19 / 76
➄
しおりを挟む
「いらっしゃいませー!」
「ようこそ!
いらっしゃいませ!」
外観のチカチカ眩いネオンと違い、開かれたドアの中は柔らかい照明で照らされた独特のお店だった。
そこに出迎えるように現れた何人かの店員さんはみな若い男性ばかりで、ピシッとキレイにスーツを着こなしている。
「あ…えっと…」
何かの間違いだろうか。
私は確か高梨さんと夕飯を取るためにレストランに来たつもりだったのだけど…
「紫苑さん!」
「紫苑さん、お疲れ様です!」
私がオロオロしていると、店員さんたちは側に立つ高梨さんの方に挨拶をした。
「お疲れさま。
彼女は僕のお客さんなんだ。
一番良い席を案内してあげてね」
「はいっ
さぁ、どうぞこちらへ」
頭の整理がつかないまま、私は店員さんにあれよあれよとお店の奥へと導かれた。
頭の上には大きなシャンデリア。
ガラスのテーブルの上には豪華なフルーツの盛り合わせ。
「こちらは初めてのお客様へのサービスです」
「あ、は はい…」
飲食店って言うより、まるで中年のサラリーマンが会社帰りに行くようなキャバクラ……
あっ、そうか!
「相川さん、これが当店のメニュー表だよ。
今日は僕の奢りだから、気にしないで何でも注文してね」
柔らかいソファーに座る私の横についた高梨さんが、お店のメニュー表を見せてくれた。
名前なんてロクに知らないお酒の名前の横には、桁外れの金額が記されている。
生ハムサラダなんか、1皿4000円って。
今日買った勇さんへのライターとそんなに変わらないお値段じゃない!
「あの…もしかしてここって…」
「そうだよ。
僕の経営するホストクラブだ」
ホストクラブ!
やっぱりそうなんだ!!
テレビの特番でなら見た事がある。
毎晩めまいがするような額のお金が飛び交う所で、お客さん側って言うより、そこで働いてるホストの人の為にわざと高いお酒なんかを注文したりするんだ。
そうしてたくさん売り上げた人がナンバーワン、ナンバーツーって掲げられたりする…んだよね。
まさか高梨さんの言う飲食店がホストクラブだとは思わなかったけど、思い出してみればプレゼントされた高級品や飲食店で年商3億って数字も、これなら頷けるかも…。
「さぁ相川さん、遠慮なんかしなくていいんだよ。
お金の心配だってしなくていい。
お酒、どんなものがいいのかな?」
「す、すみません!
私、お酒は飲めないんです…っ」
て言うか、こんな所で食事だなんて思わないから、どうしたらいいかわかんないよぉっ!
「相川さん、お酒ダメなんだ?」
「は、はい…っ
ごめんなさい、せっかくススメてくれたのに…」
私がそう言うと、高梨さんは「ちょっと待ってて」と一言残してソファーから立ち上がった。
そして高梨さんがお店のどこかに行ってしまった後、他のホストの人が私の側に来た。
「初めまして」
「えっ、あっ、はいっ
初めまして…っ」
高梨さんとはまた少し違って、長くキレイな銀髪をしたホストさんだった。
こんな所に勤めているだけあって、容姿はモデルさんのようにキレイ。
男の人なのにやたら小顔で、なのに体格はしっかりしていて、全体的にかっこいいという部類に入る感じだ。
「ホストクラブは初めて?」
「あ…はい…。
すみません、私みたいな場違いな人が来ちゃって…」
「場違いだなんて。
ボクはキミのようなかわいいプリンセスが来てくれて嬉しいよ」
ひゃあ…//
テレビで見た通り、女の子に夢を与える場所って言うだけあってやたら甘い言葉でべた褒めしちゃうんだ…!
その後も、私の言う事やる事をやたらべた褒めしてくるホストさん。
困ったなぁ。
そんなにお世辞ばかり並べられちゃあ、逆に恥ずかしくなっちゃうよ…。
私は適当に相づちを打っていると、目の前にピンク色のグラスがシュワシュワっと小さな泡をたてて置かれた。
「お待たせ。
相川さんに、特別なカクテルを用意したよ」
「たか… 紫苑さん」
お店の奥から戻ってきた高梨さんは、私の為に飲み物を用意してくれたのだった。
「あの…だから私、お酒は…」
「大丈夫だよ、これはノンアルコールだから。
相川さんはピンク色が好きなんだと思って、これにしたんだ」
グラスの中で弾けている泡は炭酸なのかな。
薄いピンク色に小さな泡の粒がキラキラ見えて、確かにかわいかった。
ピンク色が好きって、なんでわかっちゃったんだろう。
「僕も同じものを用意したんだ。
乾杯しよう」
見ると高梨さんの手にも、薄ピンク色のグラスを持っている。
私に合わせて、ノンアルコールにしてくれたんだ。
「ようこそ!
いらっしゃいませ!」
外観のチカチカ眩いネオンと違い、開かれたドアの中は柔らかい照明で照らされた独特のお店だった。
そこに出迎えるように現れた何人かの店員さんはみな若い男性ばかりで、ピシッとキレイにスーツを着こなしている。
「あ…えっと…」
何かの間違いだろうか。
私は確か高梨さんと夕飯を取るためにレストランに来たつもりだったのだけど…
「紫苑さん!」
「紫苑さん、お疲れ様です!」
私がオロオロしていると、店員さんたちは側に立つ高梨さんの方に挨拶をした。
「お疲れさま。
彼女は僕のお客さんなんだ。
一番良い席を案内してあげてね」
「はいっ
さぁ、どうぞこちらへ」
頭の整理がつかないまま、私は店員さんにあれよあれよとお店の奥へと導かれた。
頭の上には大きなシャンデリア。
ガラスのテーブルの上には豪華なフルーツの盛り合わせ。
「こちらは初めてのお客様へのサービスです」
「あ、は はい…」
飲食店って言うより、まるで中年のサラリーマンが会社帰りに行くようなキャバクラ……
あっ、そうか!
「相川さん、これが当店のメニュー表だよ。
今日は僕の奢りだから、気にしないで何でも注文してね」
柔らかいソファーに座る私の横についた高梨さんが、お店のメニュー表を見せてくれた。
名前なんてロクに知らないお酒の名前の横には、桁外れの金額が記されている。
生ハムサラダなんか、1皿4000円って。
今日買った勇さんへのライターとそんなに変わらないお値段じゃない!
「あの…もしかしてここって…」
「そうだよ。
僕の経営するホストクラブだ」
ホストクラブ!
やっぱりそうなんだ!!
テレビの特番でなら見た事がある。
毎晩めまいがするような額のお金が飛び交う所で、お客さん側って言うより、そこで働いてるホストの人の為にわざと高いお酒なんかを注文したりするんだ。
そうしてたくさん売り上げた人がナンバーワン、ナンバーツーって掲げられたりする…んだよね。
まさか高梨さんの言う飲食店がホストクラブだとは思わなかったけど、思い出してみればプレゼントされた高級品や飲食店で年商3億って数字も、これなら頷けるかも…。
「さぁ相川さん、遠慮なんかしなくていいんだよ。
お金の心配だってしなくていい。
お酒、どんなものがいいのかな?」
「す、すみません!
私、お酒は飲めないんです…っ」
て言うか、こんな所で食事だなんて思わないから、どうしたらいいかわかんないよぉっ!
「相川さん、お酒ダメなんだ?」
「は、はい…っ
ごめんなさい、せっかくススメてくれたのに…」
私がそう言うと、高梨さんは「ちょっと待ってて」と一言残してソファーから立ち上がった。
そして高梨さんがお店のどこかに行ってしまった後、他のホストの人が私の側に来た。
「初めまして」
「えっ、あっ、はいっ
初めまして…っ」
高梨さんとはまた少し違って、長くキレイな銀髪をしたホストさんだった。
こんな所に勤めているだけあって、容姿はモデルさんのようにキレイ。
男の人なのにやたら小顔で、なのに体格はしっかりしていて、全体的にかっこいいという部類に入る感じだ。
「ホストクラブは初めて?」
「あ…はい…。
すみません、私みたいな場違いな人が来ちゃって…」
「場違いだなんて。
ボクはキミのようなかわいいプリンセスが来てくれて嬉しいよ」
ひゃあ…//
テレビで見た通り、女の子に夢を与える場所って言うだけあってやたら甘い言葉でべた褒めしちゃうんだ…!
その後も、私の言う事やる事をやたらべた褒めしてくるホストさん。
困ったなぁ。
そんなにお世辞ばかり並べられちゃあ、逆に恥ずかしくなっちゃうよ…。
私は適当に相づちを打っていると、目の前にピンク色のグラスがシュワシュワっと小さな泡をたてて置かれた。
「お待たせ。
相川さんに、特別なカクテルを用意したよ」
「たか… 紫苑さん」
お店の奥から戻ってきた高梨さんは、私の為に飲み物を用意してくれたのだった。
「あの…だから私、お酒は…」
「大丈夫だよ、これはノンアルコールだから。
相川さんはピンク色が好きなんだと思って、これにしたんだ」
グラスの中で弾けている泡は炭酸なのかな。
薄いピンク色に小さな泡の粒がキラキラ見えて、確かにかわいかった。
ピンク色が好きって、なんでわかっちゃったんだろう。
「僕も同じものを用意したんだ。
乾杯しよう」
見ると高梨さんの手にも、薄ピンク色のグラスを持っている。
私に合わせて、ノンアルコールにしてくれたんだ。
0
お気に入りに追加
70
あなたにおすすめの小説
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
真実の愛は、誰のもの?
ふまさ
恋愛
「……悪いと思っているのなら、く、口付け、してください」
妹のコーリーばかり優先する婚約者のエディに、ミアは震える声で、思い切って願いを口に出してみた。顔を赤くし、目をぎゅっと閉じる。
だが、温かいそれがそっと触れたのは、ミアの額だった。
ミアがまぶたを開け、自分の額に触れた。しゅんと肩を落とし「……また、額」と、ぼやいた。エディはそんなミアの頭を撫でながら、柔やかに笑った。
「はじめての口付けは、もっと、ロマンチックなところでしたいんだ」
「……ロマンチック、ですか……?」
「そう。二人ともに、想い出に残るような」
それは、二人が婚約してから、六年が経とうとしていたときのことだった。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
私が素直になったとき……君の甘過ぎる溺愛が止まらない
朝陽七彩
恋愛
十五年ぶりに君に再開して。
止まっていた時が。
再び、動き出す―――。
*◦*◦*◦*◦*◦*◦*◦*◦*◦*◦*◦*◦*◦*◦*◦*◦*
衣川遥稀(いがわ はるき)
好きな人に素直になることができない
松尾聖志(まつお さとし)
イケメンで人気者
*◦*◦*◦*◦*◦*◦*◦*◦*◦*◦*◦*◦*◦*◦*◦*◦*
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
甘すぎるドクターへ。どうか手加減して下さい。
海咲雪
恋愛
その日、新幹線の隣の席に疲れて寝ている男性がいた。
ただそれだけのはずだったのに……その日、私の世界に甘さが加わった。
「案外、本当に君以外いないかも」
「いいの? こんな可愛いことされたら、本当にもう逃してあげられないけど」
「もう奏葉の許可なしに近づいたりしない。だから……近づく前に奏葉に聞くから、ちゃんと許可を出してね」
そのドクターの甘さは手加減を知らない。
【登場人物】
末永 奏葉[すえなが かなは]・・・25歳。普通の会社員。気を遣い過ぎてしまう性格。
恩田 時哉[おんだ ときや]・・・27歳。医者。奏葉をからかう時もあるのに、甘すぎる?
田代 有我[たしろ ゆうが]・・・25歳。奏葉の同期。テキトーな性格だが、奏葉の変化には鋭い?
【作者に医療知識はありません。恋愛小説として楽しんで頂ければ幸いです!】
誰にも言えないあなたへ
天海月
恋愛
子爵令嬢のクリスティーナは心に決めた思い人がいたが、彼が平民だという理由で結ばれることを諦め、彼女の事を見初めたという騎士で伯爵のマリオンと婚姻を結ぶ。
マリオンは家格も高いうえに、優しく美しい男であったが、常に他人と一線を引き、妻であるクリスティーナにさえ、どこか壁があるようだった。
年齢が離れている彼にとって自分は子供にしか見えないのかもしれない、と落ち込む彼女だったが・・・マリオンには誰にも言えない秘密があって・・・。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
あなたには、この程度のこと、だったのかもしれませんが。
ふまさ
恋愛
楽しみにしていた、パーティー。けれどその場は、信じられないほどに凍り付いていた。
でも。
愉快そうに声を上げて笑う者が、一人、いた。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
再会したスパダリ社長は強引なプロポーズで私を離す気はないようです
星空永遠
恋愛
6年前、ホームレスだった藤堂樹と出会い、一緒に暮らしていた。しかし、ある日突然、藤堂は桜井千夏の前から姿を消した。それから6年ぶりに再会した藤堂は藤堂ブランド化粧品の社長になっていた!?結婚を前提に交際した二人は45階建てのタマワン最上階で再び同棲を始める。千夏が知らない世界を藤堂は教え、藤堂のスパダリ加減に沼っていく千夏。藤堂は千夏が好きすぎる故に溺愛を超える執着愛で毎日のように愛を囁き続けた。
2024年4月21日 公開
2024年4月21日 完結
☆ベリーズカフェ、魔法のiらんどにて同作品掲載中。
断る――――前にもそう言ったはずだ
鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」
結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。
周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。
けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。
他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。
(わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)
そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。
ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。
そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる