霧の様に散りはじめた。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

アルバートの屈辱

プラネットプラント
恋愛
妻の姉に恋をして妻を蔑ろにするアルバートとそんな夫を愛するのを諦めてしまった妻の話。 『詰んでる不憫系悪役令嬢はチャラ男騎士として生活しています』の10年ほど前の話ですが、ほぼ無関係なので単体で読めます。

二人のエリーと遅れてあらわれるヒーローたち

ぺきぺき
恋愛
Side A:エリーは、代々海馬を使役しブルテン国が誇る海軍を率いるアーチボルト侯爵家の末娘だった。兄たちが続々と海馬を使役する中、エリーが相棒にしたのは白い毛のジャーマン・スピッツ…つまりは犬だった。 Side B:エリーは貧乏なロンズデール伯爵家の長女として、弟妹達のために学園には通わずに働いて家を守っていた。17歳になったある日、ブルテン国で最も権力を持つオルグレン公爵家の令息が「妻になってほしい」とエリーを訪ねてきた。 ーーーー 章ごとにエリーAとエリーBの話が進みます。 ヒーローとの恋愛展開は最後の最後まで見当たらないですが、ヒーロー候補たちは途中でじゃんじゃん出すので誰になるのか楽しみにしてください。 スピンオフ作品として『理想の女性を見つけた時には、運命の人を愛人にして白い結婚を宣言していました』があります。 全6章+エピローグ 完結まで執筆済み。 一日二話更新。第三章から一日四話更新。

10年ぶりに再会した幼馴染と、10年間一緒にいる幼馴染との青春ラブコメ

桜庭かなめ
恋愛
 高校生の麻丘涼我には同い年の幼馴染の女の子が2人いる。1人は小学1年の5月末から涼我の隣の家に住み始め、約10年間ずっと一緒にいる穏やかで可愛らしい香川愛実。もう1人は幼稚園の年長組の1年間一緒にいて、卒園直後に引っ越してしまった明るく活発な桐山あおい。涼我は愛実ともあおいとも楽しい思い出をたくさん作ってきた。  あおいとの別れから10年。高校1年の春休みに、あおいが涼我の家の隣に引っ越してくる。涼我はあおいと10年ぶりの再会を果たす。あおいは昔の中性的な雰囲気から、清楚な美少女へと変わっていた。  3人で一緒に遊んだり、学校生活を送ったり、愛実とあおいが涼我のバイト先に来たり。春休みや新年度の日々を通じて、一度離れてしまったあおいとはもちろんのこと、ずっと一緒にいる愛実との距離も縮まっていく。  出会った早さか。それとも、一緒にいる長さか。両隣の家に住む幼馴染2人との温かくて甘いダブルヒロイン学園青春ラブコメディ!  ※特別編4が完結しました!(2024.8.2)  ※小説家になろう(N9714HQ)とカクヨムでも公開しています。  ※お気に入り登録や感想をお待ちしております。

月の後宮~孤高の皇帝の寵姫~

真木
恋愛
新皇帝セルヴィウスが即位の日に閨に引きずり込んだのは、まだ十三歳の皇妹セシルだった。大好きだった兄皇帝の突然の行為に混乱し、心を閉ざすセシル。それから十年後、セシルの心が見えないまま、セルヴィウスはある決断をすることになるのだが……。

病気になって芸能界から消えたアイドル。退院し、復学先の高校には昔の仕事仲間が居たけれど、彼女は俺だと気付かない

月島日向
ライト文芸
俺、日生遼、本名、竹中祐は2年前に病に倒れた。 人気絶頂だった『Cherry’s』のリーダーをやめた。 2年間の闘病生活に一区切りし、久しぶりに高校に通うことになった。けど、誰も俺の事を元アイドルだとは思わない。薬で細くなった手足。そんな細身の体にアンバランスなムーンフェイス(薬の副作用で顔だけが大きくなる事) 。 誰も俺に気付いてはくれない。そう。 2年間、連絡をくれ続け、俺が無視してきた彼女さえも。 もう、全部どうでもよく感じた。

処理中です...