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「さて、じゃあお母さんは晩ご飯の支度するからね」
「あ、待って!」
クルリ踵を返して台所へと向かうお母さんを、私は呼び止めた。
通常私が仕事の日は、いつも残った惣菜を食べる事が多いんだけど。
でも休みの日は、当然もらえる惣菜はないので普通に作っている。
だけどそれは、私じゃなくてお母さんが。
目は悪くとも全く見えないわけじゃないので、ご飯は作る事ができるのだ。
そしてお母さんがそんなだから、私もそれが当たり前な感覚なので、特に手助けしたりとかそんな事もなかったわけだ。
…だけど。
「お母さん、今日の晩ご飯って何かな。
もし良かったら…作り方とかいろいろ教えてくれない?」
「ひな子、あんたどうしたの?」
ずっとおんぶに抱っこだった私が急にそんな事を言うもんだから、お母さんもビックリしたように振り返った。
「いや、その…。
改めてお料理とか、ちゃんと知っときたいかなって思って…」
うちの店の肉じゃがは美味しいから、それで慎吾くんに食べさせてあげたかったんだよ。
今日は不甲斐なくてカレーになっちゃったけど、次はまともなおかずを作ってあげたいって、そう思ったの。
「もちろん、教えてあげるわよ。
ひな子もいよいよ花嫁修行する気になったのね」
「は、花嫁修行って!
そんなんじゃないったらぁっ//」
やっぱり女だもん、料理くらいはできなきゃ困るでしょ!
って、今更偉そうに言っちゃいました。
「あぁ、鶏肉って醤油とお酒に浸けちゃうんだ」
「そうよ。
こうしてしばらく時間置いとかないと、中まで味がつかないのよ」
いつも何気なく店で揚げているから揚げも、家で作ろうと思ったらこんな下拵えをしなきゃだったんだ。
だけどそんな難しいって事もなく、普段から調理の仕事をしてるだけあってコツを掴むのは容易だったの。
「うん、いい感じに揚がった。
ねっ、お母さん!」
「はいはい、上手上手。
さぁ、お皿に盛って食べましょう」
お母さんと一緒に台所に並んでご飯を作るなんて、もしかしたら初めてかも。
お母さんも何だかいつもより機嫌いいし、娘とご飯作るのって嬉しいのかもしれないな。
茶碗にご飯をついでお味噌汁と一緒にから揚げもテーブルに並べると、私はお母さんといただきますをして箸を手に取った。
慎吾くんも、今頃私の作ったカレーを食べてるかなぁ…
そう思った時だ。
♪♪ ♪♪ ♪♪~
バイブレーションと共にポケットから鳴りだしたケータイが、メールを知らせた。
食事中にケータイを触るなんて、お行儀が悪いかな。
だけど普段どこからもかかってこないメールや着信なのに、このメールには心当たりがあったので、私はすぐにポケットから取り出してディスプレイを見た。
(…………きたぁ!)
すぐに受信箱を開くと、ドキドキする胸を押さえながら私は内容を確認した。
*****
Frm;慎吾くん
Sb;今日の
ひなの作ってくれたカレーとリンゴサラダ
ちょー絶品!
ごちそーさま(*^m^*)
明日もシクヨロだよ!
***
「……………!」
食べてくれたんだ!
しかも、おいしかったみたい。
(よかったぁ!)
実はあの後、慎吾くんとはメールアドレスを交換したのだ。
だけど最近の高校生って、ケータイなんてだいたいみんな持ってるのね。
私は高校を卒業して社会人になってから持ち始めたので、登録してある番号とかもほんの数名のリアルフレンドしかない。
そのリアルフレンドも、他県の大学に進学してそのまま就職しちゃったり、いくつものバイトを掛け持って朝から晩まで働いてたりと、それなりにみんな忙しいみたいだから滅多に連絡も取り合わないの。
だからこそ、ようやく私の鳴らないケータイも初めて意味を持ち始めたのかもしれないね。
「あ、待って!」
クルリ踵を返して台所へと向かうお母さんを、私は呼び止めた。
通常私が仕事の日は、いつも残った惣菜を食べる事が多いんだけど。
でも休みの日は、当然もらえる惣菜はないので普通に作っている。
だけどそれは、私じゃなくてお母さんが。
目は悪くとも全く見えないわけじゃないので、ご飯は作る事ができるのだ。
そしてお母さんがそんなだから、私もそれが当たり前な感覚なので、特に手助けしたりとかそんな事もなかったわけだ。
…だけど。
「お母さん、今日の晩ご飯って何かな。
もし良かったら…作り方とかいろいろ教えてくれない?」
「ひな子、あんたどうしたの?」
ずっとおんぶに抱っこだった私が急にそんな事を言うもんだから、お母さんもビックリしたように振り返った。
「いや、その…。
改めてお料理とか、ちゃんと知っときたいかなって思って…」
うちの店の肉じゃがは美味しいから、それで慎吾くんに食べさせてあげたかったんだよ。
今日は不甲斐なくてカレーになっちゃったけど、次はまともなおかずを作ってあげたいって、そう思ったの。
「もちろん、教えてあげるわよ。
ひな子もいよいよ花嫁修行する気になったのね」
「は、花嫁修行って!
そんなんじゃないったらぁっ//」
やっぱり女だもん、料理くらいはできなきゃ困るでしょ!
って、今更偉そうに言っちゃいました。
「あぁ、鶏肉って醤油とお酒に浸けちゃうんだ」
「そうよ。
こうしてしばらく時間置いとかないと、中まで味がつかないのよ」
いつも何気なく店で揚げているから揚げも、家で作ろうと思ったらこんな下拵えをしなきゃだったんだ。
だけどそんな難しいって事もなく、普段から調理の仕事をしてるだけあってコツを掴むのは容易だったの。
「うん、いい感じに揚がった。
ねっ、お母さん!」
「はいはい、上手上手。
さぁ、お皿に盛って食べましょう」
お母さんと一緒に台所に並んでご飯を作るなんて、もしかしたら初めてかも。
お母さんも何だかいつもより機嫌いいし、娘とご飯作るのって嬉しいのかもしれないな。
茶碗にご飯をついでお味噌汁と一緒にから揚げもテーブルに並べると、私はお母さんといただきますをして箸を手に取った。
慎吾くんも、今頃私の作ったカレーを食べてるかなぁ…
そう思った時だ。
♪♪ ♪♪ ♪♪~
バイブレーションと共にポケットから鳴りだしたケータイが、メールを知らせた。
食事中にケータイを触るなんて、お行儀が悪いかな。
だけど普段どこからもかかってこないメールや着信なのに、このメールには心当たりがあったので、私はすぐにポケットから取り出してディスプレイを見た。
(…………きたぁ!)
すぐに受信箱を開くと、ドキドキする胸を押さえながら私は内容を確認した。
*****
Frm;慎吾くん
Sb;今日の
ひなの作ってくれたカレーとリンゴサラダ
ちょー絶品!
ごちそーさま(*^m^*)
明日もシクヨロだよ!
***
「……………!」
食べてくれたんだ!
しかも、おいしかったみたい。
(よかったぁ!)
実はあの後、慎吾くんとはメールアドレスを交換したのだ。
だけど最近の高校生って、ケータイなんてだいたいみんな持ってるのね。
私は高校を卒業して社会人になってから持ち始めたので、登録してある番号とかもほんの数名のリアルフレンドしかない。
そのリアルフレンドも、他県の大学に進学してそのまま就職しちゃったり、いくつものバイトを掛け持って朝から晩まで働いてたりと、それなりにみんな忙しいみたいだから滅多に連絡も取り合わないの。
だからこそ、ようやく私の鳴らないケータイも初めて意味を持ち始めたのかもしれないね。
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