ナイショのお見合いは、甘くて危険な恋の駆け引き!

むらさ樹

文字の大きさ
上 下
21 / 76

返したいんです!返して下さい!①

しおりを挟む
いくら多少なら遅くなってもって思っていたとは言えだ。

ここからまた実家に戻って更に電車で2時間かけてアパートに帰らなきゃならない事を考えると、20時過ぎはさすがに帰らなきゃならない時間だった。


20時からは更にお客さんが増えまだまだ高梨さんへのご指名はあったのだけど、私が帰りたい旨を他のホストさんに伝えてもらうと、上手く切り上げてお店を出る事ができた。




「ごめんね、相川さん。
もしかしたら疲れさせてしまっただけだったかな」


「あ、いえ。
あれが高梨さんのお仕事なんですものね。
ホント、お疲れさまです」


「……………っ
…ありがとう……」



お店に入る時に比べても、すっかり暗くなってしまった空。


立体駐車場まで戻ると、また高梨さんの車に乗せてもらった。



「…あれ?
高梨さん、さっきお酒飲んだんじゃあ…?」


お客さんに高いお酒を頼んでもらっては、それを一緒に飲むのがホストさんのお仕事だ。

あんなにいろんな席を回っていたら、相当飲んでるハズだよね…?


いくら車で来ちゃっても、お酒を飲んでしまっては飲酒運転になっちゃう。

お仕事でお酒を飲まなきゃならないホストさんだけども、それは……



「大丈夫だよ、胃の中は空っぽになってるから」


「空っぽ?」


他のお客さんの席でも何か飲んでいたような気がするんだけど、お酒じゃないにしたって空っぽって事は…?



「相川さんは心配しなくても、ちゃんと僕が安全に家まで送ってあげるよ」


「あ…はい…」


確かに、高梨さんは全然酔ってる風には見えない。
あれはお酒じゃなかったのかなぁ。

車で来たんだから、ちゃんと帰る事まで考えてたのかもしれないな。
だけど胃の中が空っぽの意味は、わかんないや。





そうして、ようやく車はうちの実家の前にたどり着いた。


「ありがとうございました。
何だかとても楽しかったです」


「うん、僕も相川さんと一緒で楽しかった。
ありがとう」


シートベルトを外し膝の上に乗せていたショルダーバッグを肩にかけると、私は車のドアを開けようと手をのばした。


「…相川さん」


「はい?」


名前を呼ばれて高梨さんの方を振り向いた。

すると高梨さんは後部座席から何かを取り出して私の前に見せた。


今日一緒に歩いて、私が選んだシュシュが入っている包みだ。
薄いピンク色のビニール製の袋に、赤いリボンが付いている。


「相川さんに、プレゼントだよ」


「ほぇ?」


なんてマヌケな声が出たんだろう。

だって、あまりにも意外な言葉だったから、すぐに意味がわからなかったんだもん。


「あの…どういう…?」


「だから、僕から相川さんへのプレゼントなんだって。
こういうのが好きなんだろ?
さぁ、どうぞ」



確かに、このプレゼントのシュシュは私が選んだもの。

だって、高梨さんが私の気に入ったものを選んでって言うからそうしただけ。

でもそれは多分、一般的な女の子目線で選んでほしかったからだと思っていたんだけど…?



「あの、でも私がもらっちゃったら、高梨さんがプレゼントしようとした方への物がなくなっちゃうんじゃあ…」


「僕がプレゼントしたかったのは、相川さんなんだよ。
だから、遠慮なんかしなくていいんだ」


「え?
でも高梨さん、想い人さんに…」

「そんな人、初めからいないよ」



…どういう事?

高梨さんには想い人さんがいて、その人の為にプレゼントしたくて私にお買い物を付き合わせたんじゃなかったの?



「ごめんね。
嘘をつくつもりはなかったんだけど、あのお見合いの席で相川さんに話を合わせようとして咄嗟に出たんだ」


あのお見合いの席で。

私と同じように、好きな人がいながら親の為にお見合いをしたって話だ。


「じゃあ…無理やりお見合いをさせられたってのは…」


「あぁ、それは本当だよ。
母さんは僕に、早くまともな女性と結婚してほしかったみたいだから」


だったら…なんでわざわざ私に話を合わせる為にあんな事を言ったんだろう。


自分から結婚する気がないんだったら、お見合いだけして私みたいにお断りを入れるって事だって出来ただろうに…。



「仕事柄、これまで女性との縁に困る事はなかったよ。中には僕に本気になって結婚を申し込んできた人もいた。
だけど、どの女性もみんな同じに見えた。
僕の容姿、身分、財産。目的はみんなそこだったんだ」


「______…」
しおりを挟む
感想 10

あなたにおすすめの小説

会社の後輩が諦めてくれません

碧井夢夏
恋愛
満員電車で助けた就活生が会社まで追いかけてきた。 彼女、赤堀結は恩返しをするために入社した鶴だと言った。 亀じゃなくて良かったな・・ と思ったのは、松味食品の営業部エース、茶谷吾郎。 結は吾郎が何度振っても諦めない。 むしろ、変に条件を出してくる。 誰に対しても失礼な男と、彼のことが大好きな彼女のラブコメディ。

極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~

恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」 そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。 私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。 葵は私のことを本当はどう思ってるの? 私は葵のことをどう思ってるの? 意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。 こうなったら確かめなくちゃ! 葵の気持ちも、自分の気持ちも! だけど甘い誘惑が多すぎて―― ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。

カプチーノ アート

むらさ樹
恋愛
気になる人がいるの 結婚して子どもまでいるのに、私は 「あの、見ましたっ ラテアートのハート…!」 主人とは違う男性に 特別な気持ちを抱いてしまっていたの……

離婚した彼女は死ぬことにした

まとば 蒼
恋愛
2日に1回更新(希望)です。 ----------------- 事故で命を落とす瞬間、政略結婚で結ばれた夫のアルバートを愛していたことに気づいたエレノア。 もう一度彼との結婚生活をやり直したいと願うと、四年前に巻き戻っていた。 今度こそ彼に相応しい妻になりたいと、これまでの臆病な自分を脱ぎ捨て奮闘するエレノア。しかし、 「前にも言ったけど、君は妻としての役目を果たさなくていいんだよ」 返ってくるのは拒絶を含んだ鉄壁の笑みと、表面的で義務的な優しさ。 それでも夫に想いを捧げ続けていたある日のこと、アルバートの大事にしている弟妹が原因不明の体調不良に襲われた。 神官から、二人の体調不良はエレノアの体内に宿る瘴気が原因だと告げられる。 大切な人を守るために離婚して彼らから離れることをエレノアは決意するが──。 ----------------- とあるコンテストに応募するためにひっそり書いていた作品ですが、最近ダレてきたので公開してみることにしました。 まだまだ荒くて調整が必要な話ですが、どんなに些細な内容でも反応を頂けると大変励みになります。 書きながら色々修正していくので、読み返したら若干展開が変わってたりするかもしれません。 作風が好みじゃない場合は回れ右をして自衛をお願いいたします。

【改稿版・完結】その瞳に魅入られて

おもち。
恋愛
「——君を愛してる」 そう悲鳴にも似た心からの叫びは、婚約者である私に向けたものではない。私の従姉妹へ向けられたものだった—— 幼い頃に交わした婚約だったけれど私は彼を愛してたし、彼に愛されていると思っていた。 あの日、二人の胸を引き裂くような思いを聞くまでは…… 『最初から愛されていなかった』 その事実に心が悲鳴を上げ、目の前が真っ白になった。 私は愛し合っている二人を引き裂く『邪魔者』でしかないのだと、その光景を見ながらひたすら現実を受け入れるしかなかった。  『このまま婚姻を結んでも、私は一生愛されない』  『私も一度でいいから、あんな風に愛されたい』 でも貴族令嬢である立場が、父が、それを許してはくれない。 必死で気持ちに蓋をして、淡々と日々を過ごしていたある日。偶然見つけた一冊の本によって、私の運命は大きく変わっていくのだった。 私も、貴方達のように自分の幸せを求めても許されますか……? ※後半、壊れてる人が登場します。苦手な方はご注意下さい。 ※このお話は私独自の設定もあります、ご了承ください。ご都合主義な場面も多々あるかと思います。 ※『幸せは人それぞれ』と、いうような作品になっています。苦手な方はご注意下さい。 ※こちらの作品は小説家になろう様でも掲載しています。

極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です

朝陽七彩
恋愛
 私は。 「夕鶴、こっちにおいで」  現役の高校生だけど。 「ずっと夕鶴とこうしていたい」  担任の先生と。 「夕鶴を誰にも渡したくない」  付き合っています。  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  神城夕鶴(かみしろ ゆづる)  軽音楽部の絶対的エース  飛鷹隼理(ひだか しゅんり)  アイドル的存在の超イケメン先生  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  彼の名前は飛鷹隼理くん。  隼理くんは。 「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」  そう言って……。 「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」  そして隼理くんは……。  ……‼  しゅっ……隼理くん……っ。  そんなことをされたら……。  隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。  ……だけど……。  え……。  誰……?  誰なの……?  その人はいったい誰なの、隼理くん。  ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。  その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。  でも。  でも訊けない。  隼理くんに直接訊くことなんて。  私にはできない。  私は。  私は、これから先、一体どうすればいいの……?

断る――――前にもそう言ったはずだ

鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」  結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。  周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。  けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。  他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。 (わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)  そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。  ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。  そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?

私が素直になったとき……君の甘過ぎる溺愛が止まらない

朝陽七彩
恋愛
十五年ぶりに君に再開して。 止まっていた時が。 再び、動き出す―――。 *◦*◦*◦*◦*◦*◦*◦*◦*◦*◦*◦*◦*◦*◦*◦*◦* 衣川遥稀(いがわ はるき) 好きな人に素直になることができない 松尾聖志(まつお さとし) イケメンで人気者 *◦*◦*◦*◦*◦*◦*◦*◦*◦*◦*◦*◦*◦*◦*◦*◦*

処理中です...