デートをしよう!

むらさ樹

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デートをしよう

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大地だいちくん!」

下校中、後ろから俺を呼ぶ声がして足をとめた。
振り向かなくても、パタパタと走ってくる足音とその声を聞いたら誰なのかわかる。


「なんだよ、つばさ

振り向きざまにそう俺が呼び返すと、声の主がハァハァと肩で息をしながら俺の前で止まった。

短めのボブで切りそろえた髪形は昔から変わらない。
背はもう止まってきたのか、俺との差は開いていくばかりで小さく映る。


「大地くん、歩くの早すぎ!
どうせ家も隣同士なんだから、一緒に帰ろうよぉ」

「何で家が隣同士だからって、一緒に帰らなきゃならないんだよ。
別々だっていいだろ?」

「んもぉ、私たち昔からずっと一緒だったのにぃ」


俺と翼は、いわゆる幼なじみの関係ってヤツだ。
別に付き合っているとか、そういうわけじゃあない。

昔から、お互いの親が仲が良いってのもあって、それから偶然同じ日に生まれた俺たちも小さい頃からよく一緒に遊んでた。

その頃は友達と言えばコイツってぐらいの関係だったけど、だからってだんだんと年を重ねるに従って、それも腐れ縁になってきたって感じだな。


「っていうかね、実は今日、大地くんに相談したい事があるの!
聞いてくれる?」

「はぁ?
今日は何の相談だよ?」


翼は何かあったらすぐ俺に相談って言ってくるんだよな。

この前は、翼の友達が彼氏に何プレゼントしたらいいかわからないから何か良い物教えて~って言ってたな。
何で俺が翼じゃなくて、翼の友達の心配までしなきゃなんないんだっての。


中学の時なんかは、どこの高校に進学したらいいかわからない~とか言ってさ。
自分の進路先すら自分で決めらんねーなんて、ホント世話が焼けるってんだよ。

で結局、俺の進学希望したこの高校に、「私もそこにする!」って言ってノコノコついて来たんだよな。

しかも、「大地くんと一緒だから安心だね!」だとさ。
まったく、俺は翼の保護者じゃないっての。

今だって、どうせロクでもない事を言ってくるに違いない。
……と、思っていたんだけども。


「あのね、大地くん。
私と、デートしてほしいの」

「………………………は!?」


ケロッとした表情で突拍子もない事を言い出すもんだから、俺の方が思わず動揺してしまった。

急に何を言い出すんだコイツはっ!


「あっ、違うのっ。
デートってホントのデートじゃなくってね、デートを教えてほしくてデートしてって言ったんだよ」

「ちょっ、意味わかんねぇぞ!
ちゃんと説明しろっ」


俺の方は動揺してんのに、翼は全く冷静になって言ってくる。

て言うか、何で俺が動揺しなきゃなんねぇんだよっ


「あの、実はね……」

そう言い出した途端、今までケロッとしていた表情が急に照れくさそうに手で顔を覆った翼。

何だ?
今度は何なんだ?


「だ、誰にもナイショだよっ
実は……3年の先輩に、今度一緒に遊ぼって誘われちゃって……っ」

「3年の、誰なんだよ」

「えっと、……西園寺さいおんじ先輩」


あー、聞いた事がある。
親がデッカい会社の社長か何かで、すげぇ金持ちな上にすげぇイケメンだっていう奴だ。


3年と俺たち2年は校舎が向かい合っているだけで、普段すれ違う事はない。

だけど窓から西園寺先輩が女子生徒に囲まれてる所は、何度も見たことがあるな。

確かに俺とは比べもんにならねえくらいイケメンだったけど、でもそんな奴が翼に誘いを……?


「それでね、私デートとかした事ないから、どんな事したらいいかわかんなくって。
だから大地くん、デートの練習に付き合ってほしいなぁって思って」

「…………………」


……なんだ、そういう事情かよ。
急に俺とデートなんて言うからドキッとしたじゃないか。

ていうか、高2にもなってデートの練習とかドンダケだよ。



「……ダメ?」

「ダメって言うか……何でそんな事を俺が付き合わなきゃなんないんだよ。
翼の友達にでも教えてもらえばいいだろ?」

「え~っ、友達は逆に言えないよぉ!
それに私、男子の友達もいないし、こんな事頼めるの大地くんしかいないんだもん」


なんて今にも泣きそうな顔して俺を見上げる翼。

……ったく。
その顔は反則だっての。


「あー、わかったわかった!
わかったよ!」


こんな所で泣きつかれちゃたまんねぇからな。



――そういうわけで、今回も翼の相談に乗る羽目になったわけだ。


やれやれ。
まぁ翼の面倒をみるのは、昔っからだから慣れてるっちゃ慣れてるから、別にいいんだけどさ。




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