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今度は常盤さんと一緒にお昼休みに入った。
休憩室の使い方なんかを簡単に説明して、お昼ご飯のお弁当を広げる。
「わ。常盤さんのお弁当かわいいね。
自分で作ってるの?」
「いえ、あたしはお母さんに作ってもらってますー」
「いいね、お母さんが作ってくれるのって。
いろいろ甘えてるんでしょ」
私も今でこそ身の回りの事は全て1人でやっているけど、実家にいる時は何でもお母さんに任せてたとこあったなぁと思い返す。
お弁当だって、彩りもよくないけどお母さんに作ってもらってたし。
今の私がこうやっているのも、全部お母さんのおかげでもあるんだよね。
「……」
……ずっと電話にも出てないし、まるでケンカして絶交みたいになっちゃってるけど、やっぱりお母さんとは今まで通りの関係に戻りたいよ…。
いつもより少量であっさりしたお弁当を食べて少し休むと、今度は現場に戻り和泉さんや店長さんとお昼休みを交代した。
それからもお客さんの対応に追われたりしたら16時になり、和泉さんとはロクに話せないまま和泉さんと常盤さんは仕事からあがってしまった。
お店は忙しいし、新人さんの指導もしてたらなかなか世間話も出来ないよ。
明日こそは和泉さんと話せるかなぁ。
__なんて思ってはみたものの、翌日の日曜日だって事態は土曜日の時と殆ど変わらず、唯一相談出来そうな和泉さんとは結局話せないままになってしまったのだ。
「ただいまぁ」
仕事帰りの買い物も済ませてアパートに帰ると、今日がお休みである勇さんが玄関まで出迎えてくれる。
「お帰り、お疲れ」
「すぐご飯作るね」
「あぁ、悪いな」
買ってきた食材を冷蔵庫にしまいながら、今から使う材料を取り出した。
「…!」
すると、キッチンからフワッと独特な蒸気が鼻を抜けた気がした。
…これ、ご飯が炊けるニオイだ!
それに反応したように、急に胃が気持ち悪くなってきた。
いけない。
勇さんの前でつわりを見せるわけには…。
私はショルダーバッグから口を覆う為にハンカチを出そうとした。
すると、ずっとバッグの中に入れていた勇さんへのプレゼントのライターがハンカチと一緒に出て、ポロッと床に落ちてしまった。
「あっ」
パタッと音を立てて落ちたライターの入った包みに、それは近くにいた勇さんも気付いたみたいだった。
「何だ?それ」
私の足元に転がり落ちたプレゼントに、勇さんは手を伸ばした。
あ…どうしようかな。
結局プレゼントしようかしない方がいいか迷ったままなんだよね。
勇さんは私が高梨さんにプロポーズされた事なんて知らない。
だけど、そんな高梨さんが選んだライターなんて、勇さんが喜んで使ってくれるなんて思えない。
だからなかなか渡せなくて、ずっとバッグに入れてたんだけど…
「あ、それね。
それは、あの…勇さんにと思って…」
「俺に?」
手に取った包みをガサガサと広げた勇さん。
袋の中に手を入れてライターを取り出すと、パッと表情が開いた。
「へぇ、なかなか洒落たものじゃねぇか。
どうしたんだよ」
「ん…何か勇さんにプレゼントしたいなって思ってて、買っちゃった」
「そっか。
サンキューな、優」
…そうやって喜んでもらうつもりで買ったのに、今は何だか胸がズキンと痛んでしまった。
休憩室の使い方なんかを簡単に説明して、お昼ご飯のお弁当を広げる。
「わ。常盤さんのお弁当かわいいね。
自分で作ってるの?」
「いえ、あたしはお母さんに作ってもらってますー」
「いいね、お母さんが作ってくれるのって。
いろいろ甘えてるんでしょ」
私も今でこそ身の回りの事は全て1人でやっているけど、実家にいる時は何でもお母さんに任せてたとこあったなぁと思い返す。
お弁当だって、彩りもよくないけどお母さんに作ってもらってたし。
今の私がこうやっているのも、全部お母さんのおかげでもあるんだよね。
「……」
……ずっと電話にも出てないし、まるでケンカして絶交みたいになっちゃってるけど、やっぱりお母さんとは今まで通りの関係に戻りたいよ…。
いつもより少量であっさりしたお弁当を食べて少し休むと、今度は現場に戻り和泉さんや店長さんとお昼休みを交代した。
それからもお客さんの対応に追われたりしたら16時になり、和泉さんとはロクに話せないまま和泉さんと常盤さんは仕事からあがってしまった。
お店は忙しいし、新人さんの指導もしてたらなかなか世間話も出来ないよ。
明日こそは和泉さんと話せるかなぁ。
__なんて思ってはみたものの、翌日の日曜日だって事態は土曜日の時と殆ど変わらず、唯一相談出来そうな和泉さんとは結局話せないままになってしまったのだ。
「ただいまぁ」
仕事帰りの買い物も済ませてアパートに帰ると、今日がお休みである勇さんが玄関まで出迎えてくれる。
「お帰り、お疲れ」
「すぐご飯作るね」
「あぁ、悪いな」
買ってきた食材を冷蔵庫にしまいながら、今から使う材料を取り出した。
「…!」
すると、キッチンからフワッと独特な蒸気が鼻を抜けた気がした。
…これ、ご飯が炊けるニオイだ!
それに反応したように、急に胃が気持ち悪くなってきた。
いけない。
勇さんの前でつわりを見せるわけには…。
私はショルダーバッグから口を覆う為にハンカチを出そうとした。
すると、ずっとバッグの中に入れていた勇さんへのプレゼントのライターがハンカチと一緒に出て、ポロッと床に落ちてしまった。
「あっ」
パタッと音を立てて落ちたライターの入った包みに、それは近くにいた勇さんも気付いたみたいだった。
「何だ?それ」
私の足元に転がり落ちたプレゼントに、勇さんは手を伸ばした。
あ…どうしようかな。
結局プレゼントしようかしない方がいいか迷ったままなんだよね。
勇さんは私が高梨さんにプロポーズされた事なんて知らない。
だけど、そんな高梨さんが選んだライターなんて、勇さんが喜んで使ってくれるなんて思えない。
だからなかなか渡せなくて、ずっとバッグに入れてたんだけど…
「あ、それね。
それは、あの…勇さんにと思って…」
「俺に?」
手に取った包みをガサガサと広げた勇さん。
袋の中に手を入れてライターを取り出すと、パッと表情が開いた。
「へぇ、なかなか洒落たものじゃねぇか。
どうしたんだよ」
「ん…何か勇さんにプレゼントしたいなって思ってて、買っちゃった」
「そっか。
サンキューな、優」
…そうやって喜んでもらうつもりで買ったのに、今は何だか胸がズキンと痛んでしまった。
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