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17話
しおりを挟む「…テオの言うとおりだ。上手くいったからと言って俺のしたことは決して許されないしノインツ嬢の尊厳を踏み躙る行為だ。ノインツ嬢、すまなかった。罵倒するなり殴るなり好きにしてくれて構わない」
頭を下げられてしまい、慌てて立ち上がった。
「か、顔を上げてください、王太子殿下ともあろうお方が頭を下げるなんて」
「良い、ノインツ嬢。謝罪したいと言うのだから好きなだけさせれば良い…ですが頭を下げる角度が甘いのでは?もっと下げなければ誠意は伝わりませんよ?何なら俺が手伝いましょうか?」
冷え冷えとした低い声でテオドールが指摘したと思ったら、立ち上がりクリストファーの横に移動すると、クリストファーの頭を掴んでグイ、と更に頭を下げさせたのだ。クリストファーの頭が足の間に埋まるほど下げられる。これは極悪非道な王様が図が高い、と臣下の頭を無理やり下げさせる場面に似ていた。不思議なことに無理やり下げさせている方が臣下である。
「いってぇ!お前手加減しろ!折れる折れる首折れる!」
「何を仰います?手加減してますよ当然」
「だ、団長!駄目ですそれは!不敬罪で捕まります!私は怒ってないので手を離してください!」
とリゼットが急いで立ち上がりテオドールの腰に腕を回して必死で止めると、あっさり頭から手を離す。クリストファーは首に手を当ていてぇ、と呻いているしテオドールは平然としていた。
「ノインツ嬢の寛大な心に感謝してください、殿下」
「うん、感謝してるしてる。本当にありがとうノインツ嬢。おかげで今生きてる」
大袈裟だな、と思ったがクリストファーの目が真剣だった。もしかしてリゼットが止めなかったら…と一瞬恐ろしい想像をしてしまったが、そうなる前に側近のセルジュが止めたはず。そのセルジュはテオドールの行動を止めることなく黙っていただけだったが。
もしかして、よくあることなのかもしれない。テオドールとクリストファーは話す雰囲気からして親しいのは間違いない。確かクリストファーはテオドールと同じ年だ。公爵家の次男と王太子、付き合いがあっても不思議ではない。気心知れているからこその遠慮のなさか。
そんなことを考えながら、座っていたソファーに戻ったリゼットの隣にテオドールがまた座る、さっきより近い距離で。数センチしか離れてない。
「あの、団長」
「?どうした」
「距離、さっきより近くありませんか」
「気のせいだろう」
堂々と嘘をつかれた。あまりに自信満々なのでそうだったかも、と思い始めている。
「うわー、27年間女遠ざけてたテオが…なあテオ。俺が媚薬盛った理由、お前とノインツ嬢の仲が全く進まなくて焦ったから、だったらおこ」
「殿下、言い残した事は?3分だけ待ちましょう、全く執務室に剣を持ち込めないことをこれほど悔やんだ事はありません」
全身から怒気を発し始めたテオドールを慌ててクリストファーは諌める。
「冗談だ冗談、いや協力を仰いだ理由には使ったが」
そんな理由で同僚達は協力したのか。面白がっていたのか、いやクリストファーに話を持ちかけられれば断れない。責めるのは酷だろう。
「…それで?そんな馬鹿げた理由で協力を強制してまで俺とリゼットの仲を進めようとした本当の理由は?」
「うっわ急に名前呼び、吹っ切れたカタブツ怖…うん、これからする話は他言無用で頼む」
急に真剣な顔つきに変わったクリストファーが語り出した内容は想像を絶するものだった。
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