61 / 76
②
しおりを挟む
お母さんが来たのが勇さんのいない時間帯でよかった…と言うべきかな。
だっていきなりここに来ちゃうなんて思わなかったんよぉ!
私が玄関のドアを閉めて内カギを閉めている時、お母さんは既に靴をぬいでズカズカと中にあがっていった。
あぁん、もぉっ
自分の娘の部屋だからって勝手にあがって行っちゃうんだからっ!
買い物してきた荷物をキッチンの隅に置くと、とりあえず冷蔵物だけはしまって、お母さんにお茶を入れてあげた。
…どうせ高梨さんとの事をクドクドお説教しに来たんだわ。
考え直して、頭下げてでも仲直りしなさいとか言うに違いないわよ。
だけど、そんな事言ったって高梨さんとの関係はもう終わっちゃったんだからねっ
コンロで沸かしたお湯を小さなケトルに注ぎお茶をたてると、湯呑みにつぐ。
それをお盆に乗せると、お母さんのいるダイニングのテーブルに持って行った。
「なぁにあんた。
転職するつもり?」
「え?
お母さんったら何言って……
あっ、もぉ何してんのよ!」
おとなしくしてるって事ないのかしらっ
お母さんは私がお茶を用意してる間に、リビングの壁側に置いていた勇さんの求人情報の書類を勝手に見ていたのだ。
「あの書店、辞めたの?
だったらいい機会だわ。そのまま家に帰って来なさい。
…今、陸もアテにならなくなってきたし…」
「え、陸がどうかしたの?」
陸は今他県の専門学校に行ってる私の弟。
1年目を終了し春休みだってのに、実家にも帰らないでいるみたい。
そして常日頃から、陸を我が家の跡継ぎ跡継ぎ言ってるお母さんなんだけど。イマドキ跡継ぎなんて言葉言う?
2人分の湯呑みをテーブルに置くと、私はお盆を膝に抱えてお母さんと向かいになるように座った。
「陸、何かあったの?
まさか学校辞めちゃうとか?」
「違うわよ!
学校はいいんだけど、あの子ったら向こうで彼女を作ったらしいのよ」
…いいじゃない、そんな事別に。
お母さんったらいちいち敏感になって文句ばっかり言うのよね。
「その彼女ってのが、どうやら1人娘でね。
だから将来、陸を婿養子にしたいって言ってるみたいなのよ」
…ははあ。
あっちはあっちで跡取り問題でもめてるんだ。
確かに恋愛や結婚って、当人同士だけの気持ちじゃすまないもの。
どうしてもお互いの親が介入し、それが原因でうまくいかないとか…ありそうだもんね。
「…ま、今はそんな話はいいのよ。
そんな事より、あんた高梨さんに一体何を言ったのっ」
ズズッと私の入れたお茶を一口飲んだお母さんは、今度はキッと私を睨みながら言った。
それを聞いて、高梨さんって言葉にドキッとする。
やっぱり、お母さんはその話をしに来たんだよね。
「何言ったって…」
「高梨さん、今回の縁談に身を引かれたのよっ」
「えっ
身を…引かれた?」
またお母さんに上手い事を言って、勝手に話を進めたとかそんなんじゃないんだ。
あるいは、慰謝料とか…って請求してくるかとも思ってた。
だって付き合う気もないのにお見合いしたんだもんね。
「あんなにうまくいってたのに…こんな良い話をパァにしてあんたはっ
どういうつもりなのよ!」
…いよいよ、話す時が来たのかな。
いつかは話さなきゃならない事。
まずは…勇さんを知ってもらわなきゃだ!
だっていきなりここに来ちゃうなんて思わなかったんよぉ!
私が玄関のドアを閉めて内カギを閉めている時、お母さんは既に靴をぬいでズカズカと中にあがっていった。
あぁん、もぉっ
自分の娘の部屋だからって勝手にあがって行っちゃうんだからっ!
買い物してきた荷物をキッチンの隅に置くと、とりあえず冷蔵物だけはしまって、お母さんにお茶を入れてあげた。
…どうせ高梨さんとの事をクドクドお説教しに来たんだわ。
考え直して、頭下げてでも仲直りしなさいとか言うに違いないわよ。
だけど、そんな事言ったって高梨さんとの関係はもう終わっちゃったんだからねっ
コンロで沸かしたお湯を小さなケトルに注ぎお茶をたてると、湯呑みにつぐ。
それをお盆に乗せると、お母さんのいるダイニングのテーブルに持って行った。
「なぁにあんた。
転職するつもり?」
「え?
お母さんったら何言って……
あっ、もぉ何してんのよ!」
おとなしくしてるって事ないのかしらっ
お母さんは私がお茶を用意してる間に、リビングの壁側に置いていた勇さんの求人情報の書類を勝手に見ていたのだ。
「あの書店、辞めたの?
だったらいい機会だわ。そのまま家に帰って来なさい。
…今、陸もアテにならなくなってきたし…」
「え、陸がどうかしたの?」
陸は今他県の専門学校に行ってる私の弟。
1年目を終了し春休みだってのに、実家にも帰らないでいるみたい。
そして常日頃から、陸を我が家の跡継ぎ跡継ぎ言ってるお母さんなんだけど。イマドキ跡継ぎなんて言葉言う?
2人分の湯呑みをテーブルに置くと、私はお盆を膝に抱えてお母さんと向かいになるように座った。
「陸、何かあったの?
まさか学校辞めちゃうとか?」
「違うわよ!
学校はいいんだけど、あの子ったら向こうで彼女を作ったらしいのよ」
…いいじゃない、そんな事別に。
お母さんったらいちいち敏感になって文句ばっかり言うのよね。
「その彼女ってのが、どうやら1人娘でね。
だから将来、陸を婿養子にしたいって言ってるみたいなのよ」
…ははあ。
あっちはあっちで跡取り問題でもめてるんだ。
確かに恋愛や結婚って、当人同士だけの気持ちじゃすまないもの。
どうしてもお互いの親が介入し、それが原因でうまくいかないとか…ありそうだもんね。
「…ま、今はそんな話はいいのよ。
そんな事より、あんた高梨さんに一体何を言ったのっ」
ズズッと私の入れたお茶を一口飲んだお母さんは、今度はキッと私を睨みながら言った。
それを聞いて、高梨さんって言葉にドキッとする。
やっぱり、お母さんはその話をしに来たんだよね。
「何言ったって…」
「高梨さん、今回の縁談に身を引かれたのよっ」
「えっ
身を…引かれた?」
またお母さんに上手い事を言って、勝手に話を進めたとかそんなんじゃないんだ。
あるいは、慰謝料とか…って請求してくるかとも思ってた。
だって付き合う気もないのにお見合いしたんだもんね。
「あんなにうまくいってたのに…こんな良い話をパァにしてあんたはっ
どういうつもりなのよ!」
…いよいよ、話す時が来たのかな。
いつかは話さなきゃならない事。
まずは…勇さんを知ってもらわなきゃだ!
0
お気に入りに追加
70
あなたにおすすめの小説
ひな*恋 〜童顔ひな子の年の差恋愛(ノベル版)
むらさ樹
恋愛
端から見れば、普通の高校生カップルかもね
「ひな、何食う?」
「あ、ゲーセン寄ってかね?」
もうすっかり忘れていた若い頃の遊び方
「うち来なよ。
しばらく親、帰って来ねーから」
「初めて?
じゃ、バージンもらい!」
その年の差
12歳
もっと遅くに生まれてればよかったって思った
…ううん
せめて年相応の姿ならば、諦める事ができたのかもしれないね
*******
「…よかったら、途中まで送らせてもらえませんか。
今度は、個人的な理由かもしれませんが…」
「かわいい人だなって、思って見てました。
僕も…男ですから」
お互い結婚適齢期を過ぎちゃってるかな
童顔な私を子ども扱いせず、オンナとして見てくれる
「ずっと、ずっと僕があなたを守っていきます。
だから…ずっと、ずっと僕の側にいて下さい」
その年の差
9歳
─W 年の差 恋愛─
私も真剣に考えなきゃならない
結婚
だけど…っ
「俺、ひなとずっと一緒にいたい」
ダメ
ダメなの
私はキミとはつり合わない
見た目はキミのようにヒナだけど
心はキミ以上にオトナなの!
「好きだよ、ひな。
俺やっぱ、ひながいい」
好きになっちゃ、ダメ
だって私は
キミの母親になろうとしているのよ…!
※既出漫画コンテンツ、ひな*恋のノベルバージョンです!
むしろこちらが原作で、そこから漫画をアップしました。もしよかったら、どちらもドゾー!
もつれた心、ほどいてあげる~カリスマ美容師御曹司の甘美な溺愛レッスン~
泉南佳那
恋愛
イケメンカリスマ美容師と内気で地味な書店員との、甘々溺愛ストーリーです!
どうぞお楽しみいただけますように。
〈あらすじ〉
加藤優紀は、現在、25歳の書店員。
東京の中心部ながら、昭和味たっぷりの裏町に位置する「高木書店」という名の本屋を、祖母とふたりで切り盛りしている。
彼女が高木書店で働きはじめたのは、3年ほど前から。
短大卒業後、不動産会社で営業事務をしていたが、同期の、親会社の重役令嬢からいじめに近い嫌がらせを受け、逃げるように会社を辞めた過去があった。
そのことは優紀の心に小さいながらも深い傷をつけた。
人付き合いを恐れるようになった優紀は、それ以来、つぶれかけの本屋で人の目につかない質素な生活に安んじていた。
一方、高木書店の目と鼻の先に、優紀の兄の幼なじみで、大企業の社長令息にしてカリスマ美容師の香坂玲伊が〈リインカネーション〉という総合ビューティーサロンを経営していた。
玲伊は優紀より4歳年上の29歳。
優紀も、兄とともに玲伊と一緒に遊んだ幼なじみであった。
店が近いこともあり、玲伊はしょっちゅう、優紀の本屋に顔を出していた。
子供のころから、かっこよくて優しかった玲伊は、優紀の初恋の人。
その気持ちは今もまったく変わっていなかったが、しがない書店員の自分が、カリスマ美容師にして御曹司の彼に釣り合うはずがないと、その恋心に蓋をしていた。
そんなある日、優紀は玲伊に「自分の店に来て」言われる。
優紀が〈リインカネーション〉を訪れると、人気のファッション誌『KALEN』の編集者が待っていた。
そして「シンデレラ・プロジェクト」のモデルをしてほしいと依頼される。
「シンデレラ・プロジェクト」とは、玲伊の店の1周年記念の企画で、〈リインカネーション〉のすべての施設を使い、2~3カ月でモデルの女性を美しく変身させ、それを雑誌の連載記事として掲載するというもの。
優紀は固辞したが、玲伊の熱心な誘いに負け、最終的に引き受けることとなる。
はじめての経験に戸惑いながらも、超一流の施術に心が満たされていく優紀。
そして、玲伊への恋心はいっそう募ってゆく。
玲伊はとても優しいが、それは親友の妹だから。
そんな切ない気持ちを抱えていた。
プロジェクトがはじまり、ひと月が過ぎた。
書店の仕事と〈リインカネーション〉の施術という二重生活に慣れてきた矢先、大問題が発生する。
突然、編集部に上層部から横やりが入り、優紀は「シンデレラ・プロジェクト」のモデルを下ろされることになった。
残念に思いながらも、やはり夢でしかなかったのだとあきらめる優紀だったが、そんなとき、玲伊から呼び出しを受けて……
ウブな政略妻は、ケダモノ御曹司の執愛に堕とされる
Adria
恋愛
旧題:紳士だと思っていた初恋の人は私への恋心を拗らせた執着系ドSなケダモノでした
ある日、父から持ちかけられた政略結婚の相手は、学生時代からずっと好きだった初恋の人だった。
でも彼は来る縁談の全てを断っている。初恋を実らせたい私は副社長である彼の秘書として働くことを決めた。けれど、何の進展もない日々が過ぎていく。だが、ある日会社に忘れ物をして、それを取りに会社に戻ったことから私たちの関係は急速に変わっていった。
彼を知れば知るほどに、彼が私への恋心を拗らせていることを知って戸惑う反面嬉しさもあり、私への執着を隠さない彼のペースに翻弄されていく……。
再会したスパダリ社長は強引なプロポーズで私を離す気はないようです
星空永遠
恋愛
6年前、ホームレスだった藤堂樹と出会い、一緒に暮らしていた。しかし、ある日突然、藤堂は桜井千夏の前から姿を消した。それから6年ぶりに再会した藤堂は藤堂ブランド化粧品の社長になっていた!?結婚を前提に交際した二人は45階建てのタマワン最上階で再び同棲を始める。千夏が知らない世界を藤堂は教え、藤堂のスパダリ加減に沼っていく千夏。藤堂は千夏が好きすぎる故に溺愛を超える執着愛で毎日のように愛を囁き続けた。
2024年4月21日 公開
2024年4月21日 完結
☆ベリーズカフェ、魔法のiらんどにて同作品掲載中。
強引な初彼と10年ぶりの再会
矢簑芽衣
恋愛
葛城ほのかは、高校生の時に初めて付き合った彼氏・高坂玲からキスをされて逃げ出した過去がある。高坂とはそれっきりになってしまい、以来誰とも付き合うことなくほのかは26歳になっていた。そんなある日、ほのかの職場に高坂がやって来る。10年ぶりに再会する2人。高坂はほのかを翻弄していく……。
【完結】溺愛予告~御曹司の告白躱します~
蓮美ちま
恋愛
モテる彼氏はいらない。
嫉妬に身を焦がす恋愛はこりごり。
だから、仲の良い同期のままでいたい。
そう思っているのに。
今までと違う甘い視線で見つめられて、
“女”扱いしてるって私に気付かせようとしてる気がする。
全部ぜんぶ、勘違いだったらいいのに。
「勘違いじゃないから」
告白したい御曹司と
告白されたくない小ボケ女子
ラブバトル開始
【完結】俺様御曹司の隠された溺愛野望 〜花嫁は蜜愛から逃れられない〜
雪井しい
恋愛
「こはる、俺の妻になれ」その日、大女優を母に持つ2世女優の花宮こはるは自分の所属していた劇団の解散に絶望していた。そんなこはるに救いの手を差し伸べたのは年上の幼馴染で大企業の御曹司、月ノ島玲二だった。けれど代わりに妻になることを強要してきて──。花嫁となったこはるに対し、俺様な玲二は独占欲を露わにし始める。
【幼馴染の俺様御曹司×大物女優を母に持つ2世女優】
☆☆☆ベリーズカフェで日間4位いただきました☆☆☆
※ベリーズカフェでも掲載中
※推敲、校正前のものです。ご注意下さい
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる