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23話

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「どうした?」

問われたリゼットは逡巡した後、決めた。

「…言うべきか悩んだのですが。テオドール様が薬を飲まされたのは元はといえば私が原因です」

「そんなこと気にしなくていい」

「そう仰ると思ってました。レオン殿下のことはどうする事も出来なかったと諦めてますが…それでも…んぐっ」

尚も言い募るリゼットの鼻をテオドールが摘んだ。突然の行動に戸惑いを隠せない。

「自分が何をされかけたのかはあまり気にしていないのに、俺が媚薬を盛られたことは気にするんだな。普通逆だろう」

自分は何もなかったのだから、テオドールの心配をするのは当然だ、と返したかったが変な声を聞かせたくなくて結局黙ってしまう。

「俺は何回か盛られているから多少は耐性があるし、殿下も量を調整していたから後遺症も何も無い。寧ろリゼットに盛っていた場合、殿下のことを2、3発は殴っていた」

スッと目を細めて語るテオドールの顔は本気だった。いくら仲がいいとはいえ王太子に暴力は駄目だ、テオドールも無事では済まなかっただろう。心の底から何も無くて良かったと安堵していると鼻が解放された。リゼットが鼻を擦る。

「鼻を摘まないでください」

「悪い、つい咄嗟に」

「言葉を遮るにしても、他に方法があるでしょう」

「他に?どんな?」

「どんな…」

聞き返されると逆に答えられない。目を伏せ考えるそぶりを見せていると。

「例えば…こんな方法があるな」

「え…」

テオドールの端正な顔が近づいてくる、そして形のいい唇がリゼットのを塞ぐ。思いもよらないテオドールの行動にリゼットの身体が強張る。テオドールはリゼットの頬に手を添えると、角度を変え啄むだけの軽い口付けを繰り返した。ゆっくりとリゼットの身体から力が抜け、緊張がほぐれていくのが分かり、空いている左手を背中に回すとスス…と背骨をなぞりだす。些細な動きでも、既に一昨日のことを思い出し始めたリゼットの身体が、ビクリと過剰に反応してしまう。嬉しそうに目を細めたテオドールは触れるだけの口付けを徐々に激しくしていった。

押し付けられた唇から伝わるテオドールの熱が顔を、身体を熱くしていき両手がリゼットの身体を弄り始める。右手は服の上から胸に触れ、下から掬うように揉まれた。直接的な刺激でないのがもどかしく感じていると突然乳首をキュッと摘まれ、塞がれた唇から「んんっ…」と喘ぎが漏れる。その隙を逃さずテオドールの舌が入り込み、クチュクチュと濡れた音を立てながら忙しなく口内を動き回った。

キスだけで感じてしまい、頬を赤く染め上げ潤んだ瞳でリゼットはテオドールを見つめた。その間も胸へと愛撫は止まず、弄られた方も放置されていた方も硬く立ち上がりつつあった。下着と擦れて、それだけで甘い声を発しそうになるがテオドールの舌が口内を蹂躙する音に掻き消されて聞こえることはない。

ワンピースの裾から入り込む手の存在に気づき、身体を引こうとするもまた強く胸を揉みしだかれ乳首を押されると抵抗する気も起きずされるがまま。前回と違い焦らすことはせず、導かれるように下着に辿り着いた指が上からゆっくりと秘裂を擦る。そこは既に湿っており、唾液の混ざり合う音と互いの荒い息遣いに紛れクチ、という水音がスカートの下から聞こえた時はカッと全身が熱くなった。


「…良かった、薬がなくても君は感じてくれているんだな」

やっと唇を解放し、感慨深そうに呟くテオドールに息を乱しながら「薬…?」とリゼットは聞き返す。

「昼に執務室を出る前に殿下に媚薬の詳しい効能について聞き出したんだ、自分がどんなものを飲まされたか気になったからな」

今は下着と胸を弄る手の動きは止まっている。安心してリゼットはテオドールの話に耳を傾けていられた。

「女性が飲んだ時の効果は昼に殿下が話していた通り、男は標準量を飲まされると女性を見たら見境なく襲い掛かり、10回は精を吐き出さないと治らないらしい。正に劇薬だ、俺は調整した量を飲まされたからあれだけで済んだ」

あれだけ、というがリゼットが覚えている限り5回は出された。標準量を飲んだ男の相手をさせられる相手…歴代の王妃や王族に嫁いだ女性だろうが果たして生きていられたのか心配になる。

「…それと今私がされていることに何の関係が」

そう、何故リゼットはキスをされてあまつさえ愛撫されているのか。…別に嫌だったわけではない、納得のいく説明が欲しいだけだ。

「あの媚薬、飲まされた人間の唾液を摂取、つまりキスをすると相手に催淫効果をもたらすんだそうだ」

催淫、というと性的に昂り淫らな気持ちになること。そしてリゼットはテオドールとキスしたあたりから身体が火照り出して…。

「一昨日の私が…あんな風になったのは薬のせいであると」

リゼットは胸を撫で下ろした。あの時の自分は少々…いやかなり積極的過ぎた。テオドールはそんなリゼットに嬉しそうに触れてくれたけど、はしたない女はどうなんだ、心の隅に引っかかっていたのだ。だからこそ薬のせいだと知らされて心の底から安堵していたのだ…今の状況も忘れて。

「良かったです…」

「俺としては積極的なリゼットが見れて嬉しかったが」

「またまた…ん?私にキスした理由と結びつかない…あっ!」

油断していたところに胸と下に触れていた手の動きが再開し、大袈裟に反応してしまった。胸の方はやわやわと優しく揉むだけに留まっているが、下の方はさっきより強い力で擦られ、下着の上から主張し始めていた蕾をグリグリと押されて腰を揺らしてしまう。



「んんっ!き、きゅうに、何し…あっ!」

スカートの下からグチュグチュと淫らな音が響き、左胸も形が変わるくらい強い力で揉まれてここが執務室だと理解していても声が抑えられない。1度だけ、けれど濃厚な時間を過ごしたことによりリゼットの身体はテオドールの与える快楽に弱く、そして貪欲になっていた。喘ぎ混じりで文句を言いつつも、声音と蕩けた表情は嫌がっていないことは丸変わり。その様子を涼しい顔で、それでいて滾らんばかりの熱を湛えた蒼い瞳がリゼットを射抜く。潤んだ視界の中でもテオドールが望んでいることを察してしまい、駄目に決まっていると言う自分と、このまま好きなようにされたいと望む自分が静かに葛藤する。

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