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協力したいって、思ってるんです! 1
しおりを挟む「………出て来ないな」
翌日。
今日も午前中から、いつものように慎吾くんの家に行き、ドアの前でインターフォンを押して待っているのだけど。
「あれ?
鍵も閉まってるよぉ」
だいたい、いつも私がこうしてやって来ると…
『いらっしゃい、ひなぁ!』
『ひゃあっ///』
…てな感じで、私の胸に飛び付いてくるんだけどなぁ。
とりあえずケータイを取り出して着信を確認してみたけれど、特に慎吾くんからは電話もメールも何も残っていなかった。
「…留守をするなら留守をするって、連絡してくれたらいいのに。
それとも、今日って何かあるのかなぁ」
さすがに慎吾くんの家の鍵までは持っていない私は、開かないドアの前に居たって仕方ないわけで。
「…どっかで時間潰して、また来ようかな」
別にうちと慎吾くんの家は、目と鼻の先くらい近い位置にあるわけだし。
それに、近くには本屋さんだってあるからなぁ。
「…うん、たまには本屋さんに行ってみよう」
立ち読みは腰に来るからあんまりできないけど、ちょっとくらいなら気分変わっていいよね。
って、ドンダケ私ってば年寄りなんだか!
午前中から日差しも強い外を歩き、ようやくうちの近くでもある本屋さんにとたどり着いた。
開いた自動ドアをくぐって店内に入ると、ひんやりエアコンの効いた冷たい空気と「いらっしゃいませー」という従業員の声が気持ちよく感じた。
「えーっと…」
私は別に普段から本を読んだりとか、定期的に買ってる雑誌があるってわけじゃあない。
ファッション雑誌だとか、20代の女性が読むようなものさえも自分とは縁がないと思い、全く触れる事がなかった。
なので、当然ブランドものなんかも興味はない。
でもだからこそ、逆にお金を使う事も少なくて済むんだけどね。
「少女雑誌を読んでもいいけど、途中からじゃ話がわかんないし…」
もともと目的があったわけじゃなく、時間を潰す為に本屋さんに来たわけなのだ。
まぁ、のんびりと店内をうろうろしながら、読みたいものを探してみようかな。
んーでも、文庫本は立ち読みしたら店員さんに怒られちゃうかな。
だけど、漫画本はさすがにビニール梱包されてるから…………
「───あっ」
つらつらといろんな本の背表紙を見ながら歩き、その突き当たりの角を曲がると、見覚えのある姿を捉え立ち止まった。
いつも見るスーツ姿とは違い、でも落ち着いたグレーのシャツを着て何かの雑誌をパラパラとめくって見ている姿は、いつもと雰囲気が変わらない。
「…イチゴバラさんっ」
「えっ!
…あぁ、妹尾さん!」
私の呼びかけに最初は驚いたみたいだけど、すぐにあの優しい笑みを見せて応えてくれた。
昨日あんな事があったばかりの今日なので、ちょっぴりまだ動揺しちゃってる所があるんだけど。
でも見かけておいて無視する気にはなれず、且つ、今日は私が休みとも知らないで店の方に来ると言ってたので教えといてあげた方がいいかなと思ったのだ。
「もしかして、イチゴバラさん今日はお休みの日ですか?」
今日は日曜日だし、いくら休日出勤さえも余儀なくされてる日があるからって、こんな時間に普段着で本屋さんとかいないよね。
「えぇ、お陰様で久し振りの休みですよ」
「わぁ、それは良かったですね!」
毎日ずっと夜遅くまで仕事三昧のイチゴバラさんだけど、やっとの休日にゆっくり休めてる様子を目の当たりにできたのは私も嬉しかったりするよ。
「妹尾さん。実は今日、折角自分の時間が取れたので、子どもの為に何か手料理を食べさせてやろうと思いましてね。
それで、何かいいレシピはないか探しに来たんですよ」
そう言ってイチゴバラさんは手に持っていた雑誌を閉じて、その表紙を見せた。
それは主婦の人たちが読むような料理雑誌で、安さを売りにしたレシピやら、手間をかけないレシピなど、様々な料理が紹介されたものだった。
「手作りですか!
それは子どもさんも、きっと喜ばれますよねっ」
「えぇ。
だから今子どもが学校に行ってるうちに、買い出しとかも済ませようと思って」
「…え、学校…?」
今はまだ夏真っ盛りの8月だ。
学生さんなら普通は夏休みだから、学校なんてないハズなんだけど。
…あ、それとも部活関係とかかなぁ?
「夏休み中の登校日ですよ。
うちの高校は、学校行事の関係で今年は日曜日になってるようです」
「あぁ、登校日…!
て言うかそれよりも…子どもさん、高校生なんですか!」
以前までうちの店にお使いに来ていたらしいけれど、てっきりまだ料理は1人じゃできないような小学生か中学生くらいの女の子かなぁと何となくイメージしていた。
なのにイチゴバラさんって、実は高校生のお父さんなんだ!
え?
て事は、何歳…?
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