ひな*恋 〜童顔ひな子の年の差恋愛(ノベル版)

むらさ樹

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さすが平日。

それからは、パッタリと客足が途絶えてしまった“デリカ popo”



「おーい、ひな坊。
客が来んぞー」



ちょっと暇を持て余してきた久保店長が、そんな事を私に言う。


「あらやだ。
じゃあ、あたし店頭に出て旗振ってこようかしら?」


「バカったれ。
小山が旗振ったら余計に客が引く」


「んまぁ、久保店長ったら!」




……………………。


いい加減慣れてる夫婦漫才に苦笑いを返すと、私も暇になった厨房に戻り片付けや掃除を手伝った。



だけどまだ20時。

うちの店は、この閉店1時間前に利用するお客さんが案外いるんだから。




「………って、あっ!」



早速レジカウンターにお客さんが現れたのが厨房から見え、私は慌ててレジの方へと駆けって行った。

普段はもっと遅い時間に来るから、まだだろうと思ってたんだけど。



「いらっしゃいませ!
お待ちしていましたよっ」


いつもと同じようにスーツ姿で仕事あがりを物語っているそのお客さんは、私が出て来たのを確認するとパッと優しい笑みを見せてくれたの。



「こんばんは、妹尾さん」


「こんばんは。
…イチゴバラさん!//」



既に私の心臓はドキドキバクバク鳴っていた。
だって、意識しすぎてるの自分でもわかってるもん!



「イチゴバラさん、今日はお早いんですね。
お仕事、お疲れさまでした」


「えぇ。今日はいつもより早く終わったので、急いで来ましたよ」



走って来たのか、若干額に汗をにじませているのが見て取れた。


昨日は売り切れちゃってたサラダ、今日はよほど本気で欲しかったのかなぁ?


だけどそんな事もあろうかと、今日は1つだけ取り置きしているんだよね。



「って、あら。
サラダ残ってましたか」



そんなイチゴバラさんがカウンターに持ってきた中にはサラダがちゃんとあったのだ。


しかも、なぜか今日はサラダだけじゃなく他にいろんな惣菜が3つ4つとある。



「えぇ、最後の1つが残ってました。
妹尾さんが残るよう祈っててくれたお陰かな」


「あぁ…そうですね」



あらら。
取り越し苦労だったかな。

サラダ好きな女性客の来店が多い時間も過ぎたから、そのまま残ってたんだ。



「…どうかしました?」


「え、あ…いえ。
実は…」



私はレジ袋に包んでカウンター下に隠すように取り置きしていたサラダを取り出すと、イチゴバラさんに説明した。



「取っておいてくれてたんですか?
…僕の為に」


「あはっ
だってせっかく買いに来て下さるのに、売り切れちゃってたら申し訳ないんですもの」



イチゴバラさんも、私の作るサラダを気に入ってくれてるんだよね。


男の人でも、やっぱりサラダみたいなヘルシーであっさりしたものとか食べたいんだね。




「…だけど、今日は売り切れなかったようで安心しました。
これも、いらなかったみたいですね」



レジ袋に入ってれば、間違って誰かの手に渡っちゃう事もないと思って入れてたんだけど。

イチゴバラさんの手には無事に1つ渡ったわけだし、これはまた陳列棚の方に入れとこうかなぁ。




「待って下さい。
それも、僕が買います」


「え?このサラダですか?
でもイチゴバラさん、それだと2つに…」


「いいんです。サラダは好きだし、何より…
せっかく妹尾さんが取っておいてくれたものですから、無駄にしたくないんです。
買わせて下さい」


「……………っ」



別に、押し付けるだとか売り上げがどうとか言う話ではないんだけど。


まさか、私が取り置きしてた分も買いたいだなんて言うとは思わなかったな。



「…ありがとうございます。
なのに今日は、他にもいっぱい買って下さるんですね」



買わせて下さいなんて言われれば、私もダメだなんて言うわけにいかないもんね。


私は2つのサラダのバーコードを通すと、他にも持ってきている惣菜のバーコードを1つずつ通した。




「えぇ。うちの子も気まぐれみたいでして、昨日は帰ってみたら何も用意してなくて困ったものでしたよ」


「あらら。
そうなんですか」



確かイチゴバラさんには、高校生の男の子がいるんだったっけ。


お父さんが忙しくて買いに来れない日は代わりにお使いに来て、最近では自ら進んで用意しているらしいじゃない?


…まったくっ

すっかり赤の他人におんぶに抱っこな慎吾くんとは、エラい違いだわ。




「今日も帰ったら何もないじゃいけないと思って、それでなんです。
それに、ここのおかずはどれも好きですからね」


「そうなんですかぁ。
でも、たまには楽したいですよねっ
ありがとうございます!」



お財布置いて帰っちゃうような無茶なんかする暇あるんなら、慎吾くんもイチゴバラさんとこの息子さんを見習えばいいのにっ


なんて、言っても仕方ないんだけどね。

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