83 / 119
5
しおりを挟む
『ずっとこの先も、僕が妹尾さんを守ってあげたいって思ってるんです』
…この言葉が、何を意味しているのか。
もちろん、わからないわけはない。
だけど、具体的にその言葉を言われないと……
「…好きです」
「…………………っ」
全身に雷でも浴びてしまったかのように、ビリビリと痺れたような感覚が襲った。
「妹尾さん、あなたの事が好きなんです」
「ぁ…………////」
車が通り過ぎる音と光だけで、後はなにもない2人だけの空間。
まっすぐに私を見つめる彼の瞳。
それから、私に対する明確でストレートな気持ちを表した言葉。
『好きです』
生まれて初めてのシチュエーションに、胸がいっぱいで立ってるだけで精一杯。
動けなくなってしまった。
「ずっと見てるだけじゃ、気持ちが抑えられなくなってきたんです。
どうか今後も僕の側にいて、守らせてはもらえませんか…?」
「…イチゴバラさん…っ」
彼の側にいて、ずっと守ってもらえるの。
彼なら、ずっと私を大事にしてくれる。
生涯を捧げて、私は彼の為に──────…
「……………………」
「……………………」
お互いがお互いを見つめ合い、目が離せない。
私を優しくも真剣な顔で見つめるイチゴバラさんからは、誠実さがスゴく伝わるの。
彼なら、信頼できる。
私ももう、29。
イチゴバラさんも、子どもさんがいるお父さん。
私が返す言葉1つで、それが単に好きだという感情だけでするお付き合いとは違う関係になるの。
適齢期はとっくに過ぎちゃっている。
こんな私に声をかけてくれるイチゴバラさんとの縁は、ありがたい話なのよ…!
「………あ、すみません。急にそんな事を言われても困りますよね。
あの、返事はいつでも構いませんので──…」
「…嬉しいです」
「っ!」
何だろう。
自分の中で気持ちの整理ができちゃったせいか、さっきまでのドキドキ緊張感が和らいできた。
私、この人のお嫁さんになるかもしれない。
そう思うと、変な意識をしなくなって冷静になってきたの。
「妹尾さん、あの…」
「私、こんな見た目だから、普通の人よりもスゴく頼りなく見えちゃうかもしれませんが…」
同級生の子にイチゴバラさんの事を言われた『お父さんじゃないよねぇ』にはショックだったけど、でも多分それが現実だと思う。
私とイチゴバラさんが並んでも、夫婦に見える日はずっと先かもしれないな。
でも、そんな私でも受け入れてくれるって言うなら…いいのっ。
「これから先、私の事を守ってくれますか…?」
童顔な私を、大人扱いしてくれる。
ずっと恋愛に縁がなくて、このまま結婚も出来ないのかもって思ってた私に、ようやく巡ってきた大人のお付き合い。
彼なら私を、幸せにしてくれるんだ───…
「よかった!」
「ひゃあっ///」
私は突然イチゴバラさんに抱きしめられ、その懐に顔が埋まった。
その時、仕事あがりだから感じた汗のニオイだけど、別に嫌なニオイじゃい。
むしろどこかで…?
「あぁ、すみませんっ
つい、嬉しくてっ//」
「あ…いえっ
私は大丈夫ですからっ////」
慌てて私の肩を掴んで引き離したイチゴバラさんだけど、顔を真っ赤にしながら、でも口元が緩んでいた。
いくら歩行者は近くにいないって言ったって、車は次から次と通っている。
でも車内から見られたところで、ほんの一瞬だし顔だって夜だからよく見えないだろう。
だけど、だからこそと言うべきか、むしろお構いなしと言うべきか。
「…妹尾さん」
「ぁ…はい…っ///」
再び私の肩を掴んだイチゴバラさんが、ジッと至近距離から私を見つめた。
…わかる。
彼が何をしようとしているか。
「妹尾さん。
ずっと、ずっと僕があなたを守っていきます。
だから…ずっと、ずっと僕の側にいて下さい」
ゆっくりと近付いてくる、イチゴバラさんの顔。
私は真剣に想いを伝えてくれる彼の言葉に返事できず、黙ったまま目を閉じた。
「…愛してます、妹尾さん」
「…ん…………」
そう放った言葉の後に感じた、熱くて柔らかい感触。
初めて触れた唇と唇。
ただ長く、静かに重ねられただけのものだったけど…
でもそれは私が初めて体験した、大人としてのキスだったの──────…。
…この言葉が、何を意味しているのか。
もちろん、わからないわけはない。
だけど、具体的にその言葉を言われないと……
「…好きです」
「…………………っ」
全身に雷でも浴びてしまったかのように、ビリビリと痺れたような感覚が襲った。
「妹尾さん、あなたの事が好きなんです」
「ぁ…………////」
車が通り過ぎる音と光だけで、後はなにもない2人だけの空間。
まっすぐに私を見つめる彼の瞳。
それから、私に対する明確でストレートな気持ちを表した言葉。
『好きです』
生まれて初めてのシチュエーションに、胸がいっぱいで立ってるだけで精一杯。
動けなくなってしまった。
「ずっと見てるだけじゃ、気持ちが抑えられなくなってきたんです。
どうか今後も僕の側にいて、守らせてはもらえませんか…?」
「…イチゴバラさん…っ」
彼の側にいて、ずっと守ってもらえるの。
彼なら、ずっと私を大事にしてくれる。
生涯を捧げて、私は彼の為に──────…
「……………………」
「……………………」
お互いがお互いを見つめ合い、目が離せない。
私を優しくも真剣な顔で見つめるイチゴバラさんからは、誠実さがスゴく伝わるの。
彼なら、信頼できる。
私ももう、29。
イチゴバラさんも、子どもさんがいるお父さん。
私が返す言葉1つで、それが単に好きだという感情だけでするお付き合いとは違う関係になるの。
適齢期はとっくに過ぎちゃっている。
こんな私に声をかけてくれるイチゴバラさんとの縁は、ありがたい話なのよ…!
「………あ、すみません。急にそんな事を言われても困りますよね。
あの、返事はいつでも構いませんので──…」
「…嬉しいです」
「っ!」
何だろう。
自分の中で気持ちの整理ができちゃったせいか、さっきまでのドキドキ緊張感が和らいできた。
私、この人のお嫁さんになるかもしれない。
そう思うと、変な意識をしなくなって冷静になってきたの。
「妹尾さん、あの…」
「私、こんな見た目だから、普通の人よりもスゴく頼りなく見えちゃうかもしれませんが…」
同級生の子にイチゴバラさんの事を言われた『お父さんじゃないよねぇ』にはショックだったけど、でも多分それが現実だと思う。
私とイチゴバラさんが並んでも、夫婦に見える日はずっと先かもしれないな。
でも、そんな私でも受け入れてくれるって言うなら…いいのっ。
「これから先、私の事を守ってくれますか…?」
童顔な私を、大人扱いしてくれる。
ずっと恋愛に縁がなくて、このまま結婚も出来ないのかもって思ってた私に、ようやく巡ってきた大人のお付き合い。
彼なら私を、幸せにしてくれるんだ───…
「よかった!」
「ひゃあっ///」
私は突然イチゴバラさんに抱きしめられ、その懐に顔が埋まった。
その時、仕事あがりだから感じた汗のニオイだけど、別に嫌なニオイじゃい。
むしろどこかで…?
「あぁ、すみませんっ
つい、嬉しくてっ//」
「あ…いえっ
私は大丈夫ですからっ////」
慌てて私の肩を掴んで引き離したイチゴバラさんだけど、顔を真っ赤にしながら、でも口元が緩んでいた。
いくら歩行者は近くにいないって言ったって、車は次から次と通っている。
でも車内から見られたところで、ほんの一瞬だし顔だって夜だからよく見えないだろう。
だけど、だからこそと言うべきか、むしろお構いなしと言うべきか。
「…妹尾さん」
「ぁ…はい…っ///」
再び私の肩を掴んだイチゴバラさんが、ジッと至近距離から私を見つめた。
…わかる。
彼が何をしようとしているか。
「妹尾さん。
ずっと、ずっと僕があなたを守っていきます。
だから…ずっと、ずっと僕の側にいて下さい」
ゆっくりと近付いてくる、イチゴバラさんの顔。
私は真剣に想いを伝えてくれる彼の言葉に返事できず、黙ったまま目を閉じた。
「…愛してます、妹尾さん」
「…ん…………」
そう放った言葉の後に感じた、熱くて柔らかい感触。
初めて触れた唇と唇。
ただ長く、静かに重ねられただけのものだったけど…
でもそれは私が初めて体験した、大人としてのキスだったの──────…。
0
お気に入りに追加
16
あなたにおすすめの小説
皇太子夫妻の歪んだ結婚
夕鈴
恋愛
皇太子妃リーンは夫の秘密に気付いてしまった。
その秘密はリーンにとって許せないものだった。結婚1日目にして離縁を決意したリーンの夫婦生活の始まりだった。
本編完結してます。
番外編を更新中です。
挙式後すぐに離婚届を手渡された私は、この結婚は予め捨てられることが確定していた事実を知らされました
結城芙由奈
恋愛
【結婚した日に、「君にこれを預けておく」と離婚届を手渡されました】
今日、私は子供の頃からずっと大好きだった人と結婚した。しかし、式の後に絶望的な事を彼に言われた。
「ごめん、本当は君とは結婚したくなかったんだ。これを預けておくから、その気になったら提出してくれ」
そう言って手渡されたのは何と離婚届けだった。
そしてどこまでも冷たい態度の夫の行動に傷つけられていく私。
けれどその裏には私の知らない、ある深い事情が隠されていた。
その真意を知った時、私は―。
※暫く鬱展開が続きます
※他サイトでも投稿中
王妃の手習い
桃井すもも
恋愛
オフィーリアは王太子の婚約者候補である。しかしそれは、国内貴族の勢力バランスを鑑みて、解消が前提の予定調和のものであった。
真の婚約者は既に内定している。
近い将来、オフィーリアは候補から外される。
❇妄想の産物につき史実と100%異なります。
❇知らない事は書けないをモットーに完結まで頑張ります。
❇妄想スイマーと共に遠泳下さる方にお楽しみ頂けますと泳ぎ甲斐があります。
ずぶ濡れで帰ったら彼氏が浮気してました
宵闇 月
恋愛
突然の雨にずぶ濡れになって帰ったら彼氏が知らない女の子とお風呂に入ってました。
ーーそれではお幸せに。
以前書いていたお話です。
投稿するか悩んでそのままにしていたお話ですが、折角書いたのでやはり投稿しようかと…
十話完結で既に書き終えてます。
【完結】俺様御曹司の隠された溺愛野望 〜花嫁は蜜愛から逃れられない〜
雪井しい
恋愛
「こはる、俺の妻になれ」その日、大女優を母に持つ2世女優の花宮こはるは自分の所属していた劇団の解散に絶望していた。そんなこはるに救いの手を差し伸べたのは年上の幼馴染で大企業の御曹司、月ノ島玲二だった。けれど代わりに妻になることを強要してきて──。花嫁となったこはるに対し、俺様な玲二は独占欲を露わにし始める。
【幼馴染の俺様御曹司×大物女優を母に持つ2世女優】
☆☆☆ベリーズカフェで日間4位いただきました☆☆☆
※ベリーズカフェでも掲載中
※推敲、校正前のものです。ご注意下さい
この度、仮面夫婦の妊婦妻になりまして。
天織 みお
恋愛
「おめでとうございます。奥様はご懐妊されています」
目が覚めたらいきなり知らない老人に言われた私。どうやら私、妊娠していたらしい。
「だが!彼女と子供が出来るような心当たりは一度しかないんだぞ!!」
そして、子供を作ったイケメン王太子様との仲はあまり良くないようで――?
そこに私の元婚約者らしい隣国の王太子様とそのお妃様まで新婚旅行でやって来た!
っていうか、私ただの女子高生なんですけど、いつの間に結婚していたの?!ファーストキスすらまだなんだけど!!
っていうか、ここどこ?!
※完結まで毎日2話更新予定でしたが、3話に変更しました
※他サイトにも掲載中
同期の御曹司様は浮気がお嫌い
秋葉なな
恋愛
付き合っている恋人が他の女と結婚して、相手がまさかの妊娠!?
不倫扱いされて会社に居場所がなくなり、ボロボロになった私を助けてくれたのは同期入社の御曹司様。
「君が辛そうなのは見ていられない。俺が守るから、そばで笑ってほしい」
強引に同居が始まって甘やかされています。
人生ボロボロOL × 財閥御曹司
甘い生活に突然元カレ不倫男が現れて心が乱される生活に逆戻り。
「俺と浮気して。二番目の男でもいいから君が欲しい」
表紙イラスト
ノーコピーライトガール様 @nocopyrightgirl
公爵様、契約通り、跡継ぎを身籠りました!-もう契約は満了ですわよ・・・ね?ちょっと待って、どうして契約が終わらないんでしょうかぁぁ?!-
猫まんじゅう
恋愛
そう、没落寸前の実家を助けて頂く代わりに、跡継ぎを産む事を条件にした契約結婚だったのです。
無事跡継ぎを妊娠したフィリス。夫であるバルモント公爵との契約達成は出産までの約9か月となった。
筈だったのです······が?
◆◇◆
「この結婚は契約結婚だ。貴女の実家の財の工面はする。代わりに、貴女には私の跡継ぎを産んでもらおう」
拝啓、公爵様。財政に悩んでいた私の家を助ける代わりに、跡継ぎを産むという一時的な契約結婚でございましたよね・・・?ええ、跡継ぎは産みました。なぜ、まだ契約が完了しないんでしょうか?
「ちょ、ちょ、ちょっと待ってくださいませええ!この契約!あと・・・、一体あと、何人子供を産めば契約が満了になるのですッ!!?」
溺愛と、悪阻(ツワリ)ルートは二人がお互いに想いを通じ合わせても終わらない?
◆◇◆
安心保障のR15設定。
描写の直接的な表現はありませんが、”匂わせ”も気になる吐き悪阻体質の方はご注意ください。
ゆるゆる設定のコメディ要素あり。
つわりに付随する嘔吐表現などが多く含まれます。
※妊娠に関する内容を含みます。
【2023/07/15/9:00〜07/17/15:00, HOTランキング1位ありがとうございます!】
こちらは小説家になろうでも完結掲載しております(詳細はあとがきにて、)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる