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第一章
第3話(1)
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8月6日土曜日。午後三時。
私はジェニー、京子ちゃんと三人で浅沼海水浴場へやってきた。
お昼を過ぎたこの時間を選んだ理由は、ピークを越えて客が減り始める事を見込んだ地元民故の英知である。
上空を見上げても雲なんてどこにも無い。
延々と青く透き通る空と海。
歩く度にサクッと心地良い音が鳴る淡黄色の砂浜。
少し早い様には思えるが閉店の準備を始めている海の家。
海水と戯れるには絶好のロケーションである。
何より私の実家から近く来やすい。
「黒! 聖さん、大人っぽくて良いですねー」
水色の花柄パレオ付きのビキニを纏ったジェニー。
私よりもひとつカップサイズの大きな胸の金髪美女は、当然の様に周囲からの注目を浴びていた。
「いいなぁ、二人とも大きくて……」
何故か紺色の競泳水着を着ている京子ちゃん。
そう言えば確か、昔水泳でオリンピックの強化選手に選ばれる程の腕前だったそうだ。
身体は程よく引き締まっており、褐色肌をより健康的に見せている。
「胸なんてあってもあまり良い事無いわよ。他人のを眺める分には眼福だけどね」
小さくない筈の京子ちゃんはまるでリスの様に頬を膨らませた。
「聖さん、嫌味にしか聞こえません」
一通り海水浴を満喫し、6時半。
夕暮れになり、ひとはまばらになる。
ここからは第二部の花火大会の始まりで、私達は手持ち花火と水バケツを持ち着替えてきた。
残っている周りの人達も皆同じ目的の様で既に花火を楽しんでいる様で、地元故に大体が見知った顔である。何度か知り合いと顔を会わせ、その度に挨拶した。
「聖さん、友達多いんですね」
高校卒業と共に結婚した幼馴染夫婦と軽く挨拶をした後、小さく爆ぜる線香花火を手にしたジェニーは私に言った。
「ジェニーも中都に沢山友達居るでしょう?」
「連絡を取りあう仲の同級生は居ますが……どうでしょうね」
再び新しい線香花火に火を灯し彼女は俯く。
赤い玉の周りに小さな火花が静かに弾けている様子を眺めているのか、物思いにふけているのかは私には分からなかった。
でも、今は――。
「私達は大の仲良しで友達ですよ?」
京子ちゃんが線香花火を持つジェニーの背後に立ち、零れ落ちそうな大きな胸を揉み解す。
思わず、甘美な声をあげるジェニー。
聞いている私が恥ずかしくなる程だった。
「ま、まぁ京子ちゃんの言う通り私達は同僚で仲間でもあり、それでいて親友だと思っているわ」
光の玉はぽとりと静かに砂の上に落ちた。
眺める彼女は、とても明るい笑顔を浮かべている。
「二人とも、有難うございます。ですが……」
「ですが?」
京子ちゃんが思わずオウム返しをする。
「聖さんとは夫婦として接して頂けるのが理想ですね」
「なっ……、それは私が引き受けます!」
相変わらず馬鹿なやり取りを行う二人。
だけど、これでいいのだ。
******
空は真っ赤に染まり、山の向こうに夕日が沈もうとしている。
紺色の空が待ちわびた様に星を連れ、水平線からゆっくりと昇り始めている。
……そろそろ帰る時間か。
私は二人にもう帰ろうかと伝えようとした瞬間。
真っ白な光がすべてを包んだ。
――一瞬で理解する、ミロワーヌだ。
正直このタイミングでかと思いながら私は戦う事を決意する。
クロエちゃんの事だ。既に察知して近くまで来ているだろう。
覚悟を決めている途中、私の意識が遠のいた。
∞∞∞∞∞∞∞
光に包まれる前とほぼ同じ夕暮れのロケーション。
「ごみを持ち帰って下さい」と言う看板の文字が裏返っていた。
2日ぶりのトワイライトワールドで3日ぶりのミロワーヌとの対峙。
間も無く海の中からまるで半魚人の様な恰好の黒い影が現れた。
(クロエちゃんがまだ来ない……。それなら私一人で頑張ってみよう)
どうせ周りには誰もいないし現実に影響があるわけでもない。
ならば、思い切り暴れて彼女が来る前に倒してしまおう。
「ん……。あれっ、私気を失ってたの?」
聞き覚えのある聞こえない筈の声が聞こえた。私は声の方向を向く。
「えっ?」
思わず私は目を見開く。
少し離れた場所で、この世界に存在する筈の無いジェニーがむくりと起き上がっていた。
私はジェニー、京子ちゃんと三人で浅沼海水浴場へやってきた。
お昼を過ぎたこの時間を選んだ理由は、ピークを越えて客が減り始める事を見込んだ地元民故の英知である。
上空を見上げても雲なんてどこにも無い。
延々と青く透き通る空と海。
歩く度にサクッと心地良い音が鳴る淡黄色の砂浜。
少し早い様には思えるが閉店の準備を始めている海の家。
海水と戯れるには絶好のロケーションである。
何より私の実家から近く来やすい。
「黒! 聖さん、大人っぽくて良いですねー」
水色の花柄パレオ付きのビキニを纏ったジェニー。
私よりもひとつカップサイズの大きな胸の金髪美女は、当然の様に周囲からの注目を浴びていた。
「いいなぁ、二人とも大きくて……」
何故か紺色の競泳水着を着ている京子ちゃん。
そう言えば確か、昔水泳でオリンピックの強化選手に選ばれる程の腕前だったそうだ。
身体は程よく引き締まっており、褐色肌をより健康的に見せている。
「胸なんてあってもあまり良い事無いわよ。他人のを眺める分には眼福だけどね」
小さくない筈の京子ちゃんはまるでリスの様に頬を膨らませた。
「聖さん、嫌味にしか聞こえません」
一通り海水浴を満喫し、6時半。
夕暮れになり、ひとはまばらになる。
ここからは第二部の花火大会の始まりで、私達は手持ち花火と水バケツを持ち着替えてきた。
残っている周りの人達も皆同じ目的の様で既に花火を楽しんでいる様で、地元故に大体が見知った顔である。何度か知り合いと顔を会わせ、その度に挨拶した。
「聖さん、友達多いんですね」
高校卒業と共に結婚した幼馴染夫婦と軽く挨拶をした後、小さく爆ぜる線香花火を手にしたジェニーは私に言った。
「ジェニーも中都に沢山友達居るでしょう?」
「連絡を取りあう仲の同級生は居ますが……どうでしょうね」
再び新しい線香花火に火を灯し彼女は俯く。
赤い玉の周りに小さな火花が静かに弾けている様子を眺めているのか、物思いにふけているのかは私には分からなかった。
でも、今は――。
「私達は大の仲良しで友達ですよ?」
京子ちゃんが線香花火を持つジェニーの背後に立ち、零れ落ちそうな大きな胸を揉み解す。
思わず、甘美な声をあげるジェニー。
聞いている私が恥ずかしくなる程だった。
「ま、まぁ京子ちゃんの言う通り私達は同僚で仲間でもあり、それでいて親友だと思っているわ」
光の玉はぽとりと静かに砂の上に落ちた。
眺める彼女は、とても明るい笑顔を浮かべている。
「二人とも、有難うございます。ですが……」
「ですが?」
京子ちゃんが思わずオウム返しをする。
「聖さんとは夫婦として接して頂けるのが理想ですね」
「なっ……、それは私が引き受けます!」
相変わらず馬鹿なやり取りを行う二人。
だけど、これでいいのだ。
******
空は真っ赤に染まり、山の向こうに夕日が沈もうとしている。
紺色の空が待ちわびた様に星を連れ、水平線からゆっくりと昇り始めている。
……そろそろ帰る時間か。
私は二人にもう帰ろうかと伝えようとした瞬間。
真っ白な光がすべてを包んだ。
――一瞬で理解する、ミロワーヌだ。
正直このタイミングでかと思いながら私は戦う事を決意する。
クロエちゃんの事だ。既に察知して近くまで来ているだろう。
覚悟を決めている途中、私の意識が遠のいた。
∞∞∞∞∞∞∞
光に包まれる前とほぼ同じ夕暮れのロケーション。
「ごみを持ち帰って下さい」と言う看板の文字が裏返っていた。
2日ぶりのトワイライトワールドで3日ぶりのミロワーヌとの対峙。
間も無く海の中からまるで半魚人の様な恰好の黒い影が現れた。
(クロエちゃんがまだ来ない……。それなら私一人で頑張ってみよう)
どうせ周りには誰もいないし現実に影響があるわけでもない。
ならば、思い切り暴れて彼女が来る前に倒してしまおう。
「ん……。あれっ、私気を失ってたの?」
聞き覚えのある聞こえない筈の声が聞こえた。私は声の方向を向く。
「えっ?」
思わず私は目を見開く。
少し離れた場所で、この世界に存在する筈の無いジェニーがむくりと起き上がっていた。
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