8 / 76
➂
しおりを挟む
「相川さんには、どなたか既に良い相手の方がいるのではないですか?」
「ええっ、どうしてそれを!?」
お見合いなんだからある程度は相手の情報は得たかもしれないが、恋人がいるなんて事は普通あり得ないし、ましてやそんな情報が先方に行くわけがない。
なのにそんな事をさらっと訊いてきた高梨さんに、私は動揺してしまった。
まさか、相手の心が読める超能力を持ってるなんて事は…!
「相川さんの指輪。
右手だからわかりませんが、もしかしたら…と思ったのです」
「あ…」
お見合いの席に、勇さんからの指輪をつけっぱなしで来ちゃったなんて!
私ってばドンダケ図々しいのよ!
これじゃあいくらなんでも高梨さんをバカにしすぎじゃない!
どうせお断りするんだから…と軽く思っていたこのお見合い。
だけど私のこの軽率な行為が、きっと高梨さんをヒドく傷つけてしまったかもしれない…。
「すみません…
ホント、すみませんでした…」
どう謝っていいかわからず、私はとにかく頭を低く下げて謝った。
すると急に密室になっていた個室の襖が開き、お店の人が何かを運んできた。
「お待たせしました。
食後のデザートです」
小さなお盆に乗せられたのはグラスに入ったオシャレなシャーベット。
それを私と高梨さんの前に置くと、お店の人はまた静かに出て行った。
「さぁ、もう顔を上げて。
デザート、いただきましょう」
それでも怒りもせずに、高梨さんは私に明るく声をかけた。
あぁ…優しい人でよかった。
だけど…どうしてこんなに優しくて美形な人がお見合いなんてしてんのかな。
なんて不思議に思いながら、高梨さんにすすめられデザートのシャーベットを口に運ぶ。
ひんやりシャクシャク冷たい食感が口の中に広がっていく。
「うん、美味しい。
どう?相川さん」
「お、美味しい…です…」
「ふふっ、相川さん。
そんなに落ち込まないでいいから。
…実は僕もね、好きな人がいるんだ」
「えっ」
意外な言葉が返ってきたので、私は顔を上げて高梨さんの方を見た。
少しバツが悪そうな表情が、ほんの少し私の罪悪感を軽くした。
「だから、そんなに気負わないで」
「あ…」
本来なら結婚を前提とした会合がお見合いなのに。
私もこの高梨さんも、お互い想い人がいながら親の言いつけでお見合いに応じたんだ。
…こんな偶然があるなんて。
昨日までの私には予想すら出来なかったなぁ。
「なんか…変な感じですね。
お互いが同じ状況でこの席にいるなんて」
だという事は、高梨さんも結婚しようと思ってこのお見合いをしたわけじゃないんだ。
結果いろいろ失礼な事をしちゃったのは私の方なんだけど、高梨さんも最終的にお断りを入れるつもりだったんだと思うと、心は軽くなった。
「本当だ。
ある意味、運命感じるよ」
「あはっ」
そうとわかった途端、私は気が楽になったのもあり、半分溶けかかっている残りのシャーベットを一気に平らげた。
「美味しかったぁ。
ごちそうさま」
「うん。流石良い料理だったね。
じゃあ、そろそろ出ようか」
「はい」
お互い座りっぱなしの腰を上げて席を立つ。
「…ぁ…足痺れちゃ…っ」
急に立ち上がろうとした私は痺れた足でバランスを崩し、身体がヨロヨロした。
「ほら、大丈夫?」
「あ…」
高梨さんは食べ終わったお料理の並ぶ台をぐるりとまわり、ヨロケている私の手を持ち腰を支えてくれた。
足に力が入らなくて思うように動けない。
だからどうしても握られた手を力強く握り返してしまい、身体もまるで高梨さんに抱かれるようにくっついてしまった。
「ご ごめんなさいっ
あのっ、すぐに離れますからっ、あ…っ」
「いいよ、落ち着くまでこうしてて。
無理して転んで怪我でもしたら大変だ」
「…すみません…//」
その間、ビリビリと痺れてる足がだんだんと治っていく。
そんなに長い時間というわけではないけど、でもその間ずっと抱かれるように高梨さんに支えられ、私は何だかドキドキしてしまった。
だって、こんな美形に優しくされるなんて、まるで少女漫画のワンシーンみたいだもん…。
「ええっ、どうしてそれを!?」
お見合いなんだからある程度は相手の情報は得たかもしれないが、恋人がいるなんて事は普通あり得ないし、ましてやそんな情報が先方に行くわけがない。
なのにそんな事をさらっと訊いてきた高梨さんに、私は動揺してしまった。
まさか、相手の心が読める超能力を持ってるなんて事は…!
「相川さんの指輪。
右手だからわかりませんが、もしかしたら…と思ったのです」
「あ…」
お見合いの席に、勇さんからの指輪をつけっぱなしで来ちゃったなんて!
私ってばドンダケ図々しいのよ!
これじゃあいくらなんでも高梨さんをバカにしすぎじゃない!
どうせお断りするんだから…と軽く思っていたこのお見合い。
だけど私のこの軽率な行為が、きっと高梨さんをヒドく傷つけてしまったかもしれない…。
「すみません…
ホント、すみませんでした…」
どう謝っていいかわからず、私はとにかく頭を低く下げて謝った。
すると急に密室になっていた個室の襖が開き、お店の人が何かを運んできた。
「お待たせしました。
食後のデザートです」
小さなお盆に乗せられたのはグラスに入ったオシャレなシャーベット。
それを私と高梨さんの前に置くと、お店の人はまた静かに出て行った。
「さぁ、もう顔を上げて。
デザート、いただきましょう」
それでも怒りもせずに、高梨さんは私に明るく声をかけた。
あぁ…優しい人でよかった。
だけど…どうしてこんなに優しくて美形な人がお見合いなんてしてんのかな。
なんて不思議に思いながら、高梨さんにすすめられデザートのシャーベットを口に運ぶ。
ひんやりシャクシャク冷たい食感が口の中に広がっていく。
「うん、美味しい。
どう?相川さん」
「お、美味しい…です…」
「ふふっ、相川さん。
そんなに落ち込まないでいいから。
…実は僕もね、好きな人がいるんだ」
「えっ」
意外な言葉が返ってきたので、私は顔を上げて高梨さんの方を見た。
少しバツが悪そうな表情が、ほんの少し私の罪悪感を軽くした。
「だから、そんなに気負わないで」
「あ…」
本来なら結婚を前提とした会合がお見合いなのに。
私もこの高梨さんも、お互い想い人がいながら親の言いつけでお見合いに応じたんだ。
…こんな偶然があるなんて。
昨日までの私には予想すら出来なかったなぁ。
「なんか…変な感じですね。
お互いが同じ状況でこの席にいるなんて」
だという事は、高梨さんも結婚しようと思ってこのお見合いをしたわけじゃないんだ。
結果いろいろ失礼な事をしちゃったのは私の方なんだけど、高梨さんも最終的にお断りを入れるつもりだったんだと思うと、心は軽くなった。
「本当だ。
ある意味、運命感じるよ」
「あはっ」
そうとわかった途端、私は気が楽になったのもあり、半分溶けかかっている残りのシャーベットを一気に平らげた。
「美味しかったぁ。
ごちそうさま」
「うん。流石良い料理だったね。
じゃあ、そろそろ出ようか」
「はい」
お互い座りっぱなしの腰を上げて席を立つ。
「…ぁ…足痺れちゃ…っ」
急に立ち上がろうとした私は痺れた足でバランスを崩し、身体がヨロヨロした。
「ほら、大丈夫?」
「あ…」
高梨さんは食べ終わったお料理の並ぶ台をぐるりとまわり、ヨロケている私の手を持ち腰を支えてくれた。
足に力が入らなくて思うように動けない。
だからどうしても握られた手を力強く握り返してしまい、身体もまるで高梨さんに抱かれるようにくっついてしまった。
「ご ごめんなさいっ
あのっ、すぐに離れますからっ、あ…っ」
「いいよ、落ち着くまでこうしてて。
無理して転んで怪我でもしたら大変だ」
「…すみません…//」
その間、ビリビリと痺れてる足がだんだんと治っていく。
そんなに長い時間というわけではないけど、でもその間ずっと抱かれるように高梨さんに支えられ、私は何だかドキドキしてしまった。
だって、こんな美形に優しくされるなんて、まるで少女漫画のワンシーンみたいだもん…。
0
お気に入りに追加
70
あなたにおすすめの小説
再会したスパダリ社長は強引なプロポーズで私を離す気はないようです
星空永遠
恋愛
6年前、ホームレスだった藤堂樹と出会い、一緒に暮らしていた。しかし、ある日突然、藤堂は桜井千夏の前から姿を消した。それから6年ぶりに再会した藤堂は藤堂ブランド化粧品の社長になっていた!?結婚を前提に交際した二人は45階建てのタマワン最上階で再び同棲を始める。千夏が知らない世界を藤堂は教え、藤堂のスパダリ加減に沼っていく千夏。藤堂は千夏が好きすぎる故に溺愛を超える執着愛で毎日のように愛を囁き続けた。
2024年4月21日 公開
2024年4月21日 完結
☆ベリーズカフェ、魔法のiらんどにて同作品掲載中。
極道に大切に飼われた、お姫様
真木
恋愛
珈涼は父の組のため、生粋の極道、月岡に大切に飼われるようにして暮らすことになる。憧れていた月岡に甲斐甲斐しく世話を焼かれるのも、教え込まれるように夜ごと結ばれるのも、珈涼はただ恐ろしくて殻にこもっていく。繊細で怖がりな少女と、愛情の伝え方が下手な極道の、すれ違いラブストーリー。
ヤリたい男ヤラない女〜デキちゃった編
タニマリ
恋愛
野獣のような男と付き合い始めてから早5年。そんな彼からプロポーズをされ同棲生活を始めた。
私の仕事が忙しくて結婚式と入籍は保留になっていたのだが……
予定にはなかった大問題が起こってしまった。
本作品はシリーズの第二弾の作品ですが、この作品だけでもお読み頂けます。
15分あれば読めると思います。
この作品の続編あります♪
『ヤリたい男ヤラない女〜デキちゃった編』
捨てる旦那あれば拾うホテル王あり~身籠もったら幸せが待っていました~
霧内杳/眼鏡のさきっぽ
恋愛
「僕は絶対に、君をものにしてみせる」
挙式と新婚旅行を兼ねて訪れたハワイ。
まさか、その地に降り立った途端、
「オレ、この人と結婚するから!」
と心変わりした旦那から捨てられるとは思わない。
ホテルも追い出されビーチで途方に暮れていたら、
親切な日本人男性が声をかけてくれた。
彼は私の事情を聞き、
私のハワイでの思い出を最高のものに変えてくれた。
最後の夜。
別れた彼との思い出はここに置いていきたくて彼に抱いてもらった。
日本に帰って心機一転、やっていくんだと思ったんだけど……。
ハワイの彼の子を身籠もりました。
初見李依(27)
寝具メーカー事務
頑張り屋の努力家
人に頼らず自分だけでなんとかしようとする癖がある
自分より人の幸せを願うような人
×
和家悠将(36)
ハイシェラントホテルグループ オーナー
押しが強くて俺様というより帝王
しかし気遣い上手で相手のことをよく考える
狙った獲物は逃がさない、ヤンデレ気味
身籠もったから愛されるのは、ありですか……?
羽柴弁護士の愛はいろいろと重すぎるので返品したい。
泉野あおい
恋愛
人の気持ちに重い軽いがあるなんて変だと思ってた。
でも今、確かに思ってる。
―――この愛は、重い。
------------------------------------------
羽柴健人(30)
羽柴法律事務所所長 鳳凰グループ法律顧問
座右の銘『危ない橋ほど渡りたい。』
好き:柊みゆ
嫌い:褒められること
×
柊 みゆ(28)
弱小飲料メーカー→鳳凰グループ・ホウオウ総務部
座右の銘『石橋は叩いて渡りたい。』
好き:走ること
苦手:羽柴健人
------------------------------------------
極上の一夜で懐妊したらエリートパイロットの溺愛新婚生活がはじまりました
白妙スイ@書籍&電子書籍発刊!
恋愛
早瀬 果歩はごく普通のOL。
あるとき、元カレに酷く振られて、1人でハワイへ傷心旅行をすることに。
そこで逢見 翔というパイロットと知り合った。
翔は果歩に素敵な時間をくれて、やがて2人は一夜を過ごす。
しかし翌朝、翔は果歩の前から消えてしまって……。
**********
●早瀬 果歩(はやせ かほ)
25歳、OL
元カレに酷く振られた傷心旅行先のハワイで、翔と運命的に出会う。
●逢見 翔(おうみ しょう)
28歳、パイロット
世界を飛び回るエリートパイロット。
ハワイへのフライト後、果歩と出会い、一夜を過ごすがその後、消えてしまう。
翌朝いなくなってしまったことには、なにか理由があるようで……?
●航(わたる)
1歳半
果歩と翔の息子。飛行機が好き。
※表記年齢は初登場です
**********
webコンテンツ大賞【恋愛小説大賞】にエントリー中です!
完結しました!
不能と噂される皇帝の後宮に放り込まれた姫は恩返しをする
矢野りと
恋愛
不能と噂される隣国の皇帝の後宮に、牛100頭と交換で送り込まれた貧乏小国の姫。
『なんでですか!せめて牛150頭と交換してほしかったですー』と叫んでいる。
『フンガァッ』と鼻息荒く女達の戦いの場に勢い込んで来てみれば、そこはまったりパラダイスだった…。
『なんか悪いですわね~♪』と三食昼寝付き生活を満喫する姫は自分の特技を活かして皇帝に恩返しすることに。
不能?な皇帝と勘違い姫の恋の行方はどうなるのか。
※設定はゆるいです。
※たくさん笑ってください♪
※お気に入り登録、感想有り難うございます♪執筆の励みにしております!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる