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第一章
第3話(2)
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「どなたでもこの世界に辿り着くコトが出来ると言う訳では御座いません。
適正者に該当するケースは極稀ですので、聖さんはどうやらこの世界との親和性が高い様です」
クロエちゃんの言葉を思い返す。
起き上がったジェニーを見て私は直感した。
――ジェニーも、私と同じ適正者である。
******
突然白い光に包まれ倒れた様だ。
次第に暗くなる海空を一瞥するが景色は変わっておらず、長時間ではなく一瞬だけ意識を失ったらしい。
しかし、どこか違和感を覚える。
(んっ……。あれっ、私気を失ってたの?)
私は起き上がる。
周りに居た人達が一人も居なくなっている。
再び訪れる、違和感。
「えっ?」
聖さんの声だ。
思わず私は彼女がいる方角を向く。すると……。
「XXXXXXXX!」
背中にヒレと尻尾の様なものがある黒い人型の影が、ものすごい速さで聖さんの方角へ向かっていた。
嫌な予感がする。
思わず、私は彼女の名を叫んだ。
*******
「聖さんっ!」
ジェニーの叫び声が聞こえた。
するとミロワーヌは方向を変え、彼女へ向かい泳ぎ始める。
まずい。
そう思った瞬間私は掌を影に向けた。
「吹き飛べっ!」
私のファキュルテ、一切斥引(クーロン)。
ミロワーヌに斥力を向けると海水と共に大きく吹き飛び、高い水飛沫が起きた。
すかさず私はジェニーの元へ向かい彼女の手を引く。
「ジェニー、大丈夫? 後は任せて」
「はっ、はい。あの黒い影は一体何者なんですか?」
当然の疑問。
なのに私はどう答えるべきか迷ってしまった。
知ってしまったら彼女も……。
「言えば、ジェニーも巻き込んでしまうわ。そうなったら命を落とすかも知れないの」
「そんな……」
動揺するジェニー。
ミロワーヌは立ち上がり再び私達の方向に走り出してきた。
「ダメージはあまりない様ね。もしかして、接近した方が効果ある?」
「聖さん……」
脅えた子犬の様に不安そうな表情を浮かべ、ジェニーは私を見る。
「大丈夫。私があなたを必ず護るから。この世界は思えば何だって出来る場所なのよ」
私はジェニーの頬を軽く撫でるともはや目前のミロワーヌに立ち向かう為、駆けだした。
引力と斥力。
つまり磁石みたいなものだ。
ならば距離を縮める程、影響も大きくなる筈。
だから――――。
「XXXXXXXX??」
意味不明な奇声を上げて襲い掛かる魚人型のミロワーヌ。
対して私は走りながらてのひらを前にかざし、斥力により敵の体を思い切り引っ張った。
引き寄せられる事を流石に予想していなかった様で、相手の姿勢が前傾する。
――あとは、私が覚悟するだけだ。
程無くして射程範囲内。
私は拳を強く固める。
誰かを殴るのは「学生時代のあの時」以来。
衝突する瞬間、ミロワールへの斥力を解除し拳に引力を籠め、手が砕ける事も辞さず思い切り殴った。
衝突時の一瞬の抵抗の後、まっくろな体を貫く。
ある程度の衝撃を感じるものの、痛みは無い。
ミロワーヌの体は霧の様に散りはじめた。
適正者に該当するケースは極稀ですので、聖さんはどうやらこの世界との親和性が高い様です」
クロエちゃんの言葉を思い返す。
起き上がったジェニーを見て私は直感した。
――ジェニーも、私と同じ適正者である。
******
突然白い光に包まれ倒れた様だ。
次第に暗くなる海空を一瞥するが景色は変わっておらず、長時間ではなく一瞬だけ意識を失ったらしい。
しかし、どこか違和感を覚える。
(んっ……。あれっ、私気を失ってたの?)
私は起き上がる。
周りに居た人達が一人も居なくなっている。
再び訪れる、違和感。
「えっ?」
聖さんの声だ。
思わず私は彼女がいる方角を向く。すると……。
「XXXXXXXX!」
背中にヒレと尻尾の様なものがある黒い人型の影が、ものすごい速さで聖さんの方角へ向かっていた。
嫌な予感がする。
思わず、私は彼女の名を叫んだ。
*******
「聖さんっ!」
ジェニーの叫び声が聞こえた。
するとミロワーヌは方向を変え、彼女へ向かい泳ぎ始める。
まずい。
そう思った瞬間私は掌を影に向けた。
「吹き飛べっ!」
私のファキュルテ、一切斥引(クーロン)。
ミロワーヌに斥力を向けると海水と共に大きく吹き飛び、高い水飛沫が起きた。
すかさず私はジェニーの元へ向かい彼女の手を引く。
「ジェニー、大丈夫? 後は任せて」
「はっ、はい。あの黒い影は一体何者なんですか?」
当然の疑問。
なのに私はどう答えるべきか迷ってしまった。
知ってしまったら彼女も……。
「言えば、ジェニーも巻き込んでしまうわ。そうなったら命を落とすかも知れないの」
「そんな……」
動揺するジェニー。
ミロワーヌは立ち上がり再び私達の方向に走り出してきた。
「ダメージはあまりない様ね。もしかして、接近した方が効果ある?」
「聖さん……」
脅えた子犬の様に不安そうな表情を浮かべ、ジェニーは私を見る。
「大丈夫。私があなたを必ず護るから。この世界は思えば何だって出来る場所なのよ」
私はジェニーの頬を軽く撫でるともはや目前のミロワーヌに立ち向かう為、駆けだした。
引力と斥力。
つまり磁石みたいなものだ。
ならば距離を縮める程、影響も大きくなる筈。
だから――――。
「XXXXXXXX??」
意味不明な奇声を上げて襲い掛かる魚人型のミロワーヌ。
対して私は走りながらてのひらを前にかざし、斥力により敵の体を思い切り引っ張った。
引き寄せられる事を流石に予想していなかった様で、相手の姿勢が前傾する。
――あとは、私が覚悟するだけだ。
程無くして射程範囲内。
私は拳を強く固める。
誰かを殴るのは「学生時代のあの時」以来。
衝突する瞬間、ミロワールへの斥力を解除し拳に引力を籠め、手が砕ける事も辞さず思い切り殴った。
衝突時の一瞬の抵抗の後、まっくろな体を貫く。
ある程度の衝撃を感じるものの、痛みは無い。
ミロワーヌの体は霧の様に散りはじめた。
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