魔王様でも出来る、やさしい畑生活の始め方~レンタルした畑の持ち主は勇者一家でした~

 何度も何度も人間を滅ぼし、世界を闇に塗り替えようとしてきた魔王。だが、その度に勇者が現れ、倒されてきた数百年。

 もう嫌だ。
 もう疲れた。私に必要なのは、そう、癒し!
 三日前に植えたダイコがついに芽を出したのだ。
 土を作り、乾かないように水をやり、今か今かと待ち望んだところに、この可愛らしい双葉。
 ああ。これぞ癒しだろう

 って、か、枯れたぁぁぁあ。
 何故だ? 何故なんだぁぁぁあぁ。

 腹心のスケルトンに相談してみた。

「魔王様、それは魔界の瘴気のせいかと思われます」
「そうか。なるほど。瘴気のせいか。して、どうすればうまく育てられる?」
「魔界では育ちませんでしょう。人間界で育てるしかないかと」
「ぬううぅぅ、かくなる上は」
「かくなる上は?」
「野菜を育てるため、人間界の領土を手に入れてやろうぞ」

 「それは無理」と、意気込む魔王に腹心は告げる。

 人間界の領土を魔王様が統治すると、魔界化してしまう。瘴気が満ちて、野菜は育たないのだと。
 しかし普段から住まず、畑仕事をするときにだけ出向けば、瘴気で満ちることもない。

 よし! ならば畑を借りて。いざ、始めるぞ! 初めての畑生活。
 ところがレンタルした畑の主はどうやら勇者一家で…‥‥?

 本人、大真面目のポンコツ魔王。腹心は冷静沈着、何かと器用なスケルトン。
 下僕のベスから人間世界の常識を教わりつつ、勇者の娘さんに手取り足取り教わる、ほのぼの畑生活。
 人間界で暴れる魔物たちには、鉄拳制裁だ。

 絶妙にすれ違う、魔王様たちと勇者家族の物語をお楽しみあれ。

※全三十話とエピローグで完結。
この小説は小説家になろうにも掲載しております。
表紙絵は自作です。
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