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第二部
39話…※
しおりを挟むこれから事に及ぼうと言うのにギャーギャー言い争いつつも寝室に入った櫻井は、ベッドの上に静香を本物のお姫様の如き恭しさで寝かせる。月の光が差し込んだ薄暗い部屋の中、サイドテーブルに置かれたエアコンのリモコンを手に取るとスイッチを入れる。もわっと蒸す温度の高い部屋に冷たい風が流れ始めた。櫻井の手による愛撫のせいで火照った体に冷風が当たり、気持ちが良い。
リモコンを元の場所に戻した櫻井がベッドに乗ると、スプリングが軋む。彼が自分の身体にまたがり覆いかぶさった。両肘を顔の横に置いた櫻井の端正な顔が間近に迫り、息が出来なくなる。黒い髪が頬を擽り擽ったい。
「…今更遅いけど本当に良い?最後までするけど」
本当に今更だ。覆いかぶさる直前にチラリと確認したが、あそこはもうテントのように張りつめている。あの状態でも最後に確認してくれることに驚いた。だが仮に静香がやっぱり無理だと言ったところですんなりと眠らせてくれるのか怪しい。いや、櫻井は静香が本気で望めば意思を尊重してくれる、優しすぎるくらい優しい人だ。
というか静香が帰ったらその主張の激しくなっている部分はどうする気なのだろう。処理するしか方法がないのだからトイレにでも行くはずだが、それも癪だ。櫻井が自分以外で慰めるのは嫌だった、思いの外独占欲が強くて驚く。それに中途半端に火を付けられた今の身体のままでは大人しく眠ることも難しい。トイレで己を慰める勇気はないし、そもそも経験がないのだ。非常に困ったことになる。
「今更言われても困ります…」
拗ねた口調で訴え、太腿を櫻井に擦りつけると彼の瞳が大きく見開かれ、些か興奮したように息をつくと複雑そうな表情を浮かべた。
「…それ無意識?君俺以外の男と付き合ってもそういうことするのか…凄く嫌だな」
「?何ですか急に」
「気にしないで、こっちの話…服脱がせていい?見たい、静香の身体」
欲望を湛えた低い声で囁かれ、断る選択肢は最初から存在しない。こくりと頷くとそれを合図と受け取った櫻井は性急に、かつ器用にブラウスとスカート、カーディガンを脱がしベッドの下に置く。「背中浮かせて」という言葉に従い、ほんの少し背中を浮かせると一瞬のうちにホックを外し剥ぎ取られる。プロの技だと感心する暇もなく、豊かな胸を彼の目から隠すものが無くなったことに気づき咄嗟に両腕で隠す。
「隠さないで」
「だって恥ずかしい…」
「これからもっと恥ずかしいことするのに今更」
だから何でそう言う言い方をするんだと言い返そうとした隙を突かれ、あっさりと両手を外されてしまった。そしてゆっくりと彼の視線が自分の身体を這う。それだけで全身が更に敏感になる。
「綺麗だ」
不意に真剣に囁かれると身体の奥から熱いものが疼き出す。だが、自分はほぼ裸で彼は服を着たまま。自分だけ全部見られているのは不公平だという不満を込めた視線を櫻井に向けた。それに気づいたのか彼は「俺も脱ぐから」と徐に着ているシャツを脱ぎ捨てた。薄暗い照明に照らされた彼の程よく引き締まった身体から目を離せない。てっきりひょろっとしていると思っていたため、筋肉の付いた身体は衝撃だった。静香がとても失礼なことを考えてることは知らず、凝視されていることに気づいた彼はどこか恥ずかしそうだった。すぐ覆いかぶさると冷風に晒されてひんやりとした胸を直接触り立ち上がった先端を捏ねる。服越しと比べ物にならない快感を身体中が走り思わず腰が跳ねてしまう。胸を触られただけでこれとは、はしたない女だと軽蔑されたらという恐怖心が仄かに心の中を侵食する。が、そんな心配は杞憂だとすぐに気づく。自分を見下ろす櫻井の目が何処迄も優しさで満ちていたからだ。嬉しそうに微笑んだと思ったら胸の先端を口に含まれ声を抑えられない。
「ん、あっ…っ」
静香が気持ちいいと感じている時に発する甘い声で分かった櫻井は舌で左の先端に刺激を与えつつ空いた左手で右の先端を捏ね、弾く。申し訳程度の羞恥心と快感の狭間で腰をくねらせてしまう。カリっと甘噛みされた瞬間、自分でも怖いくらい、いやらしい嬌声が漏れることが分かり必死に抵抗して唇を引き結んだ。先端から口を離すと次は白い乳房に舌を這わせ、ちゅ、と強い力で吸い付かれ痛みが走る。チラリと確認すると櫻井が何箇所かに唇を押し当て、赤い印を付けているのだと気づく。櫻井の口が銀糸を引いて胸から離れたと思ったら固く閉じた静香の唇を開き、口内を舌で撫でる。先端を弄られつつ舌で口内をまさぐられ、身体から力が抜ける。唇を塞がれた状態でくぐもった声が漏れた。櫻井がほんの少し唇を離す。
「声必死で抑えてる顔、可愛すぎてヤバいな。けど、やっぱり声聞きたいから我慢しないで、俺しか聞いてないし」
そんなことを言われても、声を聞かれるのが恥ずかしいのだと思わず上目遣いで睨む。が、寧ろ逆効果らしかった、彼の喉の奥から呻き声が聞こえたと思ったら先端を弄っている手の力が強まり、予期せぬ事態に声も抑えられない。
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