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日曜日は勇さんのお仕事がない日だから、買い物を済ませた私がアパートに戻ると必ず出迎えてくれるの。
「ただいま」
「おう、お疲れ」
「すぐにご飯作るね」
仕事帰りに寄ったスーパーで買ったものを冷蔵庫にしまうと、テキパキと家事をこなす。
毎日がこんなだったら良いのにな。
せめて私が日曜日休みだったら一日中一緒にいられるんだけど。
それから、週に一度だけの一緒の晩ご飯を食べ終わると、勇さんはリビングでテレビを見、私はご飯の後片付けをした。
日曜日の夜だけは朝までずっと一緒だから、ドキドキ楽しみだったんだけど…
今日はまだ身体を見せられないから、勇さんがその気にならないように、あまりベタベタも出来ない。
デートだってなかなか出来ない生活だから、この後はせめて一緒に映画のDVDでも見ながらのんびり過ごせたらいいな。
晩ご飯の後片付けが終わると、次は翌朝用の炊飯の準備をする。
お米を研いで水に浸し、タイマーを入れ…
その時、
…♪♪♪ ♪♪♪…
「…!」
私のケータイから着信音が流れてきた。
多分、いつも使っているショルダーバッグの中からだ。
「おい、鳴ってるぞ」
鳴り続けている私のケータイに、テレビを見ている勇さんも振り向いて私に言った。
………この電話、誰からだろう。
昼間、高梨さんからの着信があったのだ。
放っておいただけだもん、当然またかかってくる可能性は十分あるよね。
放置したままにする事は出来るけど、今は側に勇さんがいる。
鳴っているケータイに出ないなんて、絶対におかしいって思われるよね。
だけど勇さんの側で高梨さんと話をするなんて事、出来ないよ!
…どうしよう…!!
「こ こんな時間に…誰からだろう…」
ドキドキと心拍数が上がってくる。
高梨さんの事だ。
また会う約束をする為の電話だと思う。
誘いに乗る乗らないにしても、そんな会話を勇さんに聞かれたら誰からの電話なのかって思うよね。
勇さんには高梨さんの事はもちろん、お見合いの話に気付かないうちに、なかった事にしてしまおうと思ってる。
だから、今ここで高梨さんとお話するわけには…。
もたもたしているうちに電話も切れてしまえばいいのになと思いながら、手間取った振りをしてショルダーバッグからケータイを取り出した。
もう10コール以上は鳴ったと思うのに、結局電話は切れる事なく私の手に届いた。
勇さんはそんな私には気にせず、テレビを見ている。
そのまま私の声には気にしないで、ずっとテレビを見ててね…。
尚も鳴り続けるケータイを、ゆっくり見た。
そして画面に表示されている文字を見て、思わず安堵のため息をついた。
「…なんだぁ、お母さんからだよ…」
ホッとした私は通話ボタンを押すと、ケータイを耳にあてた。
「もしも…」
『優!何やってるのよ。
電話くらい早く出なさい!』
いつもの事なのだとわかっていても、お母さんのデカい声には耳がキーンとする。
だからもうちょっとその音量を下げて話してよね!
「…洗い物してたんだから、しょうがないでしょっ
なに?どうしたのよ」
『あっそう。
そんな事より聞いたわよ。
あんた、ご挨拶に行ったんですってね』
ご挨拶?
お母さんの言う事はいつも前置きがないから、何の話をしているのかがすぐにわからない。
あいさつをするような所なんて、何かあったっけ?
「お母さん、いきなりあいさつなんて言われてもわかんないよ。
何の話なの?」
『何言ってんのよっ
高梨さんとこのお母さんから電話があって聞いたのよ。
あんたの事、ずいぶん気に入ってくれたみたいじゃないの』
「……!!」
ご挨拶って、昨日の夜に初めて高梨さんの家に行った時のアレの事?
あいさつって言うか、あの時はそんなつもりもなかったし、あいさつって感じにもならなかったよっ
…何にしても…
いくら相手がお母さんでも、高梨さんの話は勇さんの側でしたくない…。
勇さんはまだテレビに集中してるみたいだけど、適当に切り上げて、お母さんとはまた今度話す事にしよう。
…縁談の話は、やっぱりダメだったよって…ね。
「ただいま」
「おう、お疲れ」
「すぐにご飯作るね」
仕事帰りに寄ったスーパーで買ったものを冷蔵庫にしまうと、テキパキと家事をこなす。
毎日がこんなだったら良いのにな。
せめて私が日曜日休みだったら一日中一緒にいられるんだけど。
それから、週に一度だけの一緒の晩ご飯を食べ終わると、勇さんはリビングでテレビを見、私はご飯の後片付けをした。
日曜日の夜だけは朝までずっと一緒だから、ドキドキ楽しみだったんだけど…
今日はまだ身体を見せられないから、勇さんがその気にならないように、あまりベタベタも出来ない。
デートだってなかなか出来ない生活だから、この後はせめて一緒に映画のDVDでも見ながらのんびり過ごせたらいいな。
晩ご飯の後片付けが終わると、次は翌朝用の炊飯の準備をする。
お米を研いで水に浸し、タイマーを入れ…
その時、
…♪♪♪ ♪♪♪…
「…!」
私のケータイから着信音が流れてきた。
多分、いつも使っているショルダーバッグの中からだ。
「おい、鳴ってるぞ」
鳴り続けている私のケータイに、テレビを見ている勇さんも振り向いて私に言った。
………この電話、誰からだろう。
昼間、高梨さんからの着信があったのだ。
放っておいただけだもん、当然またかかってくる可能性は十分あるよね。
放置したままにする事は出来るけど、今は側に勇さんがいる。
鳴っているケータイに出ないなんて、絶対におかしいって思われるよね。
だけど勇さんの側で高梨さんと話をするなんて事、出来ないよ!
…どうしよう…!!
「こ こんな時間に…誰からだろう…」
ドキドキと心拍数が上がってくる。
高梨さんの事だ。
また会う約束をする為の電話だと思う。
誘いに乗る乗らないにしても、そんな会話を勇さんに聞かれたら誰からの電話なのかって思うよね。
勇さんには高梨さんの事はもちろん、お見合いの話に気付かないうちに、なかった事にしてしまおうと思ってる。
だから、今ここで高梨さんとお話するわけには…。
もたもたしているうちに電話も切れてしまえばいいのになと思いながら、手間取った振りをしてショルダーバッグからケータイを取り出した。
もう10コール以上は鳴ったと思うのに、結局電話は切れる事なく私の手に届いた。
勇さんはそんな私には気にせず、テレビを見ている。
そのまま私の声には気にしないで、ずっとテレビを見ててね…。
尚も鳴り続けるケータイを、ゆっくり見た。
そして画面に表示されている文字を見て、思わず安堵のため息をついた。
「…なんだぁ、お母さんからだよ…」
ホッとした私は通話ボタンを押すと、ケータイを耳にあてた。
「もしも…」
『優!何やってるのよ。
電話くらい早く出なさい!』
いつもの事なのだとわかっていても、お母さんのデカい声には耳がキーンとする。
だからもうちょっとその音量を下げて話してよね!
「…洗い物してたんだから、しょうがないでしょっ
なに?どうしたのよ」
『あっそう。
そんな事より聞いたわよ。
あんた、ご挨拶に行ったんですってね』
ご挨拶?
お母さんの言う事はいつも前置きがないから、何の話をしているのかがすぐにわからない。
あいさつをするような所なんて、何かあったっけ?
「お母さん、いきなりあいさつなんて言われてもわかんないよ。
何の話なの?」
『何言ってんのよっ
高梨さんとこのお母さんから電話があって聞いたのよ。
あんたの事、ずいぶん気に入ってくれたみたいじゃないの』
「……!!」
ご挨拶って、昨日の夜に初めて高梨さんの家に行った時のアレの事?
あいさつって言うか、あの時はそんなつもりもなかったし、あいさつって感じにもならなかったよっ
…何にしても…
いくら相手がお母さんでも、高梨さんの話は勇さんの側でしたくない…。
勇さんはまだテレビに集中してるみたいだけど、適当に切り上げて、お母さんとはまた今度話す事にしよう。
…縁談の話は、やっぱりダメだったよって…ね。
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