ナイショのお見合いは、甘くて危険な恋の駆け引き!

むらさ樹

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パタン



アパートのドアを閉めた音でハッと気付いた。


自分の家に…帰ってきたんだ。


時計を見ると、もう23時をまわっている。
もうすぐ、今日一日が終わろうとしている時間だ。


アパートの中はまだ誰もいなくて真っ暗。

勇さんはまだ仕事中で、私が今アパートに帰った事だって知らない…。



パチンとリビングの照明スイッチをつけると、私はその場にへたり込んだ。



「……………」


この間に続いて、またウソをついて出かけてしまった今日。

ただお買い物に付き合うだけのハズだったのに、プレゼントまでされて更には…。


数時間前の事を思い出して、グラッとめまいがした。


…キス、されたんだ。
好きって、告白もされた。
奪い取る、とさえも…。


奪い取るだなんて言われて、何だか怖くなってきた。

高梨さんは嫌いじゃない。
優しいしかっこいいし、とっても紳士的。
結婚しても、きっと私を大切にしてくれる。


だけど、私には好きって想いはないの。

というか、だって私が本当に好きなのは勇さんだけなんだもん。

結婚だって、絶対に勇さんとするんだから!


なのに…



「勇さん…」


勇さんが仕事から帰ってくるのは、早くて夜中の3時頃。


早く、早く帰ってきてほしい。
そして、帰ったら真っ先に抱きしめてもらいたい。

私は勇さんだけのもの。
他の誰かのものになんか、ならない。


だから…私がどこにも行けないよう、しっかりと強く抱きしめてもらいたいよぉ。

すれ違い生活なんて当たり前の毎日なんだけど、でも今日ばっかりは寂しくて寂しくて、心が縮まりそうな気持ちだ…。






私はお風呂を済ませると、勇さんが帰って来た時に食べるご飯を作った。

普段の買い物は行ってないから、常備野菜だけで作るカレーライス。


…そういえば以前、勇さんが私にカレーを手作りしてくれた事があった。

野菜の大きさが不揃いで、ちょっぴり辛かった勇さんのカレー。


夫婦になったら、一緒の休みの日には仲良くご飯を作ったりとかしてみたい。
一日中ベッタリくっついて過ごしてみたい。


…今の生活上、なかなかそんな事もできないんだけど、でもいつかそんな日を夢見てるんだぁ…。





時計の針はやっと12時を過ぎた所。
まだ3時間くらいはある。


ホストクラブでお腹いっぱいになってた私は、カレー鍋の火を消してそのまま蓋をした。


それからリビングのテーブルに着くと、テレビのスイッチを入れて勇さんが帰るのを待った。


早く
早く私の所に帰って来て…!


「……っ………っ」





いくら衝撃的な事があってソワソワしても、夜中の2時を過ぎればまぶたが重くなる。


テーブルに肘をついてユラユラと船を漕ぎながら待っているんだけど、待つとなるとなかなか時間が経たない。


ベッドで横になったまま待っていようかと思ったけど、そのまま眠っちゃったら何の意味もない。


それに、勇さんへのサプライズプレゼントも…


「そうだ、ライター!」


重い身体を動かして、ショルダーバッグに入れたプレゼントのライターを取りだそうとした。



「あ…」


バッグの中には勇さんへのライターと一緒に、高梨さんからもらったシュシュの包みも入っていた。


私はライターの包みはバッグの中にそのままにして、シュシュの入った包みだけを取り出した。

赤いリボンをシュルシュルとほどいて、包みから中のシュシュを取り出す。


コインの飾りが付いた、薄いピンク地に濃い紫の縁取りがしてある大きなシュシュ。


私が薄いピンク色が好きって、これを見て高梨さんは言ったのかな。


あ、お見合いの日に着ていったスーツが薄ピンク色だったっけ。


…ホストのお仕事してただけあって、女の子の気持ちを理解したり良い気分にさせたりするのはやっぱり上手だなって思った。


だけど、好きだなんて言われるなんて…。



感謝の気持ちだからってくれたシュシュなんだけど…

もらっちゃったら、やっぱりおかしい…よね。


高梨さんの気持ちには応えられないわけなんだし、プレゼントだけもらうなんて変だ。

やっぱりシュシュは、お返ししなくちゃ!



だけど…されちゃったキスは、もう取り戻せないよぉ…っ!
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