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今は抱かないで…①
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__土曜日
いつも通り17時に仕事を終えた私は、その足で電車に揺られて実家の最寄り駅まで来た。
もう20時前になっていて、空も暗い。
ホームを出て駅の前まで来ると、一台の車が私の前で停まった。
「待ってたよ、優さん」
「…高梨さん。
呼び出しちゃったりしてすみません」
「どうして謝るんだい。
優さんから誘ってくれたんだ、喜んで行くよ」
大事なお話があるって約束をした今日。
次の休みの日まであまり時間を置かない方がいいって思ったの。
早くシュシュをお返しして、縁談のお話にケリをつけなくちゃ。
「言ってくれたら優さんの家まで迎えに行ったんだよ」
「いえ、大丈夫です。
今日は、私からのお話があるだけですから…っ」
「……………。
…なら、うちに案内するよ。
外で話すのもアレだしね」
そうして私は高梨さんの車に乗せてもらい、車は動き出した。
土曜日の夜なら、高梨さんのお店も忙しい時間帯だろうな。
なのに、私の都合に合わせて会ってくれた。
やっぱり社長さんだからできたのかな。
それとも私の為にムリを…?
いろいろ尽くしてくれたりしてるのにお断りを入れたりなんて、何だか申し訳ないって言うか、私ってばヒドい奴だなぁ。
高梨さんは何にも悪くないのに、全部私が自分の都合で振り回してるみたいで何となく罪悪感はある。
お母さんを納得させる為に、結婚する気もないのにお見合いしたり。
お付き合いする気もないのに、お買い物に付き合ったり。
挙げ句、その気もないのにプレゼントだけもらっちゃったり。
これで高梨さんが期待しても、ムリはない話だよね。
今日は心を込めて、ちゃんと謝ろう…。
10数分後にたどり着いた高梨さんの家は、やっぱり年商3億の社長さんだけあって大きくて立派な豪邸だった。
3階建ての一軒家みたいな感じなんだけど、うちの6世帯アパートよりもずっとずっと大きい。
全面駐車場になっている1階に車を停めると、私は高梨さんについて2階の玄関に上がった。
「…スゴいお家なんですね。
1人でここに住んでるんですか?」
「ううん、今は両親と一緒に住んでるよ。
この2階が両親で、3階が僕の部屋になってるんだ」
…3階のフロア全部が高梨さんの部屋って意味なのかな。
次元が違いすぎるから、私の常識じゃ計り知れない事はいっぱいあるんだろうな。
小鳥遊さんは玄関のドアを開け、私を中に招いた。
「うちの両親も優さんには会いたがっていたよ。
さぁどうぞ」
高梨さんのご両親って…
私は縁談にお断りをするつもりで来たのに、今更どんな顔で会ったらいいの…っ
外観が豪華そうであっただけに、さぞ中もシャンデリアや大理石の柱みたいなものがあるのかと思ったけど案外そうでもなかった。
だだっ広い玄関に、だだっ広い廊下。
その先のリビング?も内装はそんなに豪華な造りには見えないんだけど、とにかくだだっ広いが印象のお家だった。
「バカみたいに広い家でしょう?」
「…もっと、お城みたいな感じかと思っちゃいました」
「あはは。
そういうの、僕も両親も好みじゃなくてね。
あ、とりあえずそこに座ってて。
コーヒーでも入れるから」
「あ、あのっ、お構いなく…っ」
広いリビングのソファーに腰掛けると、高梨さんは多分キッチン?の方へと消えた。
…コーヒーなんていただきながら話す話じゃないんだけどなぁ。
お城みたい…ではないんだけど、備え付けられているテレビや家具なんかはやっぱりうちでは買えそうにないような高そうな物ばかり。
あんな大きなテレビ、目が悪くならないかなぁとか、やっぱり普通サイズの方が落ち着いて見れるよねぇとか。
そんな風でしか思えないあたり、私ってばとことん貧乏性だなと痛感する。
あまりキョロキョロと部屋の中を見回すのも失礼かと思い、お返しするつもりでシュシュを中に入れているショルダーバッグの方を何となく見ていると、聞き覚えのある声が私を呼んだ。
「まぁ、優さんね。
来てくれてありがとう」
「えっ、あっ…」
振り向いて見ると、私を呼んだのはあのお見合いの席にいた中年の女性だった。
つまり、高梨さんのお母さんだ。
いつも通り17時に仕事を終えた私は、その足で電車に揺られて実家の最寄り駅まで来た。
もう20時前になっていて、空も暗い。
ホームを出て駅の前まで来ると、一台の車が私の前で停まった。
「待ってたよ、優さん」
「…高梨さん。
呼び出しちゃったりしてすみません」
「どうして謝るんだい。
優さんから誘ってくれたんだ、喜んで行くよ」
大事なお話があるって約束をした今日。
次の休みの日まであまり時間を置かない方がいいって思ったの。
早くシュシュをお返しして、縁談のお話にケリをつけなくちゃ。
「言ってくれたら優さんの家まで迎えに行ったんだよ」
「いえ、大丈夫です。
今日は、私からのお話があるだけですから…っ」
「……………。
…なら、うちに案内するよ。
外で話すのもアレだしね」
そうして私は高梨さんの車に乗せてもらい、車は動き出した。
土曜日の夜なら、高梨さんのお店も忙しい時間帯だろうな。
なのに、私の都合に合わせて会ってくれた。
やっぱり社長さんだからできたのかな。
それとも私の為にムリを…?
いろいろ尽くしてくれたりしてるのにお断りを入れたりなんて、何だか申し訳ないって言うか、私ってばヒドい奴だなぁ。
高梨さんは何にも悪くないのに、全部私が自分の都合で振り回してるみたいで何となく罪悪感はある。
お母さんを納得させる為に、結婚する気もないのにお見合いしたり。
お付き合いする気もないのに、お買い物に付き合ったり。
挙げ句、その気もないのにプレゼントだけもらっちゃったり。
これで高梨さんが期待しても、ムリはない話だよね。
今日は心を込めて、ちゃんと謝ろう…。
10数分後にたどり着いた高梨さんの家は、やっぱり年商3億の社長さんだけあって大きくて立派な豪邸だった。
3階建ての一軒家みたいな感じなんだけど、うちの6世帯アパートよりもずっとずっと大きい。
全面駐車場になっている1階に車を停めると、私は高梨さんについて2階の玄関に上がった。
「…スゴいお家なんですね。
1人でここに住んでるんですか?」
「ううん、今は両親と一緒に住んでるよ。
この2階が両親で、3階が僕の部屋になってるんだ」
…3階のフロア全部が高梨さんの部屋って意味なのかな。
次元が違いすぎるから、私の常識じゃ計り知れない事はいっぱいあるんだろうな。
小鳥遊さんは玄関のドアを開け、私を中に招いた。
「うちの両親も優さんには会いたがっていたよ。
さぁどうぞ」
高梨さんのご両親って…
私は縁談にお断りをするつもりで来たのに、今更どんな顔で会ったらいいの…っ
外観が豪華そうであっただけに、さぞ中もシャンデリアや大理石の柱みたいなものがあるのかと思ったけど案外そうでもなかった。
だだっ広い玄関に、だだっ広い廊下。
その先のリビング?も内装はそんなに豪華な造りには見えないんだけど、とにかくだだっ広いが印象のお家だった。
「バカみたいに広い家でしょう?」
「…もっと、お城みたいな感じかと思っちゃいました」
「あはは。
そういうの、僕も両親も好みじゃなくてね。
あ、とりあえずそこに座ってて。
コーヒーでも入れるから」
「あ、あのっ、お構いなく…っ」
広いリビングのソファーに腰掛けると、高梨さんは多分キッチン?の方へと消えた。
…コーヒーなんていただきながら話す話じゃないんだけどなぁ。
お城みたい…ではないんだけど、備え付けられているテレビや家具なんかはやっぱりうちでは買えそうにないような高そうな物ばかり。
あんな大きなテレビ、目が悪くならないかなぁとか、やっぱり普通サイズの方が落ち着いて見れるよねぇとか。
そんな風でしか思えないあたり、私ってばとことん貧乏性だなと痛感する。
あまりキョロキョロと部屋の中を見回すのも失礼かと思い、お返しするつもりでシュシュを中に入れているショルダーバッグの方を何となく見ていると、聞き覚えのある声が私を呼んだ。
「まぁ、優さんね。
来てくれてありがとう」
「えっ、あっ…」
振り向いて見ると、私を呼んだのはあのお見合いの席にいた中年の女性だった。
つまり、高梨さんのお母さんだ。
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