ひな*恋 〜童顔ひな子の年の差恋愛(ノベル版)

むらさ樹

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また1つ、年を取りました! 1

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7月もいよいよ末になると同時に、近付いてくるものがあるの。



それは、私の29回目の誕生日。



子どもの頃は誕生日って言ったら嬉しかったものだったな。

また1つ大きくなれた。
また1つ大人に近付けたってね。



だけど実際は年ばっか取っちゃって、見た目は全然変わらないの。




そうしてくると、今度はどんどん年を取るのが嫌になっちゃってね。


まぁ確かに、女なら普通に年は取りたくないって言うけどさ。

私の場合はそれとは意味が違うのよ。




普通に、オトナのオンナになりたかったな。




きっと、このままずっと子どもの顔で年を取って、ある時から急におばあちゃんになっちゃうんだよ。



…そんな冗談が、平気で言えちゃうようになっちゃった。


だから…もう誕生日なんて嬉しくないし、年なんていらないって思うの…。







──午後3時。


休み明けの今日も、午前中は慎吾くんの家でご飯のおかずを作ってあげた後、いつも通り仕事に入った。



そして定番のサラダから作ろうと、ボイルする卵のお湯を張ろうとした、その時だった。


久保店長と小山さんが怪訝そうな顔で手招きしてきたので、私は仕事の手をとめて2人のもとへ行った。




「あの、どうしたんですか?」


「ひな坊、お前いつもサラダ担当なわけだが、前にリンゴを入れようとしてたろう。
結局ずっとやってたのか?」


「ぇ……っ」



思いがけない久保店長の言葉に、私はドキッとして生唾を飲んだ。




「サラダは…通常のものを出してます。
人気商品は変えちゃダメだって話でしたから…」



どうして、そんな話が急に出て来たんだろう。

最近慎吾くんは店に来なくなったので、今はナイショの作り置きはしていない。


それにあの頃は慎吾くん用に1つしか作ってないわけだから、リンゴサラダについては慎吾くんと私しか知らない筈なんだけど。




「実は昨日の夜に来たお客さんの1人が、うちのサラダを買おうとした時に訊いてきたの。
“もうリンゴの入ったものはないんですか?”って」


「え………、えぇっ?」



久保店長の次に口を開いた小山さんの言葉に、私は耳を疑ってしまった。


だって!
それって…どういう事!?



「すぐに陳列してるサラダを確認したけど、リンゴの入ってるものはもちろんなかったわ。
昨日サラダを作った田原さんに訊いたけど、心当たりはないって言うし」



小山さんの説明を、私は胸の奥にモヤモヤを感じながら聞いていた。


昨日は仕事が休みだったので、当然サラダは他の人が作っただろう。


いや、仮に私が仕事だったとしても、今はリンゴサラダなんて作っていない。




「それでね。
そのお客さんに、うちじゃなくて余所で買ったんじゃないかって訊いたんだけど、間違いなくpopoのロゴマークがプリントされてあったんですって」


「そんな………っ」


「ひな坊、お前は何かそれについて心当たりはないか?」



久保店長と小山さんの2人にジッと見据えられ、私のモヤモヤは全身にまで広がった。



こっそり慎吾くん用に1つだけ用意したら、すぐにレジ袋に包んで冷蔵庫に隠してたつもりだったんだけどな。


何か手違いで、リンゴの入った方を陳列棚に置いちゃったのかもしれない。

それをたまたま知らないで買っちゃったお客さんが、またあると思って言ってきたんだろうか。



…何にしても、店長にまで話が行っちゃったんだ。本当の事、話さなくちゃね。



「すみません、実は…」






「1つだけ、試作品?」


「は、はいっ
いつも来てくれるお客さんが、うちのサラダを気に入ってくれてて、それであの日試しに作ったリンゴ入りのものを差し出したんですっ」



店の看板を背負っている以上、店長の許可なくそんな勝手な事をしちゃいけないのはわかってた。

だけど私の自信作でもあったし、実際食べてもらって好評だったから、つい毎日彼の為だけに作ってしまっていたの。


私がお客さん1人ずつと対応できる、レジ担当なのを利用して…。





「…それで、何らかの経緯で他のお客さんの口に入って、そうなったわけか」


「すみませんっ。
つい美味しいって言ってくれたから、サービスしたくなっちゃって…」



会社なんだから、一応マニュアルに沿った仕事はしなくちゃならない。


確かに久保店長は良い創作料理は陳列してもいいって言ってたんだけど、それには許可をもらわなきゃならないし、何よりこのリンゴサラダは却下されていた。


当たり前の話だけど、この件に関しては私が悪いのだ。



「ひなちゃん、お客さんの期待に応えたい気持ちは大事だけど、過剰なサービスはクレームのもとなのよ」


「うぅ、小山さん…」



いつも久保店長と冗談言ったりしてるイメージの多かった小山さんだけど、今だけは主任だという事を思い出してしまう。



「こういう事は久保店長が決める事だからね。
それに、ひなちゃんはそんな事しなくても、接客の方で十分気持ちのいい対応できるでしょ」


「…はい。
気を付けます」



久保店長も小山さんも、私を責める事はしなかった。

だからこそ私は自分のした事に、大人な対応ができていなかったなと反省した。

うん、ホント気を付けなきゃだ。




だけど…、それにしてもあのリンゴサラダ。

一体どうやって誰の手に渡っちゃったんだろう。


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