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仕事を終えて、いつものルートでアパートに帰った。



勇さんの機嫌が気になって、ちょっぴりビクビクしながら玄関のドアを開ける。


「た、ただいまぁ…」


玄関に靴はある。
返事はなかったけど、中にいるのは間違いない。

いつもならすぐに出迎えてくれるのに、それもないなんて。

やっぱりまだ朝の事、怒ってんのかなぁ。



おそるおそるリビングの方へと歩いていくと、そこにはテーブルに幾つかの書類を並べた勇さんが座っていた。



「あの、ただいま…」


一応もう一度だけ声をかけると、どうやら勇さんは今ようやく私に気付いたようだった。


「おぉ、お帰り」

「何してたの?」


朝の事はあんまり気にしてない様子だったのでホッとして私は勇さんの側に座った。

テーブルの上に置かれている幾つかの書類。
よく見てみると、それは求人だった。

職安とかから取り寄せたらしいものから、無料配布されている求人誌まである。


仕事増やすって言ってたけど、本気で考えていたんだ…。

収入の事を気にしていたけど、それはやっぱり私との結婚を意識してくれているからなんだよね。



「結構探したんだけど、なかなか条件の揃う仕事が少なくってな」


「ん…まぁ、ぼちぼちでいいよ」


仕事なんて増やさなくていいよ、とは言えなかった。

だんだんとお金のかかる事は増えていくんだもんね…。




__それはそうと

「…ね、勇さ…」

「優、今朝はごめんな」


「え…」


今から言おうとした事を、勇さんに先に言われてしまった。

「なんか…まるで優の身体にがっついてる自分が情けなくなってな…。
いくつになっても、男は男だからさ。ちょっとくらい羽目外したい時もあるんだよ」


「…うん、大丈夫だよ」


「だけどな、こんな事をしたいって思うのは優、お前だけだからな…」


そう言って、側に座る私の手を握ってくれた。
なのに照れ隠しなのか顔は私じゃあなく、よそを向いている。


でも…スゴく、嬉しい。
私、今が一番幸せかもしれないな。


もっと幸せな事ができたハズなのに、まわりの反応が怖くて安心して幸せを感じる事ができないけどね。



「勇さん。
ご飯食べてお風呂入ったら、今夜は抱いてほしいな」


「は?
…無理しなくていいんだぞ。
したくない時は別に…」


「無理なんかしてないよ。
勇さんに抱かれたくなったの。
優しく、優しく…ね」


「……………バカ」


朝すれ違った心がまた寄り添っていくように、私と勇さんは唇を重ねた。


私…やっぱり今が一番幸せだぁ。
だけどこっちの幸せは…どうしたらいいのかな…。


甘い甘い雰囲気に、せっかく告白できるチャンスでもあったハズなのに。


高梨さんに答えを言わないといけない前日の今日もまた、勇さんには赤ちゃんの事は言えずじまいになってしまった…。



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