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お付き合いじゃなくて、ちょっと付き合うだけなの!①
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…………………」
眠れない。
あれから。
また電車に乗ってこっちに戻り、買い物をしてアパートに帰ったわけなのだけど。
いつも私が仕事を終える時間に合わせて帰ったので、その頃には勇さんは仕事に出ていていなかった。
私はいつも通り、洗濯物を取り込んで夕飯の支度をして、それから1人でご飯を食べてお風呂に入って…。
どちらかと言うと仕事をするより疲れたんだけど、なのに1人ベッドに入ってもなかなか寝付けなかったのだ。
今日1日で、いろいろあったもんなぁ…。
何より、勇さんがまだ眠ってる時にアパートを出て、まだ一度も顔を合わせていない。
仕事ってウソついて出掛けちゃったから、それがバレてないかソワソワしちゃってるのもあるんだよね…。
「それにしても…高梨さん…かぁ」
あんなお金持ちで優しいイケメン社長さんなのに、そんな人とお見合い相手として顔を合わすだなんて思わなかったなぁ。
高梨さんも、お母さんに早く結婚しろーって感じでお見合いしたのか…。
せっかく好きな人がいるっていうのに、どうしてその人とは結婚できないのかな。
例えばうちのお母さんは、私の結婚相手なのにやたら理想像が高すぎる。
勇さんがめちゃめちゃ高学歴で高収入だったら、それだけで即OKってな具合になったんだろうな。
だけど高梨さんのお母さんの場合は何なんだろう。
高梨さんの好きな人ではダメで、私みたいな何の取り柄もない奴ならいいのかな。
「うーん…」
考えてもわかんないものはわかんないや。
ま、私が考えても仕方ないよね。
高梨さんも、想い人さんと上手くいけばいいよね…。
カタン
パタン
浅い眠りから、家のどこかから聞こえた音で目が覚めた。
カーテンの隙間から見える外の暗さから、まだ夜中だと思う。
…勇さんが帰ってきたんだ!
おかえり!
って、いつもなら起きて錬さんに言うんだけど、今日はまず勇さんの様子が気になってベッドの中で薄目を開けて見ていた。
もし私がお見合い行ってた事がバレてたら、きっと何か言ってくるとかしてくるよね。
だけど帰ってきた勇さんは、いつも通りテーブルに置いたお料理をレンジで温めると1人で食べ始めた。
それからお風呂に入り、テレビをつけて見る。
…別に変わった様子もない。
多分、大丈夫だね。
私はゆっくりベッドから起き上がり、テーブルでテレビを見ている勇さんの側へ駆け寄った。
「おかえりなさいっ」
「わっ、何だ起きてたのか?」
「うん、勇さん帰ってくるの待ってたの」
なんてね。
ホントはなかなか眠れなくって、やっと寝付いた所だったんだけど。
「寝なくて大丈夫か?
せっかくの休み、仕事になってなくなったんだろ?
朝起きるのツラいぞ」
…よかった。
やっぱり気付いてない。
私は下から勇さんの顔をのぞき込むように見上げると、甘えたような笑みで言った。
「…一緒に寝ようよ」
「ふっ
何ガキみたいな事言ってんだか」
「もぉ、子どもじゃないよぉっ」
私がぷぅっと頬を膨らませて返すと、勇さんはギュッと私の身体を抱きしめた。
「せっかく起きてんなら、もうちょっとぐらい起きててもいいよな…?」
勇さんの唇が私の耳の後ろに当てられた。
ドキンと私の胸が熱くなる。
「ん…いいよ…」
そうしてふたり唇を合わせると、人の寝静まるこの真夜中に私と勇さんの熱く甘い時間が始まった。
そしてこの時にはもう、私は高梨さんの事はすっかり頭の中から消えていた。
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