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昨日はいつもより多めに作って、陳列していたサラダ。

しかも、おかげさまで完売し、たくさんのお客さんの手に渡ったわけなのだ。



不特定多数のお客さんが利用する、うちの“デリカ popo”

だけどサラダなんかは比較的女性に人気な商品なので、男性なんかが買ってくれたりすると「おっ!」と思ったりするのだ。


ましてや、昨日は2つも買ってくれた男性のお客さんなんて、特に強く印象に残りそうなんだけど……





──『待って下さい。
それも、僕が買います』


──『え?このサラダですか?
でもイチゴバラさん、それだと2つに…』


──『いいんです。サラダは好きだし、何より…
せっかく妹尾さんが取っておいてくれたものですから、無駄にしたくないんです。
買わせて下さい』




「………………………」



2つのサラダで、私は昨日のイチゴバラさんとのやり取りを思い出した。


女性のお客さんなら、何人かがサラダを2つとか3つとか買って行った人はいたけれど。

男性で2つ以上買ってくれた人って言ったら…イチゴバラさんしか思い出せないの。



え…ちょっと待ってよ。

じゃあそれだと、イチゴバラさんは慎吾くんの…



「…………ひな?
どーしたの。固まっちゃってるよ?」



すっかり頭の中が真っ白になっていて、私はサラダを持ったまま立ち尽くしていたようだった。


心配そうに私の顔を覗き込んできた慎吾くんだけど、私もそんな慎吾くんの顔をマジマジと凝視した。



17歳になったばかりとは思えないくらい、ちょっと大人びた顔をしている慎吾くん。


髪はそれが今時なのか知らないけど、茶髪で適当に指でとかした程度の雑さと、長い前髪。


着ているTシャツはクタクタで、どちらかと言わなくともだらしないに類する方だと思われるけど。

でもそれも、今時の若者のファッションと言われたら否定はできないかな。



それに対してピシッとスーツを着こなしている誠実そうなイチゴバラさんだから、2人が似てるとは思えないかも。



だけど…



「慎吾くん…昨日はサラダしか買って行かなかったけど、晩ご飯は他に何を食べたの…?」


「えー?
だから、昨日はオヤジがあれこれ買ってきてくれたから、それ食べたんだよ」



「…………………っ」



サラダ2つ以外にも、いくつか惣菜を買ってくれたイチゴバラさん。


以前、仕事の関係で息子さんにお使いを頼んでいたって言ってたイチゴバラさん。


それから私が慎吾くんの家でご飯を作ってあげてるしばらくの間は、イチゴバラさんは息子さんがご飯の用意をしているから、惣菜は私に会う口実の為にって、1つしか買わなかったんだ。



そして…



──『えぇ。うちの子も気まぐれみたいでして、昨日は帰ってみたら何も用意してなくて困ったものでしたよ』



私が慎吾くんの家に行かなくてご飯を作ってあげなかった時の事も、それで一致する。



という事は………




「…イチゴバラ…くん?」


「ええっ!?
ひな、何で俺の苗字知ってんの!?」



あぁ…やっぱり。

イチゴバラなんて、珍しい名前だもの。
同姓なんて滅多にないと思う。



だからもう、間違いない。


慎吾くんとイチゴバラさんは、親子関係だったんだ。



なのに、私ったらそんな事も知らないで………っ







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