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3話

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壁掛け時計を見ると丁度5分経った頃だ。そろそろ2、3回は発散し終わっただろうか。ゆっくり耳の穴から指を抜く。背後からは荒いテオドールの息遣いしか聞こえない。やはり顔を見ないと何とも判断出来ない。

「団長、一度振り返りますが宜しいですか」

暫くするとテオドールの投げやりな「…ああ」という返事が聞こえてきた。本当に宜しいのだろうか、と不安を覚えながらも後ろを向いた。

…え?

当然の言えば当然なのだが、テオドールはトラウザーズを寛げて臍に届くほどそり返り、赤黒く膨張した屹立を取り出して右手でそれを握っている。そして手と屹立には白くてドロリとした液体がまとわり付いている。この状態を見るに一度は達したらしい。が、彼のモノは全く萎えておらず勃起したまま。ちなみにリゼットは目を限界まで細めてテオドールの痴態を見ていた。とんでもない美丈夫が顔を真っ赤にして荒い息を吐き自らを扱いた姿を普通に観察することは出来なかった。こういう事に全く興味のなかったリゼットも、あまりに卑猥なテオドールの姿を目にして顔が熱くなってくる。

「…あの、それ…何回されました?」

「…一回だ。それ以上擦っているんだが手にうまく力が入らない上に達しづらいようで治まる気配がない」

口調自体は淡々としているが、相変わらず苦しそうだしとろんとした蒼い瞳はちょっと死んでいた。小娘に対して何回抜いたか聞かれて答えなければいけないのは、精神的に堪えるはずだ。リゼットも居た堪れなくなってきた。しかし一番きついのはテオドールだ、リゼットが恥ずかしがるそぶりを見せてはいけないと自らを奮い立たせる。

「えーと…治らないようならやはり他者の手によって発散させる他ないと言いますか…分かってます、女性嫌いなのに触られるなんて苦痛で仕方ないのも理解してます。ですが」

「…じゃない」

「はい?」

小声で何か言われたが聞き取れない。テオドールはチラリとリゼットを見た後、聞き逃すなよと言わんばかりにはっきり言った。

「…女は嫌いだ、だが。…君は嫌いじゃない」

「……」

薬のせいだと分かっているのに、頬を赤く染め上げて恥ずかしがりながらそんなことを言われると。免疫のないリゼットも照れるのである。「は、はあ」と曖昧な返事しか出来ないリゼット。



「…それに中途半端に発散したせいで悪化しているようでな。このままでは君に襲いかかる危険がある。最悪の事態を避けるためにも恥なんてものは捨て去る事に決めたさあ早くやってくれ」

息継ぎなしで一気に言い切った。リゼットが思っているより薬の威力が強いらしい。誰彼構わず襲いかかりそうになる程精力が増強されている。それでも耐えているのは彼の強い精神力のおかげに他ならない。騎士団長に襲われれば引きこもりのリゼットは抵抗する暇もないだろう。不可抗力でもリゼットを襲ってしまったら根が真面目なテオドールは気に病んでしまう。それだけは避けねばならない。

リゼットが今やるべきなのは速やかにテオドールの分身をアレコレする事なのだが。

ここからどうすれば。リゼットは手を宙に留めたまま固まった。リゼットの中には人間に必要な三大欲求があまり無い。特に性欲というものを生きていて必要だと感じたことがなかった。同僚やメイド達の話す赤裸々な性に関する話も、媚薬を買いに来た職員が聞いてもいないのに垂れ流す夜の生活についても右から左に流れるだけ。辛うじて脳内に残った役に立つ予定もない知識の中から、何かしら引っ張り出さなければいけない。

薬師なので人間の身体の仕組みは一通り知っているが、経験は皆無。つまり処女。手助けするなんて大口叩いておいて、何の経験もありませんは通用しない。

そこでリゼットは頭をフル回転させ、恋人が月一で変わる同僚の話していた「恋人を気持ちよくさせる方法」を必死で思い出していた。確か両手で握って上下に擦ると良いとか。改めてテオドールの下半身に目を向ける。白濁まみれの屹立は血管が浮き出ていて、ピクピク蠢いていた。あの綺麗な顔にこんな凶悪で卑猥なものが生えているなんて信じられない。

慄いている場合ではない、とガタガタ震えながらゆっくり手を近づける。テオドールはサファイアの瞳を細めてリゼットを見ているが何も言わない。さっき騒いでいたのが嘘みたいに静か。この状況で楽しくおしゃべりは土台無理な話だが、リゼットとしては会話でもして気を紛らわせていないと厳しいものがある。

「…いきますよ…」

「震えているが、君経験」

「ないですあるように見えますか?」

「…そうか、失礼なことを聞いた」

テオドールの声に嬉しそうな響きが含まれていた気がするが、リゼットに気にする余裕はない。なるようになれ、とヒタ、とそれに触れる。

思っていた以上にそれは太くて硬く、そして何より熱かった。こんなものが下着の中に押し込められていたのだ。苦しそうなのは分かっていたが、それ以上に痛いのではないか、と心配になる。


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