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幸せに、なりたいと思ってます…! 1
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「お疲れ様、妹尾さん」
「…イチゴバラさんっ」
今日も仕事を終えた21時過ぎ。
いつもの場所で待ち合わせて、一緒に帰るのが日課になってきたイチゴバラさんとの時間。
「妹尾さん。
はい、今日もこれ」
仕事あがりの私にイチゴバラさんが手渡してくれたのは、冷たい缶コーヒーだった。
甘くてミルクも入った、カフェオレ。
これも、毎日の日課になってるの。
「ありがとうございます。
でも、そんなに気を遣われなくてもいいですよ」
「いえ、好きでやってるんです。何か妹尾さんにしてあげたくて…。
ご迷惑、でしたか?」
「そんな事っ
…とっても嬉しいです//」
イチゴバラさんの、私に対する好きって気持ちがスゴく伝わってくる。
こんな風に男の人に愛された事なんてなかったから、何だかくすぐったい。
でも、私もそんなイチゴバラさんの気持ちを大事にしたいって思うの。
「…妹尾さん」
「はい?
…ぁ………」
チラっとまわりに誰もいないのを確認したイチゴバラさんは私の肩を抱くと、そのまま顔を寄せ唇を重ねた。
「…ん……」
まだ残ってるスタッフたちが通りかかるかもしれないので、そんな長いキスではなかったけれど。
やがて合わせた唇を離したイチゴバラさんは、すぐに顔を赤くして照れ笑いをした。
「す すみませんっ//
その、どうしても…っ」
「い いえっ//」
いい年して、まるでお互い初々しい恋愛初心者みたい。
クスリと心の中で笑いつつも、でもあの事で動揺が顔に出ないよう、私も必死だったの。
「へぇ、ひな子さんって仰るんですか。
すみません、今頃になって名前を訊くなんて失礼でしたよね」
家に向かうまっすぐの夜道を、私はイチゴバラさんと並んで歩く。
イチゴバラさんの家はうちと同じ方角らしいと思ってたけど、それが慎吾くんの家だとわかると合点がいく。
「そんな事ないですよ。
って言うか、ひなだなんて、ある意味名前のまんまって感じですよね」
あはは…と自虐ネタに自分で笑いながら、胸の内ではモヤモヤと戦っていた。
まさか私が、自分の子どもとそんな関係になっていたとは夢にも思わないだろうからね。
今はまだどちらにも気付かれていないけれど、でもこのままイチゴバラさんとの関係を続けていたらいつかはバレてしまう。
それに、たとえ慎吾くんとの関係を絶っていても、慎吾くんと身体の繋がりがあったという事実だけは変わらないんだから…っ
「えぇ、本当に。
可愛らしくて、守ってあげたくなる。そんな女性らしい素敵な名前だと思います」
「あ…ありがとう ございます…っ」
スゴく純粋に、私を愛してくれているイチゴバラさん。
もしそんなイチゴバラさんに慎吾くんとの事を知られたら…どんなに傷付けちゃうだろう。
私は、これからどうしたらいいの…?
「そうだ。連絡先、交換しませんか?
そうすれば、帰ってからもゆっくり話せる時間が取れるだろうし」
「あ…はい、そうですね」
ピタリ 足を止めた私たちは、イチゴバラさんの提案にケータイを取り出した。
家は近いご近所さんではあるんだけど、今はまだお互いの家は知らない方がいいかもしれないしね。
「って、あれ…?」
既にケータイを取り出して準備しているイチゴバラさんに対して、私はバッグの中を探しているのに見当たらない。
「おかしいなっ
ずっとここに入れてたのに…っ」
「どうしました?」
普段ケータイは、外を出歩く時に使うバッグに入れてる事が多い。
今日も慎吾くんの家にお財布を返しに行った時もバッグに入れてたし、その時までは間違いなくあったハズだから…
………まさか。
──『えーっ
だってそうでもしなきゃ、ひなが来てくれないじゃん』
まさかまさか。
ようやくお財布を返したかと思ったら、今度は私のケータイを取られちゃってる!?
慎吾くん、私がもう来ないって言ったから、それで…っ
「…イチゴバラさんっ」
今日も仕事を終えた21時過ぎ。
いつもの場所で待ち合わせて、一緒に帰るのが日課になってきたイチゴバラさんとの時間。
「妹尾さん。
はい、今日もこれ」
仕事あがりの私にイチゴバラさんが手渡してくれたのは、冷たい缶コーヒーだった。
甘くてミルクも入った、カフェオレ。
これも、毎日の日課になってるの。
「ありがとうございます。
でも、そんなに気を遣われなくてもいいですよ」
「いえ、好きでやってるんです。何か妹尾さんにしてあげたくて…。
ご迷惑、でしたか?」
「そんな事っ
…とっても嬉しいです//」
イチゴバラさんの、私に対する好きって気持ちがスゴく伝わってくる。
こんな風に男の人に愛された事なんてなかったから、何だかくすぐったい。
でも、私もそんなイチゴバラさんの気持ちを大事にしたいって思うの。
「…妹尾さん」
「はい?
…ぁ………」
チラっとまわりに誰もいないのを確認したイチゴバラさんは私の肩を抱くと、そのまま顔を寄せ唇を重ねた。
「…ん……」
まだ残ってるスタッフたちが通りかかるかもしれないので、そんな長いキスではなかったけれど。
やがて合わせた唇を離したイチゴバラさんは、すぐに顔を赤くして照れ笑いをした。
「す すみませんっ//
その、どうしても…っ」
「い いえっ//」
いい年して、まるでお互い初々しい恋愛初心者みたい。
クスリと心の中で笑いつつも、でもあの事で動揺が顔に出ないよう、私も必死だったの。
「へぇ、ひな子さんって仰るんですか。
すみません、今頃になって名前を訊くなんて失礼でしたよね」
家に向かうまっすぐの夜道を、私はイチゴバラさんと並んで歩く。
イチゴバラさんの家はうちと同じ方角らしいと思ってたけど、それが慎吾くんの家だとわかると合点がいく。
「そんな事ないですよ。
って言うか、ひなだなんて、ある意味名前のまんまって感じですよね」
あはは…と自虐ネタに自分で笑いながら、胸の内ではモヤモヤと戦っていた。
まさか私が、自分の子どもとそんな関係になっていたとは夢にも思わないだろうからね。
今はまだどちらにも気付かれていないけれど、でもこのままイチゴバラさんとの関係を続けていたらいつかはバレてしまう。
それに、たとえ慎吾くんとの関係を絶っていても、慎吾くんと身体の繋がりがあったという事実だけは変わらないんだから…っ
「えぇ、本当に。
可愛らしくて、守ってあげたくなる。そんな女性らしい素敵な名前だと思います」
「あ…ありがとう ございます…っ」
スゴく純粋に、私を愛してくれているイチゴバラさん。
もしそんなイチゴバラさんに慎吾くんとの事を知られたら…どんなに傷付けちゃうだろう。
私は、これからどうしたらいいの…?
「そうだ。連絡先、交換しませんか?
そうすれば、帰ってからもゆっくり話せる時間が取れるだろうし」
「あ…はい、そうですね」
ピタリ 足を止めた私たちは、イチゴバラさんの提案にケータイを取り出した。
家は近いご近所さんではあるんだけど、今はまだお互いの家は知らない方がいいかもしれないしね。
「って、あれ…?」
既にケータイを取り出して準備しているイチゴバラさんに対して、私はバッグの中を探しているのに見当たらない。
「おかしいなっ
ずっとここに入れてたのに…っ」
「どうしました?」
普段ケータイは、外を出歩く時に使うバッグに入れてる事が多い。
今日も慎吾くんの家にお財布を返しに行った時もバッグに入れてたし、その時までは間違いなくあったハズだから…
………まさか。
──『えーっ
だってそうでもしなきゃ、ひなが来てくれないじゃん』
まさかまさか。
ようやくお財布を返したかと思ったら、今度は私のケータイを取られちゃってる!?
慎吾くん、私がもう来ないって言ったから、それで…っ
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