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そんな彼の言葉から、このお見合いは始まった。
そして先方さんのご両親から相手の男性の紹介。
この高梨 悠さんって方は、ある飲食店の社長を勤めていて、年商も3億円以上を稼いでいるらしい。
若く見える風貌だったけど実際は見た目よりも年を取っていて、今年31になるという。
ていうか、飲食店で年商3億だなんて、どんな所なのよ…。
「まぁ、まだお若いのに素晴らしいのねぇ~。
それに比べてうちの優は…本当、恥ずかしい限りで…」
どうせ予めチェックを入れてたクセに、さも初めて聞いた風に驚いて見せるお母さん。
しかも私の事は恥ずかしい限りだってさ。
だったらお見合いになんか出させないでってのよぉ!
殆どを親同士がお互いの話をしていく中、コースなのか次々お料理が運ばれてくる。
私はこれといって喋る事がないので、黙って出てくるお料理を少しずつつまんでは口に入れてるだけだった。
あんまり早く食べたらする事なくなっちゃうもんね。
それよりかは、このお料理は何のおダシ使ってるのかなぁとか、今日の夕飯は何にしようかしらと。
只今お見合いの真っ最中である事も忘れて考え事ばかりしていた。
はぁ…退屈。
それよりも、勇さんにバレたりしないよね…。
もしバレちゃって、明日の朝には怒っていなくなっちゃったらどうしよう。
私がしてる事って、もしかして浮気と一緒なのかなぁ…。
違うよね。
あれやこれやと1人で考え事ばかりして、時間だけは1時間を軽く過ぎていた。
「さて…お料理もたらふくいただいた事だし…」
「本当、美味しかったわ」
「後は…若い2人だけで話す事もあるでしょうから」
お互いの親が腰をゆっくりと上げながら言った。
出た。
お見合い特有の「後は若い2人だけで」って言葉。
お料理も食べ終わったのに、若い2人が一緒にいたって何も話す事なんてないんだからっ
「悠、後で相川さんを送ってあげなさいね」
「わかってるよ、母さん」
そう言って相手のご両親は私に一礼してこの個室から出た。
私も慌てて会釈をしたら、ギュッと足を踏まれて、危うく変な声が出そうになった。
…お母さんだ。
「優、ちゃんとしなさいよ。高梨さんに失礼のないようにね」
そう言ったお母さんも、相手の男性に軽く礼をして出た。
…何をちゃんとするのか全く意味がわからなかったんだけど。
最後に出て行ったお母さんが襖を閉めると、部屋には私と相手の男性の2人だけになった。
「…………………」
「…………………」
…困ったなぁ。
2人きりにされたら、余計に何話したらいいかわかんないよぉ。
考えてみれば、私はこれまでの人生で男性と2人で話をするような機会は殆どなかった。
もちろん勇さんは別。
というか、男性と付き合ったのも勇さんが初めてだ。
中学校くらいまでは人並みに男子生徒に淡い恋をした事もあったけど、高校からは女子校だったし基本的に男性と縁もなかったのだ。
今更男性と縁なんて必要ないから別にいいんだけど、とにかくこの時間をどう費やしたらいいのかがわからなかった。
「…心ここにあらず、て感じですね」
「えっ あ…っ」
突然そう言われて、私はドキンとした。
「ずっと、下を向いておられた。
母さんたちの話が長すぎて、きっと退屈されたのでしょう?」
ドキドキドキーン!
ず 図星だ…!
私は相手の事など殆ど見ていなかったけど、彼は私の事を見ていたんだ!
「す…すみません…っ」
これが本当のお見合いだったら、この時点できっとお見合いの話は終わってる。
どちみちお断りを入れるつもりではあったんだけど、だからってお見合いの席で上の空なんて相手に失礼すぎたかもしれない。
私は頭を下げて謝ると、相手の男性…高梨さんはふふっと笑って返してくれた。
「謝らなくてもいいよ。
僕も母さんに無理やりお見合いさせられたクチなんだから」
「え…?
高梨さんも…なんですか?」
どんな事情があるのかはわからないけど、親の為にお見合いに応じたって人間は私だけじゃなく他にもいたんだ。
そして先方さんのご両親から相手の男性の紹介。
この高梨 悠さんって方は、ある飲食店の社長を勤めていて、年商も3億円以上を稼いでいるらしい。
若く見える風貌だったけど実際は見た目よりも年を取っていて、今年31になるという。
ていうか、飲食店で年商3億だなんて、どんな所なのよ…。
「まぁ、まだお若いのに素晴らしいのねぇ~。
それに比べてうちの優は…本当、恥ずかしい限りで…」
どうせ予めチェックを入れてたクセに、さも初めて聞いた風に驚いて見せるお母さん。
しかも私の事は恥ずかしい限りだってさ。
だったらお見合いになんか出させないでってのよぉ!
殆どを親同士がお互いの話をしていく中、コースなのか次々お料理が運ばれてくる。
私はこれといって喋る事がないので、黙って出てくるお料理を少しずつつまんでは口に入れてるだけだった。
あんまり早く食べたらする事なくなっちゃうもんね。
それよりかは、このお料理は何のおダシ使ってるのかなぁとか、今日の夕飯は何にしようかしらと。
只今お見合いの真っ最中である事も忘れて考え事ばかりしていた。
はぁ…退屈。
それよりも、勇さんにバレたりしないよね…。
もしバレちゃって、明日の朝には怒っていなくなっちゃったらどうしよう。
私がしてる事って、もしかして浮気と一緒なのかなぁ…。
違うよね。
あれやこれやと1人で考え事ばかりして、時間だけは1時間を軽く過ぎていた。
「さて…お料理もたらふくいただいた事だし…」
「本当、美味しかったわ」
「後は…若い2人だけで話す事もあるでしょうから」
お互いの親が腰をゆっくりと上げながら言った。
出た。
お見合い特有の「後は若い2人だけで」って言葉。
お料理も食べ終わったのに、若い2人が一緒にいたって何も話す事なんてないんだからっ
「悠、後で相川さんを送ってあげなさいね」
「わかってるよ、母さん」
そう言って相手のご両親は私に一礼してこの個室から出た。
私も慌てて会釈をしたら、ギュッと足を踏まれて、危うく変な声が出そうになった。
…お母さんだ。
「優、ちゃんとしなさいよ。高梨さんに失礼のないようにね」
そう言ったお母さんも、相手の男性に軽く礼をして出た。
…何をちゃんとするのか全く意味がわからなかったんだけど。
最後に出て行ったお母さんが襖を閉めると、部屋には私と相手の男性の2人だけになった。
「…………………」
「…………………」
…困ったなぁ。
2人きりにされたら、余計に何話したらいいかわかんないよぉ。
考えてみれば、私はこれまでの人生で男性と2人で話をするような機会は殆どなかった。
もちろん勇さんは別。
というか、男性と付き合ったのも勇さんが初めてだ。
中学校くらいまでは人並みに男子生徒に淡い恋をした事もあったけど、高校からは女子校だったし基本的に男性と縁もなかったのだ。
今更男性と縁なんて必要ないから別にいいんだけど、とにかくこの時間をどう費やしたらいいのかがわからなかった。
「…心ここにあらず、て感じですね」
「えっ あ…っ」
突然そう言われて、私はドキンとした。
「ずっと、下を向いておられた。
母さんたちの話が長すぎて、きっと退屈されたのでしょう?」
ドキドキドキーン!
ず 図星だ…!
私は相手の事など殆ど見ていなかったけど、彼は私の事を見ていたんだ!
「す…すみません…っ」
これが本当のお見合いだったら、この時点できっとお見合いの話は終わってる。
どちみちお断りを入れるつもりではあったんだけど、だからってお見合いの席で上の空なんて相手に失礼すぎたかもしれない。
私は頭を下げて謝ると、相手の男性…高梨さんはふふっと笑って返してくれた。
「謝らなくてもいいよ。
僕も母さんに無理やりお見合いさせられたクチなんだから」
「え…?
高梨さんも…なんですか?」
どんな事情があるのかはわからないけど、親の為にお見合いに応じたって人間は私だけじゃなく他にもいたんだ。
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