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第一部
23話※ 閲覧注意
しおりを挟むやや無理矢理な描写があります。
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(急に何…?)
何か気に障ることをいってしまったのかと不安になったが、それらしい言葉はヒットしない。静香が暫く黙っていると櫻井は苛立った様子でまた口を開いた。
「黙ってないで答えてよ、何で新條と会ってたの」
約半年の付き合いの中でも聞いたことのない威圧感のある声に肩がビクっと震える。しかし静香はこの程度で怖じ気づく性格ではなかったので毅然とした態度で答える。
「…新條先生が清水先生の失踪先に詳しいのでは、と言われたので詳しい話を聞きました。新條先生が思い当たるホテル旅館に直接行こうとした私に、心配だからと付いてきてくださったんです。結局無駄足で終わってしまい、散々迷惑をかけたお詫びとして食事を奢っただけで…っ」
と最後まで言い切ることが出来なかった。突然櫻井に玄関の壁に身体を押しつけられたのだ。打ち付けられた背中の痛みで顔が苦悶に歪む。余りの衝撃で一瞬反応が遅れたがすぐ我に返り、逃れようとするが櫻井の漆黒の瞳に射抜かれた瞬間、身体に力が入らなくなる。
「な、何ですか離して」
「新條と寝たの」
「っ!!」
とんでもなく飛躍した問いかけに一瞬にして顔の温度が上がるのが分かった。
「は、はい?突然何を」
「いや、2人であちこち飛び回るくらい仲良くなったならやることやったのかと思って?新條のことやけに褒めてたし。紳士的だとか格好いいとか」
「…確かにそういうニュアンスのことは言いましたけど社交辞令の一種ですよ、それより冗談でもそういうこと言わないでください、新條先生に失礼…」
「…!あいつの名前は聞きたくない!」
「っ…!」
唸るように櫻井が叫んだと思ったら突然唇を塞がれる。噛みつくような荒々しいキスに身体は驚きのあまり強張り反射的に目を瞑る。そしてどうにかキスから逃れようと顔を左右に振るが、そんなささやかな抵抗は意味をなさない。寧ろ逃げようとした罰だとでも言わんばかりにキスは更に激しくなり、身体の力は抜けされるがまま貪られる。初めてでこんな強引なキスを繰り返されている静香の頭の中には、碌な思考力が残っていない。
(なんで…)
薄ぼんやりとした思考の中で辛うじて残っていたのはこの状況への疑問だ。何故自分は櫻井颯真にこんなことをされているのか、仕事仲間には手を出さない、年下の自分に手を出すほど女に困っていないと笑い飛ばしていたはずなのに。
「ぁ…っ」
執拗なキスの嵐の中、上手く呼吸が出来なくて鼻から自分の物とは思えない甘ったるい声が漏れ出て顔だけでなく全身がカッと熱くなる。どうにか空気を得ようと僅かに開けた口の隙間からの舌が強引にねじ込まれる。ただでさえ熱くなった静香の口腔内に押し入ってきた熱い舌は、好き勝手に中を蹂躙し始めた。
頬の内側、上顎、喉の奥、歯に至るまで静香の口腔内で知らない場所はもうないというほど念入りに。櫻井の熱い舌が静香の舌に絡み、ぐちゅぐちゅと互いの唾液が混ざり合う隠微な音が漏れた。唾液はどちらの物か分からないくらい溢れて来て、静香が呑み込み切れない唾液がだらしなく口に端から溢れる。そこでようやく唇を話した櫻井は何を考えたのか静香の口から垂れた唾液をじゅ、と音を立てて吸う。そのまま首筋まで唇を這わせると
「っ痛っ…!」
血が出るのではというくらい強い力で皮膚を吸い上げられ、痛みの余り声を上げてしまう。自分の首筋に顔を埋める櫻井と目が合った。彼の目はギラギラと光り顏は恐ろしいくらいの色香に溢れていて背筋がゾクリとした。乱れた息を必死で整える静香を櫻井はじっと見下ろす。
「あはは、えっろい顔。好きでもない男に無理やりキスされて興奮してる?」
「ち、ちが」
「違わない、自分の顏鏡で見てみなよ。もっとして欲しいって強請るいやらしい顏してるから」
明らかに静香を貶めようとする意志を感じ、弱々しい声で否定するも冷たい声で遮られる。出会った当初は素っ気ない態度を取られたが、それらとは比べ物にならない程程櫻井の口から発せられた言葉には一切の温度を感じられなかった。それなりの信頼を得られつつあったと自負していた静香は、自分の言い分を全く聞いてくれない櫻井への悲しみで胸が痛んだ。
「新條にもその顔見せたの」
「っ!新條先生とは何も…あっ…!」
静香の左手首を戒めていた櫻井の右手が外される。しかし、その手はいきなり静香の豊かな双丘の片方をギュッと掴む。そのまま乳房を揉み上げると、ブラウスと下着の上からでも分かるように主張し始めていた頂をぐり、と押しつぶされ、全身に言葉に出来ない感覚が走る。櫻井は指で頂を擦りながら嗜虐的に笑う。
「もうこんなに堅くなってる、…このままじゃ可哀想だから楽にしてあげる」
すると櫻井は器用に空いている左手だけでブラウスのボタンを外し強引に胸元をはだけさせると、付けていた下着もずらす。大きな胸が麿微出て外気に触れると今度は両手で頂を弄り始め、頂から生まれる甘い疼きに身をよじるしか出来なくなる。
「ピンって立ってるね…玄関先で襲われてるのに感じてるんだ、清楚な顔して淫乱だな」
「い、っ…辞めて…」
辞めて欲しいのに口から漏れる声は酷く甘ったるい。本当に嫌なのに心とは裏腹に身体は感じてしまっていた。
「そんな顔して言っても説得力ないよ…強情な子にはこうしないと」
目を細めた櫻井は静香の胸の谷間に顔を埋めると、すっかり立ち上がった頂を口に含み舌先で弄び始める。自分の胸の頂を端正な男が吸い上げているといういやらしい光景が視覚情報として直接脳に伝わり、静香は自らの足を切なげに擦る付けるのを辞められない。かぷっと頂を歯で噛まれると腰がどうしようもなく疼いた。片方の胸は相変わらず指でコリコリと弄られ、両方の胸に与えられる快楽に静香は嬌声を抑えられない。
「あっ…い…んん…!!」
はしたない声を上げる静香に何故か櫻井は苦し気に眉を顰める。
「っ…自分の身体好き勝手弄ってる男にそんなよがった声聞かせちゃ駄目でしょ…あーあだらしなく口開けちゃって」
頂から口を離し触れるか触れないかの距離で蔑むような言葉を吐かれ、静香の身体の奥からどろりと熱いものが垂れてくる感覚がした。自分は蔑まれて喜ぶ趣味はなかったはずなのに、さっきから淫乱と蔑まれ乳首を舌と指で愛撫されている今の状況を気持ちいいと感じてしまっている自分を受け入れられない。
「どう、認める気になった?」
顔を埋めたまま上目遣いで訊ねてくる。さっきから櫻井は静香が新條と関係を持ったと決めつけ、それに怒っている。そんな事実は当然ないのだが櫻井は聞く耳を持とうとはしない。嘘でもやった、と言えば辞めてくれるのだろうか、一縷の望みに掛けるべきか。だが、やってもいないことを相手に屈して、「やった」というのは静香の教示に反するし、迷惑をかけた新條をこれ以上巻き込むわけには。絶対認めるわけにはいかず、快楽でボーっとした表情で櫻井を見る。
「やってない…ものはやってません…」
呂律の周り切ってない声で、それでも言い切った静香に思おうところがあったのか胸から顔を上げ、息を整えながら見下ろす。
「…本当に何もなかったんだ」
自分に言い聞かせるように呟いた櫻井を見て静香は、やっと分かってもらえた、これでこの責め苦から解放されると歓喜した。しかし、胸から離れていた右手が下半身に向かってゆっくりと這われる。解放されると思ってた静香は「え…」と困惑の声を上げるが、そんな声は無視し、太ももまでたどり着いた左手がそのままスカートの中に入り込んできた。そしてそのまま足の付け根…すっかり濡れて下着の役割を果たしていない布に櫻井の指が辿り着く。
「でも、もう辞めないから…俺見てたんだよね、新條と喫茶店で喋ってるの。担当でもないのにあんなに楽しそうにしてさぁ、こっちの気も知らないで…」
怒りを内包した声で呻いた櫻井は、容赦なくクロッチを横にずらし指を入れるとくちゅり、という聞こえるはずのない水音が響く。快楽で呆けていた頭があまりの恥ずかしさで一気に覚醒する。
「…もう濡れてる…胸弄られてそんなに感じた?」
恍惚とした声で呟くと、櫻井は感情の読めない瞳で静香を見下ろしながら、下着を一気に引き摺り落とし、しとどに濡れたそこをわざとぐちゅぐちゅと音が出るように指を出し入れする。溢れ出した蜜を指の腹で掬い上げるとひだを何度も往復し、なぞった。容赦なく秘所を弄る櫻井の指がやがて敏感な突起を探り出されると静香は「ひゃっ…んん…」と背筋を伸ばし、あられもない声を上げてしまう。
「ここ?…こんなに濡れてれば入りそうだけど一回イっとこうか」
フッ、と小さく笑うと櫻井は指の動きを一層速くする。隠されていた突起を指の表面で擦ったかと思えばギュッと押しつぶしたりして、刺激をどんどん与える。感じたことのない未知の快感に静香は立っていられなくなり、膝がガクガクと震える。すると蜜口を弄ってない方の腕でぐったりしつつある静香の身体を支えてくれる。こんな無理矢理身体を開こうとしてるくせに背中に回された腕が酷く優しくて、静香は戸惑う。
(なんで…)
が、背中に回されていた腕に向かっていた意識は直ぐ下腹部に戻された。まだ足りないのか更に静香を追い詰めようと突起を弄る指の動きは激しさを増す。
「っ!駄目っ…」
「駄目じゃないでしょ、こんなに溢れて止まらないのに」
櫻井が突起を弄るたびにぐちゅぐちゅと鳴る水音がドンドン酷くなる。今まで散々身体に与えられ続けていた快楽がコップの縁から溢れてしまいそうだ。口を手で覆い必死で声を抑えようとするが、体を壁に寄りかからせ空いた左手で無理矢理静香の手を引きはがす。耳元に櫻井が顔を近づける。
「ほら、イって」
「っっっ…!」
その瞬間目の前が真っ白になり、何かが爆ぜた。背中が弓なりになり、全身から快感が走りぬけ、膣内がひくひくと痙攣する。せりあがる快感で喉の奥から今までの比じゃない、とんでもない声が上がりそうになるのが怖くて、唇を強く噛んで声を抑え込んだ。唇からは血が出ており、舐めると鉄の味がする。
静香が声を吞み込んだことが不服なようで櫻井はムッとするが、殆どグロスの取れた唇から血が滲んでいるのに気づき、まるで傷ついたような顔を見せる。するとただでさえ近かった彼の顔が目の前まで迫り。
「っ!」
また唇を塞がれた。が、先ほどの息も出来ない程激しいものではなく、優しく唇を撫でるような仕草で。唇が離れる直前、ペロっと丁度血の出てる箇所を舐められ肩が微かに震えた。まるで傷を消毒しているようだと、脳が錯覚する。
「やっぱり血が出てる…唇噛むなよ、痛いだろ」
何故か彼は苛立っていた。言葉遣いもやや乱暴だ。もしかして、静香が唇とはいえ傷をつけるのが嫌なのか。強引なことをしているくせに変なところで優しくされるのは、わけがわからず困惑する。訝しげに櫻井をジロリと睨み付けると、彼は顔をしかめた。静香の反応が気に入らないらしく、意趣返しのようにやや性急に彼の長い指がぷつりと膣内に差し込まれる。狭い膣内は櫻井の指の侵入を拒むかのようにきつく締めあげた。すると急に指を抜き、溢れ出た蜜でテラテラと光る己の指を見せつけてくる。
「ほらちゃんと見なよ、これが君から出て来たもの」
蜜の付いた指を舐める櫻井の顔は酷く扇情的で、恥ずかしくて仕方ないのに、目を逸らすことが出来ない。そんな静香の反応に櫻井は薄く笑うと再び足の隙間に手を入り込ませ、溢れ出る蜜を己の指に絡ませながら奥へと進ませる。酷い異物感が自分の中に侵入する感覚に身をよじった。慣れることのない未知の感覚をうまく外に逃がすことが出来ず、結局体内で燻ぶり続ける。
「…何でそんな顔してるの」
(そんな顔…)
どんな顔だ、自分の顔は見れないのだから分かるわけない。
「こんなことされてるのに、気持ちよさそうにしてる」
そんなわけない、と咄嗟に反論しようとするが唇を噛んで辞めた。認めたくない、認めるのは癪だが…正直気持ちいいと感じてしまっているのは紛れもない事実。自分にそういう嗜好があったことに愕然とした。思ったことを口にすれば変態と言われるのが想像が付く。大して高くないプライドしか持ち合わせていなくても、それだけは嫌だった。だから吐き捨てるように告げた。
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