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しおりを挟む「ふぁぁ………ふぅ」
次の日の、仕事中。
案の定睡眠不足が祟って、まだお客さんがいないのをいい事にレジの奥であくびをしてしまった。
「あ、見ちゃったぞ~。
大きなあくび」
お昼休みから戻ってきたパートの和泉さんが、私のしたあくびを見事にとらえていていた。
「昨夜はちゃんと眠れなかったの?」
「あはは…まぁ…」
なかなか眠れなかったのは間違いないけど、その後も起きて真夜中に勇さんといっぱいラブラブしちゃったなんて、それはさすがに恥ずかしくて言えない//
その時はスゴくよかったんだけど、やっぱり朝起きるのがツラいのは仕方ないよね。
しかも職場であくびだなんて。
照れ隠しに両手で口元を覆って苦笑いしていると、和泉さんは思い出したように私に駆け寄って耳元でひそひそと訊いてきた。
「ねぇねぇ、そういえばどうなったの?
昨日のお見合い」
昨日の休みは、私は仕事しているって口裏合わせてくれた和泉さん。
いろいろ相談に乗ってくれたりしてるので、やっぱりお見合いの事も気になるみたいだった。
「うん、行ったよ」
「で、どうだった?
うまく失敗できた?」
うまく失敗っていうか何ていうか。
何て説明したらいいのか一口じゃ難しいな。
「何かね、相手の人も私みたいにお母さんに無理やりお見合いさせられたみたいで、しかも好きな人もいるんだって」
「へぇぇっ
じゃあ向こうも最初から断る気だったんだ。
だったら簡単に済んだのね」
うーん…簡単ってほど単純じゃ済まなかったんだけどなぁ。
あれからお母さんにもどうだったかってしつこく訊かれたけど、まだはっきり断ったとも断られたとも言ってないんだよね。
「ふーん、そうだったんだ。
それで、相手の人ってどんな感じの男だった?」
「んー…
スゴいイケメンで」
「へぇ」
「年商3億の飲食店の社長さんで」
「ほぉ」
「外車とか乗ってるスゴいお金持ち…みたい」
「えぇーっ」
だんだんと和泉さんの驚く顔が派手になっていった。
いやいや、そりゃ私だってビックリしたんだもん。
側で聞いてる和泉さんはもっとビックリだよね。
「なんでそんな人がお見合いとかしてんの?」
「私も…わかんない」
「実は凄い性格悪いとか」
「ううん。
とっても優しくて紳士だった」
「うわぁ…だとしたら何だか勿体無い話だわ」
もったいない…。
まぁ普通に結婚したい人がいなくてお見合いに臨んだんだとしたら、確かに手放したくないくらいの男性だよね。
だけど、今の私にはもったいなくても必要ないもの。
「でもいいなぁ、お金持ちなイケメン社長とお見合いだなんて。
わたしだったらそのまま結婚に踏み込んじゃいそう」
「あはは。
和泉さんったら旦那さんいるのにっ」
「それはそれ、これはこれよ。
でも本当に惜しいわね。そんな人とせっかく出会えたのに、もう会えないなんて」
「あー…それがね…」
私も1回きりのつもりで応じたこのお見合い。
だけど、デートとかそんなんじゃあないんだけど、また会う約束はしてしまった。
まぁ今度こそ次で会う事もなくなっちゃうんだけど、でもまた昨日みたいにコソコソ出掛けないといけない。
そしてそれには、また和泉さんに口裏合わせてもらうという協力も必要なのだ。
「あの、実は…」
私はその後交わした高梨さんとの約束の事も、和泉さんに全て話した。
そしてもちろん、またビックリされたわけなのだが。
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