人間不信気味のイケメン作家の担当になりましたが、意外と上手くやれています(でも好かれるのは予想外)

水無月瑠璃

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第二部

19話…S

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なのに静香はこちらの気も知らず、一緒に寝るかと誘って来たり、襲うぞと脅しても「襲ってもいい」と言う。淡白だと思ったらそうでもなかった、予想外だ。明け透けな彼女を前に肩の力が抜けてしまった。もう隠すのも面倒になり身勝手な「戒め」を打ち明けたら、あっさりOK。襲っても良いと言ったのに、本当によく分からない。颯真の気持ち次第だと伝えたかったのだろうか。

色んな意味で吹っ切れてしまい、「手を出さなきゃセーフ」というクズ理論の元、静香に深いキスを繰り返しベッドに押し倒し、酸欠寸前になるまで貪り力一杯押しのけられたけど。というかやはり力が強かった、しかしこれなら猿みたいに盛った自分が手を出そうとしても殴ってでも止めてくれるだろうと変な安心感を抱いた。

…風呂上りの彼女が自分の服を着て出て来た時は自らに科した「3か月」という期間が早速破られる危機に陥る。颯真は背も高いし体格が良い、女子の平均身長で一部を除き華奢な静香が見に纏えばブカブカになるのは予想出来たが、実際目にした時の破壊力ときたら。

(何あれ、エロ過ぎる。しかも俺と同じシャンプーとか使ってるし、本当に危なかった)

風呂上りでほんのり頬が紅潮した静香の色っぽさといったら、言い表せない。言葉で示せと言われてもお断りだ。自分以外の誰にも静香の色っぽさを想像する余地すら与えたくない。栗色の色素の薄いセミロングも濡れていて、もうそこらかしこがエロかった。誰にも見せたくないので出来れば銭湯やプールには行かないで欲しい。独占欲が強すぎて我ながら引く。

とはいえ「3か月後」には、と鼻先に人参をぶら下げてられている状態の颯真は割と冷静だった。(物理的な距離を取る前に目に焼き付けるようにガン見したし、寝室に鍵をかけるように念を押したが)…今でこんな状態なら3か月にはがっつきすぎてやらかすのでは、という不安を抱いたが気にしてもしょうがない、と開き直った。彼女ならがっついても許してくれるだろう、と嫌な開き直り方だが。

(…あ、待て。今彼女俺のベッド使ってるってことは…帰った後に全部洗濯しないと)

静香の使ったシーツとタオルケットを何食わぬ顔で使い続けるなんて無理だ。絶対…言葉を選ばなければ彼女を想像して抜いてしまう。流石にそこまで堕ちてはいない颯真はまだ、やらかしてはない。それだけは超えてはならないと肝に銘じている。

想像してみても彼女が使ったシーツで己を慰める男はヤバいなんてものじゃない、即効隔離し二度と外に出してはならないレベルのド変態だ。自分でヤバい行為だと自覚しているのなら、やらないように己を律すればいいだけの話なのだが。実際できるかどうかは別問題である。もう高校生の方が自制心があるのではないかいうくらい、今の颯真は静香の事を考えると悶々としてしまうのである。

仮に、万が一にもあり得ないが自分を想像して抜いたと静香に知られた場合彼女はどんな反応をするか。やや引きながらも仕方な人だな、と許してくれるのか。もしくは

「っ!気持ち悪いっ…!」

ゴミを見る目で蔑まれるか。あの清楚で可憐で、親しくない相手にはクールな顔が恐怖と嫌悪感で引きつり、こちらを睨みつける様を想像すると。

(あ、無理だ、想像しただけで死ねる)

想像しただけなのに、胸どころか全身が張り裂けそうな痛みが襲い掛かる。本当にそんな反応をされたら勢いのままあの世への片道切符を手にしてしまいそうになるが、静香に傷を残す真似は出来ない。静香の事だ、ド変態でクズとはいえ付き合っていた人間が居なくなれば悲しむ、だから絶対にしない、絶対。というか、自分が静香に入れ込み過ぎていて引く。ここで新條の言葉を思い出した。

『独占欲と束縛がカンストして許されるのは二次元だけだ、リアルでやったら恐怖の対象でしかないからな』

あの時はそんなことはやらかすわけがないと、内心笑い飛ばしていたが、今の颯真はあの言葉を肝に銘じて置こうと思った。冗談抜きで。

碌なことを考えない颯真は、「もし静香に振られたら」というシミュレーションを脳内で繰り広げたのち、「何だかんだみっともなく縋った結果、彼女が絆されて別れを回避」という妄想で満足して眠りについた。



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