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で、案 の 定
おしゃれなレストランだけあって、お値段もおしゃれなわけで…
メニュー表を見て、ちょっぴり考えてしまった。
「…やっぱり、他のお店にしよっか…?」
「バカ、気にするな。
好きなもん選べよ」
「うん…」
だいたいどのお料理も2000円以上で、お料理の名前より殆どお値段の方を見ながら決めてしまっていた。
結局、一番安くてそれなりのお料理って事で、日替わりランチを2つ頼んだ。
「お前は好きなもん頼めば良かったのに」
「ううん。
初めてのお店だから、逆にこんなのが良かったんだよ」
「ならいいけどよ」
注文をした後、私はその間にトイレを借りる事にした。
花の金曜日である今日。
とは言え、まだお昼なのもあって平日はお客さんもそんなに多くはない。
だけど、白いクロスのかかったテーブルを囲って座っているお客さんはみんなカップルばかりだ。
まぁ学生やファミリーで来るような所じゃないかもね。
私はそんな人たちの横を通りながらトイレに向かった。
左右にテーブルの並ぶ一本道の突き当たりを出口とは逆の左側に曲がった先にあると表示されているトイレ。
ドアを開けると、更にその先に男女別に分かれているドアがある。
私はその女性用の方へ入ろうとした時、男性用のドアから人が出てきたので壁に避けるように身を寄せた。
「あ、すみません…」
だけどもその男性は私の側を通り過ぎず、いつまでも私の前で立ち止まっている。
「あの…?」
何だろう。
そう思って、顔を上げてその男性を見てみた。
「…優…」
「え…?」
このレストランにも相応しいおしゃれなスーツに美形な容姿。
長めの明るい茶髪に、この狭い空間に香る甘い香水。
あれ以来、当然何の連絡もしてこなくなった高梨さんが、いま私の目の前にいた。
「た、高梨 さん…っ」
「…偶然だね。
まさかこんな所で会えるなんて思わなかったよ」
相変わらずの柔らかい笑み。
女の子なら誰しもがドキンとしちゃうんじゃないかと思うくらい、高梨さんの笑顔は優しくてキレイ。
だけどあんな事があって以来なのもあって、私的にはちょっぴり気まずいというか何て言うか…。
「優も、ランチに来たんだ。
…彼氏と一緒?」
「はい…。
高梨さんもですか?」
「や、うん…」
誰か他のお客さんでも通りかかれば、じゃあねって通り過ぎる事もできたんだけど…。
一度立ち止まった足が、この時私はなかなか動かせずにいたの。
「………………っ」
別に話す事があるわけじゃない。
縁談に断りを入れられたんだもの、出来ればもう顔を合わせるのもツラいって言うか…。
「…なんか、良い顔してるね」
「え…っ」
急にそんな風に言われてちょっと驚いた。
どぎまぎしてるわけだから、決して良い顔ってわけじゃないハズなんだけど…?
「幸せなんだろうね。
彼氏にあんなに愛されて。
お腹の子も、産むんだろ?」
「…はい。
今日、病院に行ってきました。
…8週目みたいです」
「そうなんだ。
おめでとう」
もしかしたら、あの病院には高梨さんと赤ちゃんをおろしに行ってた可能性もあったかと思うと…高梨さんにおめでとうなんて言われるのは何だか複雑な気持ちだ…。
おしゃれなレストランだけあって、お値段もおしゃれなわけで…
メニュー表を見て、ちょっぴり考えてしまった。
「…やっぱり、他のお店にしよっか…?」
「バカ、気にするな。
好きなもん選べよ」
「うん…」
だいたいどのお料理も2000円以上で、お料理の名前より殆どお値段の方を見ながら決めてしまっていた。
結局、一番安くてそれなりのお料理って事で、日替わりランチを2つ頼んだ。
「お前は好きなもん頼めば良かったのに」
「ううん。
初めてのお店だから、逆にこんなのが良かったんだよ」
「ならいいけどよ」
注文をした後、私はその間にトイレを借りる事にした。
花の金曜日である今日。
とは言え、まだお昼なのもあって平日はお客さんもそんなに多くはない。
だけど、白いクロスのかかったテーブルを囲って座っているお客さんはみんなカップルばかりだ。
まぁ学生やファミリーで来るような所じゃないかもね。
私はそんな人たちの横を通りながらトイレに向かった。
左右にテーブルの並ぶ一本道の突き当たりを出口とは逆の左側に曲がった先にあると表示されているトイレ。
ドアを開けると、更にその先に男女別に分かれているドアがある。
私はその女性用の方へ入ろうとした時、男性用のドアから人が出てきたので壁に避けるように身を寄せた。
「あ、すみません…」
だけどもその男性は私の側を通り過ぎず、いつまでも私の前で立ち止まっている。
「あの…?」
何だろう。
そう思って、顔を上げてその男性を見てみた。
「…優…」
「え…?」
このレストランにも相応しいおしゃれなスーツに美形な容姿。
長めの明るい茶髪に、この狭い空間に香る甘い香水。
あれ以来、当然何の連絡もしてこなくなった高梨さんが、いま私の目の前にいた。
「た、高梨 さん…っ」
「…偶然だね。
まさかこんな所で会えるなんて思わなかったよ」
相変わらずの柔らかい笑み。
女の子なら誰しもがドキンとしちゃうんじゃないかと思うくらい、高梨さんの笑顔は優しくてキレイ。
だけどあんな事があって以来なのもあって、私的にはちょっぴり気まずいというか何て言うか…。
「優も、ランチに来たんだ。
…彼氏と一緒?」
「はい…。
高梨さんもですか?」
「や、うん…」
誰か他のお客さんでも通りかかれば、じゃあねって通り過ぎる事もできたんだけど…。
一度立ち止まった足が、この時私はなかなか動かせずにいたの。
「………………っ」
別に話す事があるわけじゃない。
縁談に断りを入れられたんだもの、出来ればもう顔を合わせるのもツラいって言うか…。
「…なんか、良い顔してるね」
「え…っ」
急にそんな風に言われてちょっと驚いた。
どぎまぎしてるわけだから、決して良い顔ってわけじゃないハズなんだけど…?
「幸せなんだろうね。
彼氏にあんなに愛されて。
お腹の子も、産むんだろ?」
「…はい。
今日、病院に行ってきました。
…8週目みたいです」
「そうなんだ。
おめでとう」
もしかしたら、あの病院には高梨さんと赤ちゃんをおろしに行ってた可能性もあったかと思うと…高梨さんにおめでとうなんて言われるのは何だか複雑な気持ちだ…。
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