人間不信気味のイケメン作家の担当になりましたが、意外と上手くやれています(でも好かれるのは予想外)

水無月瑠璃

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第二部

28話

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「この段ボールの中身見たけど、マスクとかお面ばかりじゃん、何これ」

ドンと床に置かれた段ボールの中を覗くと動物のマスクやガスマスク、能面、鬼の面、祭りで売っていそうなお面に至るまで多種多様な物が収まっていた。

「…サイン会で使う仮面何が良いのか分からなかったから、通販サイトで出て来たやつ上から順に全部買った」

「何その『ここからここまで全部ください』って言う金持ちみたいな買い方。馬鹿なの?」

馬鹿と面と向かって言われた櫻井は「は?」と怒りを滲ませる。馬鹿は流石に言い過ぎだが、賢い櫻井らしくない行動なのは確かである。

「…こんなに買う前に一言相談して欲しかったですね」

「そうそう、もしかして雨宮さん呼んだ理由これ?選んで欲しかったのか?何て言われて呼び出されたの?」

「サイン会について大事な話があるって」

「それただの口実でただ単に雨宮さんに会いたかっただけじゃないのか?付き合っているんだから普通に誘えばいいだろ。そもそもサイン会いつだっけ?」

「今のところ二か月後です」

「気が早くないか、こういうのは直前に決めるだろ。…ああ、サイン会楽しみで張り切ってたのか?あれだけ人前嫌だって言ってたのに?」

「そこまで言うのならやってやってもいい、って雰囲気醸し出していたのにそんなにファンに会えるの楽しみにしてたんですか…(ニヤニヤ)」

「ホント天邪鬼だな~」

「お前ら俺を弄る打ち合わせしてたのか?何でそんなに息ぴったりなんだよ」

目を吊り上げて櫻井は仲良くニヤニヤしている新條と静香を睨んだ。打ち合わせなんてしてないが、やはり新條とは気が合うのかもしれない。ツーと言えばカーというやつだ。

「んなことしてねぇよ、まああれだ、お前弄るのが好きなんじゃないの。俺も雨宮さんも」

チラリとこちらに視線を向けられたので、うんうんと頷くと益々櫻井は怪訝な顔になるが、これ以上食い下がっても無駄だと悟ったようだ。「もういいわ」と諦念の雰囲気を漂わせ、段ボールの中を漁り始めた。静香も段ボールに近づくとその場にしゃがみ込み、段ボールの中身を覗き込む。が、その際無意識に櫻井に近寄りすぎていたらしく、気配に気づいた彼が距離を取った、やや大げさに。

「近い!」

「あ、ごめんなさい」

ペコリと頭を下げるとまた段ボールの中身に視線を戻す。しかし、想像以上に量が多い。時間がかかるが1つ1つ櫻井に付けて貰った方が良いだろう。最も彼のスタイル的にどれを付けても様になるのが容易に想像出来る。やはり時間はかかりそうだ。


「あのさ、2人っていつもこんな感じなん?颯真だけ顔赤いじゃん」

「…いっつもこうだよ、未だに恥ずかしがるポイントが分からない」

「振り回されてる。確かに、クールというか動じなさそうだしな彼女」

「…利いた風な口叩くなよ」

「え、何で今怒る?本当心狭すぎてヤバいな、マジで愛想尽かされないように気を付けろよ」

「…尽かされても絶対別れない…みっともなく最後まで縋る…」

「こっわ!!鳥肌立ったわ…重いとは思ってたけど相当だなこれ、こんな独占欲カンスト嫉妬深ヤバ男に好かれるって雨宮さん男運ないんじゃないか」

「変な造語作るな、というか愛想尽かされないように努力するし、それに他の奴なんか目に入らないくらい俺がどれだけ静香の事好きか教え込まないと…」

「怖い重い!お前それ惚気てるつもりかもしれないけど、普通にホラーだから!絶対本人に言うなよ」

「もう遅い、言ってる」

「は?彼女引かないの」

「引かない、しょうがないな、って顔して笑って流す。満更でもなさそう」

「…もしかしなくても雨宮さんて…」

「変な上に男の趣味が悪い」

「それをお前がハッキリ言うな、元凶。絶対道踏み外させてるだろ、こんなのに捕まらなければ絶対もっとまともな奴と」

「冗談でもそういうこと言うな、絶対誰にも渡さないしそんな奴いたら物理的にも社会的にも消す」

「…あー、うん。法を犯さないようにしろよ、うん」



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