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初めて褒めてもらえました! 1

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「どうした、ひな坊!
今日はエラい気合い入れて来たな」


「気合いって言うか…やっぱりわかりました?」



15時

今日も仕事に入って、毎度お馴染みのサラダを作ろうと卵をボイルしようとした時だ。


私を見た途端に久保店長からそんな事を言われ、やっぱり気付いたんだなと思ってドキッとした。



「急に色気づいて、今日は彼氏とデートでも行ってきたのか?」


「色気づいてって!///
そ、そんなに変わりましたかねぇっ」



普段は堂々とすっぴんで仕事に来ているとは言え、珍しく薄化粧をして仕事に来ただけで、そんな風に言われるとは思わなかったな。


彼氏とデートってのは…まぁハズレでもないんだけど。




「まぁひなちゃんったら。
やっぱり若い子は、化粧のノリが違うわねぇ」



そんな私にツッコミを入れてきたのは、こちらも毎度お馴染みの小山さんだ。



よくよく考えてみたら、久保店長以外は女性で構成されているうちの職場で、堂々とすっぴんで出勤しているのは私だけなのだ。


そんな私が突然化粧をして来れば、ツッコミがきても別におかしくもないかもね。



「あの実は、この口紅お母さんが誕生日プレゼントで買ってくれたものなんです。
それで…」



別に今更オシャレをしようとか、デートだからとか、そんな理由で化粧をしてきたとかは思われなくない。

子どもみたいな顔してる奴が化粧なんてしても、まるで無理やり大人になりたくて背伸びしてるだけみたいに思われそうで、逆に虚しいだけだもんね。



「あらっ ひなちゃん、今日誕生日なの?
それはおめでとう!
一体いくつになったんだっけ」



…あぁ、しまった!

そんなつもりで言ったわけじゃないのに、でも考えてみれば当たり前な返しだなと後から気付く。


自分の年を改めて言う瞬間が、一番ツラい。


その度に、何度「えっ、まだ未成年かと思った!」と言われた事か…。




「…29に、なりました」


「まぁ、まだ29!?
若いっていいわねぇ~」


「あは…………」




ここのスタッフの人たちは、入社した時から私がただの童顔なのを知っているから、今更驚いたりはしない。

だけど…



「小山っ
お前なぁ、自分と比べりゃひな坊は若いに決まっとるだろうが!」



…とまぁ久保店長が言う通り、いくつになっても私が最年少なんだから、小山さんの反応は当たり前なんですよ。




そうやって始まった今日の勤務。


毎日同じ事の繰り返しみたいだけど、ここはスタッフの人たちが良い人ばかりだから楽しく仕事ができるの。


それと、店長自らが手掛ける創作料理は、私も勉強になるからありがたい!



「へぇぇっ
から揚げの粉が付いてるのに、そのままパン粉付けて揚げちゃうんですか!」


「味が付いてるから美味いだろ?
手間もかからんし、これをタルタルソースで食べてもイケるぞ」


「なるほどーっ!」



次に慎吾くんの家に行ったら、このから揚げ肉を使った鶏カツを作ってあげようかな。


タルタルソースも手作りすると、美味しいよね。


popoの惣菜ばっか食べてたんだから、なるべく違うものを作った方がいいかなとも思ったんだけど。

でもここの惣菜は美味しいって言ってくれてたわけだし、ネタを借りるくらいは別にいいよね。





「じゃ、早速陳列してきまーす」



自分の誕生日の為にわざわざ休みを取ろうとは思わない。

でも今日が慎吾くんも誕生日だと早めにわかってたら、休みを取ってたんだけどなぁ。



そしたら、一緒に晩ご飯食べたりできたのにね。

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